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注目! ドラフト/5 気になるあの選手 神里和毅(日本生命)

楊順行スポーツライター
日本選手権での日本生命の初戦は11月4日。強豪JX-ENEOSとの好カードだ(ペイレスイメージズ/アフロ)

「スパイクで100メートルを走ったら、たぶん10秒台を出せますよ」

 こともなげに、そういう。糸満高時代の野球部対抗競技会では、ランニングシューズで11秒37をマーク。50メートル5秒9から換算しても、加速する100メートルなら確かに10秒台は確実だ。

 父・昌二さんは豊見城高時代、石嶺和彦捕手(のちオリックスなど)とのバッテリーで4季連続甲子園に出場した。社会人・プリンスホテルで現役を引退後は陸上競技に転じ、100メートルなどで活躍している。姉も、短距離でインターハイに出場。当然神里も、野球と陸上、二足のわらじだった。「野球をやりたい」と直訴したのは、小学校4年のとき。

「陸上を強制はされなかった。ただ、"やるなら左打ちにしろよ"、といわれました(笑)」

 高校3年夏には、「アイツは天才」と評価する宮城知秀(元西濃運輸)らと甲子園に出場し、中央大でも1年春から定位置を獲得。3年春には打率.350でリーグ3位に食い込み、4年秋にはベストナインと実績を積み、日本生命に入社した。

 その名門でも、1年目から定位置を獲得。日本選手権からは一番が指定席となり、2年目の今季は都市対抗予選で打率.455を記録して本大会出場に貢献している。その本戦(対三菱日立パワーシステムズ)では二塁打2、三塁打1、四死球2と全打席で出塁。ファーストストライクから打っていく、攻撃的な一番だ。

同年代には負けたくない

「一番として、初回の第1打席に集中しています。スタッフからも"1打席目に打てば、あとはいいよ"といわれているくらい(笑)。考え込んだら打てないタイプなので、いつも軽くエンドランがかかっているくらいのつもりで第1ストライクからでも振っていきます。それと今季は、1、2打席ダメでも、あとの打席で粘れるようになった。以前は1、2打席で凡退すると引きずっていましたが、いまはそれ以後も、転がせばなんとかなるとしぶとくなり、メンタルが変わりました」

 と2年目の成長を語る。オフには、チームでメンタル強化に取り組んだ。細かい状況を設定した問いに自身で答え、なぜそう答えたのかを考えることで、自己分析が明確になっていく。

「設問が180くらいあるんです。最初は答えを書くのが面倒なんですが、一日一問ずつ進んでいくと、だんだん自分が見えてくるんですね。たとえばチャンスで打席に入ったとき、自分はなぜ力むのかがわかってくる。そこから逆算していけば、力まなくてすむようになる」

 技術的には、「下半身に100パーセントの力を使うように意識」し、上半身の力を抜くことで、バットコントロールにも磨きがかかった。走ることに関しても、「社会人は大学よりもクイックは速いし、けん制を投げてくるにしても空気が読めません。ただ、こっちも成長はしている」と意識は高い。

 走攻守そろった外野手として、2年前もドラフト指名を心待ちにしていたが、声はかからなかった。ただ、と神里はいう。

「ただ社会人のレベルを経験すると、もし指名されてプロ入りしていても、通じていたかどうか……正直、厳しかったと思います。だけどいまなら、やっていけそう。大卒2年目の同年代には、とくに負けたくないですね」

かみざと・かずき/1994.1.17生まれ/沖縄県出身/178cm83kg/外野手/右投左打/糸満高→中央大→日本生命

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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