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人気ラーメン店の行列に並んだのに子連れで入店拒否の悲劇! 飲食店が子どもお断りの裏側

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

ラーメン店に子連れで入店お断り

夏休みは家族で外出するのによい機会です。足を伸ばして旅行する方もいれば、帰省して親族に会う人もいるでしょう。気になっていたファインダイニングに予約して訪れることもあれば、カジュアルな飲食店にふと食べに行くこともあるかと思います。

カジュアルな業態で、日本人が大好きなものといえばラーメン。そのラーメン店に家族で行こうとしたら問題が起きたといいます。

人気ラーメン店「子連れはお断り」に納得いかない! 法的に問題ないの?/弁護士ドットコム

弁護士ドットコムでの記事で、ある相談がありました。

相談者いわく、以前から家族で食べてみたい人気ラーメン店があったといいます。行列に並び、いざ入店する時になって、スタッフに子どもは断っているといわれて、入店できませんでした。後で電話して子連れ拒否の理由を尋ねたところ、狭い店なので席がバラける可能性があること、他のお客さんもいること、ゆっくりできないことが挙げられたといいます。

ラーメン店は公式サイトやSNSを全く運営しておらず、グルメサイトでも子連れNGという記載はなかったということです。同サイトでは、これに対して、法的には子連れ拒否は差別ではなく、問題ないということでした。

この件について、考察していきたいと思います。

雰囲気づくり

件のラーメン店は、席がバラけたり、他の客に迷惑をかけたり、ゆっくりできなかったりすることが、子連れを断っている理由であると述べていました。

改めて飲食店が子連れを断る理由を説明していきましょう。

最も大きいのは、雰囲気をコントロールするためです。飲食店の雰囲気は客がつくるといわれており、利用している客そのものがその店の雰囲気を醸造します。

飲食店によって、目指す雰囲気はそれぞれ異なるもの。家族連れが気軽に利用できる和やかな感じであったり、記念日やお祝いに予約する品のあるレストランであったり、食通が好んで訪れるような荘厳な風情であったり、1人でふらりと食べに行ける空気感であったり、デートにぴったりなドキドキするムードであったりと、全く違います。

そして、イメージする雰囲気をつくるために客を選ぶのです。雰囲気づくりのために子連れを断るのは、ほとんどが、大人による落ち着いた上質な空間を志向する場合。落ち着けると思って入店した他の客に迷惑をかけないためでもあります。ただ、例外として個室であれば子連れでも入店できることは少なくありません。

また、お酒をメインにした業態であったり、遅くまで営業していたりする店も、子供に相応しくないのは明白です。

客単価と回転率

子連れNGの理由は他にもあり、主なものは客単価と回転率。子供は食べられる分量も少なく、親に分けてもらうこともあるので、全く注文しなかったり、あまり注文しなかったりします。したがって、子供が座る席は大人が座る席よりも、客単価が落ちてしまうのです。

次は回転率。子供は、大人よりも食べるのに時間がかかることがほとんど。子供のケアまでしなければならないので、大人も食べる時間が長くなってしまいます。子連れのテーブルは滞在時間が長くなり、回転率が落ちてしまうのです。

飲食店は箱物商売であるだけに、人気店であればあるほど、客単価と回転率をもっと上げられるのにと思ってしまいます。

店の造りとサービスの負荷

店の造りによっては、子供が滞在しづらいのでNGということもあります。立ち食いであったり、座るのが難しいハイチェアであったり、目の前に熱い鉄板があったり、狭いカウンターであったりと、造りによっては子供に適しません。

子供用のイスやカトラリーを用意したり、子供がモノを落としたり嘔吐したりした時に対応したりと、大人に比べると子供のサービスは大変です。サービス負荷の観点からも、子連れをNGとする場合があります。

子連れ歓迎の店も

子連れお断りにも、様々な理由があることを説明しました。

飲食店の経営はビジネスなので、客が店を選ぶように、店も客を選ぶのは仕方ありません。件のラーメン店は、席をまとめることのサービス負荷、雰囲気づくりが子連れNGの理由であると述べています。

子連れを断る飲食店が存在する一方で、子連れフレンドリーな飲食店がたくさんあるのも事実。ファミリーレストランのようなカジュアルな業態ではもちろんのこと、フレンチの名門であるひらまつグループが経営するファインダイニングでも子連れを歓迎しています。

営業日時

どうして子連れお断りの飲食店に訪れてしまうことになるのか、考察していきましょう。

飲食店が客に発信する情報のうち、最も重要になるのは店名、住所、電話番号。それぞれが、アイデンティティ、コンタクト先、訪問場所となるので、最重要事項であることはいうまでもありません。

次いで重要となるのが、営業に関するもの。いつ営業していて、いつ営業していないか、という情報です。なぜならば、営業していない時に来てもらっても、客にとっては非常に残念であり、飲食店にとっては機会損失になるからです。

年齢制限

いつ営業しているか、に関連するのが、誰が利用できるか、になります。

今の時代であれば、男性だけが利用できる、女性だけが利用できる、という飲食店はほとんどありません。しかし、何歳以上であれば利用できるという制限は一般的です。前述したように、ある一定以上の年齢だけが入店できるようにして、期待した雰囲気を創出します。

入店できない年齢なのに訪れたら、客にとってはもちろん残念であり、飲食店にとっては余計な対応をしなくてはなりません。

紹介制や完全予約制

他にも入店制限があります。それは紹介制および会員制、そして完全予約制です。

前者は予約が多すぎて捌ききれない場合であったり、ターゲットの客層をしっかり絞ったりする場合に採用されます。後者は営業をコントロールしたい時に用いられることが多いです。

こういった仕組みを用いるのであれば、一見のウォークインが入店することはできないので、事前に知っておいてもらえた方が好ましいでしょう。

情報の記載

一般的に飲食店は、営業時間と入店制限を公式サイトやグルメサイトにしっかりと記載しておくものです。サイトを全く運営していなければ、FacebookやInstagramといったSNSを利用する場合もあります。SNSは即効性があるので、ノーショー(無断キャンセル)やドタキャン(直前キャンセル)が生じても、助けとなることがあるでしょう。

件のラーメン店はグルメサイトに掲載されていました。基本情報であれば無料会員でも編集できることがほとんどなので、子連れNGを記載しておいた方がよかったです。

予約時に気が付く

飲食店には、事前に予約して訪れる場合と、予約しないで訪れる場合があります。

事前に予約して訪れる場合には、インターネットを利用するか、架電するかのどちらかになるでしょう。予約時のやり取りや登録を通して、子連れNGがわかって諦めることもあります。実際に店へ足を運んでから、入店拒否されるよりもずっとよいです。

ファインダイニングと違って、ラーメン店は非常にカジュアルな業態なので、予約して訪れることはほとんどありません。ラーメン店にとっては、回転率が重要であったり、予約の管理が大変だったりするので、ウォークイン客をどんどん入れた方がよいです。そのため予約をとっていないラーメン店が少なくありません。

予約しない業態にあっては、子連れNGなどの入店制限に気付きにくいという背景があります。

ミスマッチを防ぐには

日本にはたくさんの飲食店があり、東京だけでも10万店を超えるほど。ミシュランガイドでは、世界でも有数の星付きレストランが存在する美食国です。一方で、いつでも好きな時にふらりと入り、手頃な価格でおいしいものを食べられる店が多いのも魅力。そのため、日本では確認したり、予約したりせずに飲食店を利用することが非常に多いです。

飲食店は、オペレーションに余裕がないかもしれませんが、重要となる事項だけでもインターネットやSNSに記載しておき、客は少しでも気になることがあれば電話やメールで確認するのが、ミスマッチを解消する最もよい方法となるのではないでしょうか。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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