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働き方改革や人事改革でよく起こる「コブラ効果」とは何か? 問いかけたい『その改革、コブラってない?』

三城雄児治療家 ビジネスブレークスルー大学准教授 JIN-G創業者
「コブラ効果」って知っています?(提供:アフロ)

最近、多くの企業で議論されている「働き方改革」。働き方を変えようと、一生懸命に頑張っていますが、働き方改革をやればやるほど、働き方が不幸になっていく。そんなことありませんか?これが「コブラ効果」です。

働くとは人類が幸福を追求すること

働き方改革について議論する前に、働くということについて考えてみたいと思います。

人類の進化 チリの動物園にて筆者撮影
人類の進化 チリの動物園にて筆者撮影

この画像をみて皆さんはどんな感想を持ちましたか?

これは、以前に世界人材マネジメント協会連盟(WFPMA)の世界カンファレンスに出席するために訪問したチリのサンティアゴで、仲間と一緒に動物園に遊びにいった時に見つけた絵です。サル山の隣に「人間」という展示があって、そこに掲げられていました。

この画像はとても皮肉に描かれている訳ですが、あながち、間違っていないようにも思います。

人類は、木から降りて二足歩行を実現し、道具を使って生活を変えてきました。

狩りの仕方を変えて、農耕を生み出し、様々な改革を実現してきました。

これはまさに「働き方改革」です。

働き方改革の結果、家族が飢えることも減り、安全な生活が実現され、寿命が伸び、健康になり、どんどんと人類は幸せで豊かな生活を実現していきました。

人類の働き方改革は飽くなき幸福の追求だったはず

ところが、どこからかこの「働き方改革」の様相が変わってきました。

産業革命が起こり、資本主義が台頭し、蓄積可能な金銭という「道具」は、人間の「働き方」を大きく変えました。

さらに、大企業のグローバル展開、ITの進化によって、さらに「働き方」が変わっていきました。

かつては身近な人同士で、お互いが幸福と豊かな成果を得るために、沢山の工夫をして様々な改革が実現され、実現されるたびに、幸福や豊かさを当事者同士が分かち合っていました。

今はどうでしょう?

新しい社内システムが導入されて、幸福や豊かさをお互いが感じられる改革はどれぐらいあったでしょうか?

私は金銭という貯蔵可能なものが、人類をおかしくしてしまったように思えてなりません。

いつの間にか、私たちは、幸福や豊かさの指標を、幸福や豊かさそのものではなく、売上・利益の大きさや収入や貯金の大きさに置き換えてしまったように感じます。

人類の初期の「働き方改革」は、実現すると幸福や豊かさそのものを感じられる改革でした。

その後の「働き方改革」は、売上・利益を大きくしたり、収入や貯金を多くするために行われた改革でした。

(この頃は「働き方改革」とは呼んでいませんでしたが、人類はずっと働き方改革をしてきたと思います)

そして、最近の「働き方改革」はどこに向かうのでしょうか?

今の「働き方改革」の目指すものは、本質的な幸福や豊かさを追求できる人類に戻ること

私はそのように思っています。

お金には魔力があります。

金銭報酬は人を短期的思考にしてしまい、本質から目をそらさせてお金という目先のものに注目させてしまうのです。

さて、表題の「コブラ効果」の話に戻そうと思います。

コブラ効果とは

コブラ効果(コブラこうか、英:Cobra effect)は、問題を解決しようとしたけれども、実際には問題を悪化させてしまうときに生ずる。 これは「意図せざる結果」の事例である。この用語は、経済や政治において正しくない刺激を与えるきっかけとなることを説明するために使われる。また、ドイツの経済学者ホルスト・シーバートによる同じタイトルの書籍(2001年)がある。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

さらに、語源についてもWikipediaより引用します。

語源

「コブラ効果」という用語は、イギリスによる植民地時代のインドにおける逸話に由来する。イギリス政府は、デリーにおける多くの毒ヘビ、コブラを心配していた。そのため、政府は死んだすべてのコブラに報酬を提供した。 当初は報酬のために多くのヘビが殺されたので、この施策は成功したかのようであった。しかし、進取の人々が収入のためのコブラを飼育し始めてしまった。 政府がこのことを認識したとき、報酬プログラムは廃止され、コブラの飼育業者は今や無価値となったヘビを放った。その結果、野生のコブラの数はさらに増加した。一見正しそうな問題解決策は、状況をさらに悪化させた。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

昨日、私が経営する株式会社JIN-Gのベトナム法人スタッフから、「『コブラ効果』って知ってますか?」

そんなメールをもらい、この記事を書いています。

なぜ書こうと思ったかというと、上記の働き方改革の話もそうですし、私がずっと取り組んできている人事改革についても、同じようなことが頻繁に、沢山の会社で起こっているからです。

成果主義の人事制度をいれたら成果を目指さなくなっちゃった

これも、「コブラ効果」の代表例ですね。

成果主義の代表的な仕組みである目標管理を制度として導入したところ、かつてはチャレンジングな目標を立てていた人たちが、低めの目標を立てるようになってしまったという事例です。

仕組みを考えた人の論理はこうです。

  • 成果に応じて報いてあげる仕組みをつくれば、みんながもっと成果をあげてくれるはず。
  • 成果を目指して欲しいのだから、成果をあげた人に高い報酬を払い、あげなかった人には低い報酬を払うのが妥当だ。

コブラの話と全く一緒ですね。

実際に制度で人々が感じることは何か?

  • 成果(目標)に応じて報いられるということになると、高い成果を先に期待させてしまったら損するな。
  • 成果があがりにくいことをもっとPRして置かないと、まずいことになるぞ。

成果をあげることが楽しいから成果をあげていた、ハイパフォーマーの人も、報酬に影響があるということであれば、こんなことを考えてしまうかもしれません。

ここでも、お金の魔力が働いています。

金銭報酬と目標を結びつけてしまったことで、成果をあげる喜び、もっと先にあるお客さまに喜ばれるという喜び、そういったものから、目先の目標達成による報酬増加というものに目線を移させてしまうのです。

ここでちょっとチェックしてみましょう。

自分たちのやっている「働き方改革」や「人事制度」などの施策は、「コブラって」ないか?

「コブラってる」を流行語大賞にしたいとひそやかに願っています。

「コブラってる」が流行ると、経営者や人事部門が新たな施策を講じる時、もうちょっと大事なことを感じることができそうだなと。

「コブラってる」をぜひ流行らせたい。

治療家 ビジネスブレークスルー大学准教授 JIN-G創業者

早稲田大学政治経済学部卒業。銀行員、ベンチャー企業、コンサルファームを経て、JIN-G Groupを創業。グループ3社の経営をしながら、ビジネス・ブレークスルー大学准教授、タイ古式ヨガマッサージセラピストの活動に取組む。また、会社員としてコンサルファームのディレクターとしても活動し、新しい時代の働き方を自ら実践し、お客さまや学生に向け、組織変容や自己変容の支援をしている。組織/個人に対して、治療家として、東洋伝統医療の技能を活用。著書に「21世紀を勝ち抜く決め手 グローバル人材マネジメント」(日経BP社)「リーダーに強さはいらないーフォロワーを育て最高のチームをつくる」(あさ出版)がある。

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