【警戒】史上最強の太陽フレア「キャリントンイベント」時に匹敵する超巨大黒点群「AR3664」が発生!
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「太陽フレアのリスクと巨大黒点群AR3664の活動」というテーマで動画をお送りします。
現在、巨大黒点群「AR3664」が出現し、大規模な太陽フレアを連発しており、世界的に大きな話題を呼んでいます。
黒点群は巨大であるほど太陽フレアのリスクが高いですが、AR3664は1859年に発生した記録に残る最大の太陽フレアである「キャリントンイベント」を発生させた黒点群と同等の大きさであると見られています。
本記事ではAR3664の活動の記録と、太陽フレアのリスクについて解説していきます。
●太陽フレアとその危険性
太陽フレアとは、太陽表面で起こる突発的な爆発現象です。
大規模なものだと水素爆弾1億個分に相当するエネルギーを放つとも言われていて、人類がとても太刀打ちできない高エネルギーな天体現象です。
太陽フレアは、太陽表面に溜まった磁気のエネルギーが、熱や運動エネルギーに変換されて一気に宇宙空間へと放出される現象であると解釈されています。
太陽表面において、磁気のエネルギーが高い場所は、「黒点」として現れます。
この黒点がたくさん現れる時期では、太陽フレアのリスクが高く、要警戒です。
太陽フレアによって、高エネルギーの電磁波や、高エネルギーの粒子(放射線)、大量のプラズマガスといった様々なものが宇宙空間に放出されます。
まず太陽フレアで放出されるX線やガンマ線などの高エネルギーの電磁波は、光速で移動するためわずか8分で地球に到達します。
これが地球に到達すると、電波通信障害が発生するリスクが高まります。
そして高エネルギー粒子(放射線)は、30分~2日程度かけて地球に到来します。
放射線なので、宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士や、飛行機の乗客への放射線被害がリスクとして懸念されます。
そして太陽フレアが発生すると、太陽の大気にあたるコロナを構成する、電気を帯びたプラズマガスが大量に宇宙へと放出されます。
これはコロナ質量放出(Coronal mass ejection、CME)と呼ばれる現象です。
CMEは一般的には2日~3日程度かけて地球に到達しますが、特殊な場合においてはさらに非常に短い時間で地球に到達することもあります。
プラズマの粒子が地球の磁気圏に沿って地球の極域に流入し、地球の大気を構成する物質と衝突すると、光を放ちます。これがオーロラの正体です。
これだけならただ綺麗なだけですが、磁気圏が乱れると地表の送電線に大量の電流が流れ、発電機構が破壊され、大規模な停電が起きる原因にもなります。
実際に1989年3月には、カナダのケベック州において、太陽フレアを原因とする大規模な停電が9時間にわたって続き、600万人に影響が及んだと言われています。
●巨大黒点群「AR3664」が出現
先日、黒点群「AR3664」が出現し、どんどん成長しました。
黒点は巨大であるほど、大規模な太陽フレアのリスクが高くなります。
AR3664の直径は20万km、地球15個分にも相当し、日食グラスをかけて見れば肉眼でも確認できたそうです。
またこの規模の黒点群は、記録上最大の太陽フレアであるキャリントンイベントを発生させた黒点群にも匹敵すると言われています。
○AR3664が発生させた現象
では実際にAR3664が発生させた現象の数々を紹介していきたいと思います。
まずこの黒点群は、最大級のフレアであるXクラスのフレアを連発しています。
太陽フレアの規模は、放射されるX線の強度の最大値をもとに分類されることが多く、低い方からA, B, C, M, Xの5つの等級に分類されます。
この分類ではフレアの規模を、等級を表す英字と数字のセットで表します。
例えば「M3」のフレアは「M1」の3倍強いことを示します。
また10倍毎に上の分類に格上げされます。例えばB10になるとC1と表記され、M10になるとX1と表記される、といった具合です。
Xはそれ以上に格上げされないので、X10以上の数値で表記されることもあります。
AR3664は動画投稿時点では最大でX5.89のものを含む、実に8回ものXクラスのフレアを発生させています。
またAR3664は大規模な太陽フレアに伴い、大規模なCME(コロナ質量放出)も発生させています。
それに伴い大量のプラズマガスが地球に到来しており、地磁気を乱され、大規模な磁気嵐が発生しています。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)が行う宇宙天気予報では、磁気嵐の強度を「Gスケール」というもので表します。
巨大黒点群「AR3664」の活動が原因で発生した磁気嵐は一時的に、この分類で最大である「G5」スケールに到達しました。
G5スケールに相当する磁気嵐が発生したのは2003年以来のことです。
また、大量のプラズマガスが地球の大気と衝突し、かなり低緯度でもオーロラが発生しました。
日本では兵庫県や愛知県でもオーロラが見られたという報告があるほどです。
今映像を映していますが、これはハワイでもオーロラが発生し、その瞬間をマウナケア山頂のすばる望遠鏡が収めたものです。
●最悪のシナリオ
総務省は、日本における太陽フレアによる「最悪の被害」を推定しました。
この推定においては、太陽活動の1周期で1回あるかないかという規模(X10クラス以上)の爆発が2週間にわたって断続的に発生し、さらにその中で、1859年のキャリントンイベントのような、100年に1度かそれ未満の頻度でしか襲ってこない巨大なフレアも発生するという、まさに最悪の事態が起こった場合が想定されています。
日本における被害としては、2週間にわたって昼間の間は断続的に電波通信が困難になる点が挙げられています。
それによって例えば携帯電話などの電波通信機器が使用困難になり、さらに電車や飛行機などの交通手段にも大きな混乱が及ぶことが想定されます。
さらに2週間にわたって断続的にGPS通信が困難になると想定されています。
また地球を周回する人工衛星にも大きな被害が及びます。
まず人工衛星に搭載された太陽電池が劣化し、衛星の寿命が大幅に短縮されてしまいます。
さらに太陽フレアによって地球の大気全体が熱せられ、膨張すると、地表に近い軌道で地球を公転する人工衛星に及ぶ空気抵抗が増大し、軌道が変化します。
すると他の人工衛星やスペースデブリと衝突したり、さらには地球上に落下して衛星自体が失われてしまうリスクも挙げられています。
なお、今回の仮定である「100年に1度規模のフレア」では、防災が進んだ日本においては停電が発生するかは不明とのことです。
今並べたのは想定される被害のほんの一例にすぎませんが、被害は通信技術が発展した都市ほど大きいため、東京は世界最大の経済的損失を被るとも言われています。
具体的な損失額は、東京だけで3000億円にも及ぶそうです。
この太陽フレアの恐ろしいのは、文明が発展すればするほど被害が甚大になるという点です。
一刻も早く対策をしなければ、必ず近い将来のどこかで大きな実害が出てくるでしょう。
幸い、AR3664の活動を筆頭とした今回の一連の太陽活動において、現時点では大きな被害は報告されていません。
さらに太陽の自転により、AR3664は現在、地球から見えない位置に隠れつつあり、この黒点群が地球に甚大な被害を与える可能性は低いです。
しかし太陽の活動期は2025年頃まで継続すると見られているので、引き続き警戒が必要です。
私たちはこの太陽フレアが起きたときに適切な行動がとれるよう、その現象の特性と危険性を正しく認知しておくことが重要です。