馬瓜エブリンが切り拓くアスリートの新たな道
昨年の東京オリンピックでバスケットボール女子日本代表の銀メダル獲得に貢献した馬瓜エブリンさん(27)。昨年10月からワタナベエンターテインメントとタレント契約し、新たな一歩を踏み出しました。また、オリンピックの盛り上がりを一過性のものにしないため「アスリートの可能性を模索する」ことを目指し、昨年からプロバスケットボール選手としての活動を休止し、あらゆることにチャレンジしています。道なき道を歩む中で感じた思いとは。
「休む」という決断
去年の春からバスケットボール選手としての活動を1年間休んでいるんです。
ありがたいことに、東京オリンピックで銀メダルが取ることができました。その盛り上がりを自分に還元するのではなく、バスケットボールそのものに還元する。それを考えた時に出てきたのが「休む」ということだったんです。
選手としてさらに頑張って、高いパフォーマンスをお見せして、競技を盛り上げる。普通はそうなるかとも思うんですけど、選手として輝ける期間は本当に短い。
女子バスケットボールを多くの方に知ってもらうことができた今こそ、おこがましい話でもあるんですけど、新しい選手の形を作る。それができないかと思ったんです。
“外”に出て分かること
今回、ワタナベエンターテインメントさんと契約させてもらったのもその中の大きなことでした。選手をやりながらでは体験できないことにチャレンジする。いろいろなメディアに出していただいたり、多くの業種の方にお会いしてビジネスのお話をうかがったり。
そういう時間を経て、また今年から選手に戻る。それがバスケットボールのためにもなり、自分の将来のためにもなる。そう思って決断しました。
実際、これまでには出ることがなかったようなテレビ番組にもたくさん出してもらって、女子バスケットボールを知ってもらう機会をいただいています。その中で、これまで気づかなかったところに意識が向くことも体験しています。
これは私の性格なんですけど、いつもと違う場に行くと、すごく緊張するんです。そこで周りの方から言われるのが「いつも通りで大丈夫。そのままのエブリンでいいんだから」ということ。
それを言われて、改めて「いつも通り」ということを見つめ直すというか、自分というのはどういう人間なのか。普段は分かっているようでなかなか見つめることがないところに目を向けるというか。そういう流れも思わぬ形でさせてもらっています。
明石家さんまからの学び
あと、昔から大好きだった明石家さんまさんと共演させてもらったのも純粋にうれしかったですね(笑)。
そこで痛感したのは、あれだけキャリアがあって、もうベテランの域にあるさんまさんがいつも本当に楽しそうにおしゃべりをされているんです。どれだけ長くやっていても、楽しくやる。その姿勢はバスケットボールにも通じるところだなと思って、なんとか見習えればと思っています。
今年のシーズンからまた選手に戻った時、そうやって外で得た目線が必ず生きてくると思いますし、また、そうでないと意味がない。なんとかしっかりと、そして、楽しく頑張りたいと思います。
(撮影・中西正男)
■馬瓜エブリン(まうり・えぶりん)
1995年6月2日生まれ。愛知県出身。両親はガーナ出身。桜花学園高卒業後、Wリーグのアイシンを経てトヨタ。21年の東京オリンピックでは女子バスケットボールの銀メダルに貢献した。身長180センチ。東京オリンピック3×3女子日本代表の馬瓜ステファニーは妹。