Yahoo!ニュース

住信SBI ATM手数料「アプリだけ無料」に困惑の声

山口健太ITジャーナリスト
住信SBIネット銀行のデビット機能付きキャッシュカード(筆者撮影)

住信SBIネット銀行が、12月からスマホアプリ利用時のATM手数料を無料化することを発表し、話題になっています。

その一方で、キャッシュカード利用時には手数料の優遇がなくなることから、この発表を「改悪」と受け止めている人も少なくないようです。

ATM利用 アプリなら無料、キャッシュカードは有料に

最近、ネット銀行ではスマホのアプリを利用して、コンビニなどのATMから入出金ができるサービスを提供するところが増えています。

ATMの画面に表示されたQRコードをアプリから読み取り、生体認証でアプリにログインすることで、キャッシュカードがなくても入出金が可能になるというものです。

12月1日から、住信SBIでは「アプリでATM」利用時の手数料が無料化されます。これ自体は嬉しい変更ではあるものの、すでに無料で使えているという声も少なくありません。

というのも、生体認証機能の「スマート認証NEO」を登録すると優遇プログラムで「ランク2」になり、ATM手数料が月に5回まで無料になるためです。週に1回程度しかATMを使わない人であれば、手数料はほぼ無料で済んでいたと考えられます。

住信SBIではランクによってATM入出金や他行宛ての振込手数料の無料回数が増える(アプリ画面より、筆者作成)
住信SBIではランクによってATM入出金や他行宛ての振込手数料の無料回数が増える(アプリ画面より、筆者作成)

その一方で、キャッシュカードを利用した場合のATM手数料にも改定があり、こちらはスマートプログラムのランクにかかわらず有料化される予定となっています。

12月からキャッシュカード利用時の手数料は有料になる(住信SBIネット銀行のプレスリリースより)
12月からキャッシュカード利用時の手数料は有料になる(住信SBIネット銀行のプレスリリースより)

なぜキャッシュカードの利用を有料化するのでしょうか。住信SBIはその狙いとして「スマホファーストによるカードレス・パスワードレスの世界観の実現を目指している」(広報)と説明しています。

カードレスとは、物理的なカード類をなくしていく取り組みです。たとえばスマホから口座を開設した場合、デビットカードの番号が即時発行され、スマホからそのまま買い物ができるようになります。

かつてオンラインバンキングでよくみられた「認証番号カード」も、アプリによる認証への置き換えが進んでおり、11月からは登録が必須になるようです。

完全にカードがなくなるわけではなく、希望すればデビット付きキャッシュカードも発行できます。こちらは10月から有料化される予定でしたが、引き続き無料となるよう変更されています。

こうしたカードレス化やスマホ生体認証の利用を推進することで、最近増加する金融犯罪や、環境問題に対応していくのが住信SBI側の思惑といえます。

一方、利用者にとって使い勝手が変わることもたしかです。現時点で住信SBIのアプリを用いたATM利用に対応しているのはセブン銀行とローソン銀行に限られています。

その他のイーネットやゆうちょ銀行、イオン銀行を利用する場合はキャッシュカードを使わざるを得ないため、実質的に手数料の値上げになるというわけです。

なお、最近増えている「提携NEOBANK」は今回の発表の対象に含まれておらず、月5回まで無料となっているところが多いようです。今後については「変更があった場合などは改めてお知らせします」(広報)との回答になりました。

キャッシュカードを中心に使いたい場合は、提携NEOBANKや他のネット銀行を含め、複数の口座を使い分けることが回避策になりそうです。

「アプリでATM」の拡大に期待

住信SBIはアプリの使い勝手やSBI証券との連携といった面で優れており、8月22日からは「ことら送金」にも対応したことで、ちょっとしたお金の移動が便利になりました。

そういう意味では、筆者の中ではネット銀行としてトップクラスに使いやすいという印象は変わっていません。また、165円といった手数料自体も他行並みの水準です。

ただ、スマートプログラムのような優遇措置に慣れていると、手数料は一定回数まで無料になるのが当たり前になっていただけに、突然の「有料化」に驚いている人が少なくないのが現状ではないでしょうか。

せめてアプリで利用できるATMがもっと増えていればと思うところです。住信SBIによれば、「検討中の事業者があるとうかがっている」(広報)とのことなので、対応ATMの増加に期待したいところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

山口健太の最近の記事