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ツイッターがついにIPO申請、上場に向けて広告事業の多角化目指す

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

ミニブログサービスの米ツイッターは先週、米証券取引委員会(SEC)に新規株式公開(IPO)の申請書(FORM S-1)を提出したと発表した。

ただし、このIPO申請は非公開ベースのため、ツイッターの業績に関する情報は明らかにならなかった。通常IPOを申請すると財務諸表などを開示しなければならないが、2012年に米国で成立した新規事業活性化法(通称JOBS法)によって、年間売上高が10億ドル未満の企業はこれが免除されるからだ。

創業以来最大の買収、自社以外の媒体へ進出

そうした中、ツイッターはIPOに向けて収益の柱となる広告事業の多角化を図ろうとしている。

例えば先週同社は、モバイル向けの広告配信を手がける米国の新興企業、モーパブ(MoPub)を買収した。ツイッターは詳細を明らかにしていないが、買収金額は3億〜4億ドル相当と見られており、創業以来最大の買収と言われている。

モーパブは、モバイル向け広告の管理、最適化を手がけるほか、広告枠のリアルタム入札システムを運営している。ここで競り勝った広告は、インターネットラジオやレストラン予約サービスといった様々なアプリに配信される。

つまり、ツイッターはモーパブの買収によって、自社サービス以外の媒体の広告を初めて手がけることになる。

簡素な広告からの脱却が収益拡大のカギ

これまでのツイッターの広告は簡素なものにとどまっていた。同社の広告を大まかに分けると、次の3つになる。

(1)ユーザー用のホーム画面に表示されるタイムラインと検索結果画面に企業広告のツイートを表示する「プロモーテッド・ツイート(プロモツイート)」

(2)話題の言葉(トレンド)の欄に広告キーワードを表示する「プロモーテッド・トレンド(プロモトレンド)」

(3)推奨ユーザーの欄に広告主のユーザーアカウントを表示する「プロモーテッド・アカウント(プロモアカウント)」

しかし、ここ最近は、(1)のプロモツイートに、大手テレビ局の番組と連動したCM付きの動画ツイートを掲載する「アンプリファイ(Amplify)」という広告商品も始めており、同社の広告事業は大きく様変わりしつつあると言われている。

今年の広告収入は5億8000万ドル、来年は9億5000万ドルに

市場調査会社の米eマーケターの推計によると、ツイッターの今年の年間広告収入は、昨年の2倍の5億8000万ドルになる見通し。この金額は、米フェイスブックの63億6000万ドルや、米グーグルの386億2000万ドルに比べると規模は小さい。

だがeマーケターはツイッターの広告事業は今後も伸び続け、2014年には9億5000万ドル、2015年には13億3000万ドルになると予測している。

しかもこれらは、従来の広告による収入だ。今回発表されたモーパブの買収や、新たな広告商品によって、同社の収入はeマーケターの予測値を上回るとの観測もある。

なお米メディアによると、ツイッターは年末までの上場を目指しているが、同社の事情に詳しい関係者は来年の初めになる可能性があると話しているという。

また米ニューヨーク・タイムズは、今回の上場申請のニュースを受け、投資家がIT業界のIPOブーム再燃を期待していると伝えている。

今年の年初来のIT企業のIPO件数は22件で、全体の17%にとどまっている。これは2008年の10%に次ぐ低水準。この比率は一昨年で35%、昨年で30%だった。

JBpress:2013年9月18日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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