【ジャズ後】山崎ふみこ Birthday Live@JZ bratを観終わって
自宅に帰って湯船につかりながらノホホンと感想を書きとめようかな、という感じのヌル〜いライヴ・レポート。今回は、ヴィブラフォン奏者の山崎ふみこが開催したバースデイ・ライヴ。
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今年の山崎ふみこのバースデイ・ライヴは、ミドル・テンポの「デパーチャー」でスタートした。
徐々に手数を増やし、ソロの後半で倍テン状態になって盛り上がるのは、彼女のバンドの“十八番(おはこ)”のひとつでもあり、初っ端からセカンド・アルバムのタイトル・チューンによって会場の温度を一気に高めてしまおうと目論むあたり、彼女らしさが発揮されたプログラムだと言うことができるだろう。
ところが、そんな“いつもの”という感じが薄らいでいくのは早くも2曲目の「オラクルサンバ」からだった。
Oracle(オラクル)とは“託宣”を意味する言葉で、主に古代ギリシャで神からのメッセージを伝える人に対して用いられた。現代ではこれをカードに置き換えて、占いに使われたりしている。
山崎ふみこはこの曲のモチーフをオラクルカードから得たそうだ。曲調は彼女の作品に多く見られるラテン系のリズムのものだが、サンバというタイトルから連想される明るいイメージとは異なる、アンニュイな雰囲気が漂う。元気モリモリというのが山崎ふみこのイメージを表現するときに真っ先に浮ぶ言葉だとしたら、それがカチッとあてはまらない違和感の残る曲だったと言えるだろう。
話は飛んで、セカンド・セット。ひとりで登場した山崎ふみこが、休憩中に来場していた女の子のファンから「ピアノを聴かせてほしい」というリクエストをもらったのでという前置きをして、ピアノの前に座って弾き始めたのがオリジナルの「One」。
曲が終わってからのトークでは、もともとはヴィブラフォンで作ったというエピソードも披露するなど、客席とステージの距離を縮めるいい演出になっていた。こうした思いつきをすぐ行動に移せる“エナジー”が、山崎ふみこの魅力でもある。
後半はバースデイ・ライヴ恒例の打楽器アンサンブルを交えた「Yatra Ta」。メンバー全員がパーカッションを手にしたソロの展開部分で山崎ふみこがパーカッション・ソロを披露。会場全体が一体化して、心地よい揺れのなかに浸っているような感触を味わわせてくれる。
息も整わないうちに始めた次の曲は、別の新曲を作っているときにひょっと出てきて、30分ほどでで完成してしまったという「アイ・ライク・イット」。これまでの自分の曲にはなかった雰囲気が出たという意外な一面を見せてくれた。
♪ エナジーの変化を予兆する誕生日の軌跡
当夜のステージでは、たびたび本人の口からも「これまでの自分にはなかった」という指摘があったように、山崎ふみこのサウンドに変化の兆しが現われていることを共有するための“ファン・ミーティング”になっていたようだ。
それはファンにとってなによりも嬉しい、バースデイ・イヴェントのホストからの“返礼”になっていたのではないかと思う。