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40歳からのメジャー・デビュー、松田真将。年商十億の事業を育てた実業家がアーティストへ転身した理由

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
松田真将

●アートワークは、グローバルに活躍するYOKO HONDAによる作品

音楽業界から発信されるニューカマーと呼ばれる新人アーティストは10代や20代前半が多い。30代以降のデビューは珍しい世界だ。そんな中、異例とも言える38歳からメジャー・デビューへの夢を歩み始めた松田真将(まつだしんすけ)というシンガー・ソングライターに注目したい。

4月5日(水)に、ユニバーサル・ミュージックジャパンより、1stアルバム『ROUTE 55〜はじまりの道』をリリース。ジャケット・アートワークがDIESELやアディダス、カイリー・ミノーグのヴィジュアルを手がける、グローバルに活躍するYOKO HONDAの作品だったことも気になったポイントだ(※4/1発売、雑誌『BRUTUS No. 844』音楽特集号でもチェックできる)。

松田真将 1stアルバム『ROUTE 55〜はじまりの道』
松田真将 1stアルバム『ROUTE 55〜はじまりの道』

●38歳から名古屋駅前でストリート・ライブをスタート

松田真将は、もともと音楽志望ではなかった。2005年、愛知県にて創作和洋ダイニングOHANA刈谷本店を開業。2007年には株式会社OHANA を設立。その後も着実に系列店を増やし、映像製作事業、美容事業を立ち上げ、年商数十億の事業を育てあげた実業家だ。

18歳から24歳までが苦しい時期でした。というのも父親が不動産業を行なっていたのですが、事業に失敗して、自分が18歳の時に18億の負債をおったんです……。自分の人生はどうなっちゃうんだろうと悩みに悩んで、で、まず『脱地獄借金マニュアル』という本を買いました……。

不安でいっぱいでした。でも、夢であった自分のお店の看板や内装を想像している時間が唯一の救いだったんです。またそんな時期に出会った言葉が“OHANA”でした。ハワイの言葉で“家族や仲間、愛する人”という意味なんです。お店の名前でもあり、会社名にしました。

どん底からの逆転。人生を賭けた事業は見事に成功した。しかし、松田は2015年、年商数十億に育てた事業の全てを後進に譲り、38歳から名古屋駅前でストリート・ライブをスタートする。メジャー・デビューへの夢へと歩み始めたのだ。飲食業での10年の修行。自身の会社を軌道にのせた計20年という年月。これまで数多くの従業員を束ねてきた松田は、人材育成にも定評を持ち、全国各地で講演をしてきたという。

経営者時代、国からも表彰されるなど人材育成や教育に関して定評がありました。経営者って最後の仕事は事業継承だと思うんです。30〜40年続く会社っていうのは5千社に1社しか残らないと言われている世界なので。事業継承がどんだけ大変かってことですよね。それを、28歳の子に受け継げてよかったと思っています。会社を手放してからも業績は右肩上がりなんですよ。嬉しいですね。

●今の時代一番重要なのは“人間力”であり“人間性”

松田が歌うシンプルなメッセージには、彼が歌うからこそ人生の重みが感じられる。ストレートなポップロックを奏でるサウンドは、敬愛する尾崎豊からの影響を感じるなど、決して目新しいものではない。音楽やアートは時代性やセンスが問われる世界ではあるが、今の時代に求められるのは“人間力”であり“人間性”なのかもしれない。どんなメッセージでも、それを“誰”が発しているかが問われる時代なのだと思う。だからこそ松田の音楽は、心にその言葉と歌声が刺さってくる。なぜ、成功した事業から離れて表現者の道に進んだのだろうか?

ある経営者さんに『お前は、一番大事にしなきゃいけないことを、一番置き去りにしてきたんじゃないか?』と言われたのがきっかけでした。自分と向きあうことになり、答えに辿り着いたのは幼少期の経験でした。“自分はさておき、”という考えを幼少期からずっと持っていたんですね。“これをしたいあれをしたい”とは言わずに……。自己犠牲の感覚。自分自身の感情に蓋をして生きてきたので……。

それこそ自分自身を大事にしようと思ったのが3、4年前なんです。そこで制限をせずに何をしたいかを自問自答した結果が、歌でした。経験はないですよ。でもまず、名古屋駅前でストリート・ライブから始めました。恥ずかしいなんて気持ちはありませんでした。新しいことにチャレンジできる環境にワクワクしていました。

2016年、自主制作でリリースされたアルバム『Voice Of Your Soul』は2,000枚の売り上げを突破。故郷である半田市雁宿ホールでのライブを成功へと導く。その動向に注目していた東海ラジオからオファーが舞い込み、東海ラジオにてレギュラー・パーソナリティーに抜擢された。

半田市雁宿ホール公演
半田市雁宿ホール公演

●4/9、3千人キャパの名古屋センチュリー・ホール公演への挑戦

音楽活動開始から1年。松田が40歳を迎えた年に、メジャーレーベル、ユニバーサル・ミュージックジャパンより CDデビューが決まった。数々のミリオン・ヒットで知られる音楽家、十川知司による楽曲提供。ex.ニューエスト・モデル、ソウルフラワーユニオンのキーボーディスト奥野真哉によるアレンジ参加も決定した。メジャー・デビューを直前に控える松田のスタッフには、宇多田ヒカルや浜崎あゆみを支えた顔ぶれが揃っていることにも注目したい。

故郷、愛知県半田市から始まった“未知の旅”は、4月9日(日)3,000人収容キャパシティの名古屋センチュリー・ホール公演『Route 55〜はじまりのみち〜』へとたどり着く。

※名古屋センチュリー・ホール公演直前 リハーサル映像がアップされたので追記しました(4/5)。

●夢を叶えるのに遅すぎることはない。夢を笑わないという意識。

松田に、絶え間ない努力と揺るぎない自信の源について聞いてみた。何が、彼をそこまで奮い立たせ、他の人ではやれないことを実現していくのか?

もの心つく時から、父親と母親は喧嘩が絶えなかったんです。当時は、周りから見たら裕福な家庭に見えたかもしれませんが、どこかに出かけた、連れて行ってもらった記憶もないんです。忘れられないのが、小学校低学年の頃、目の前でお袋が親父に殴られて宙に浮いたことでした……。そのことがきっかけで心を閉ざすことになりました。どうやったらお袋が泣かないで済むとか、家族ってなんなのかとか、仲間ってなんなのかとか、俺は価値があるのだろうかとか。意識が変わった瞬間だったかもしれません……。

それこそ、自己重要感や自己肯定感を持てない大人や子供がめちゃめちゃ多い時代ですよね。突き詰めるとそこだと思っていて。情報過多な世の中、選択の幅が広がるってことは良し悪しなんですよね。思考やいろんなものが複雑化して本当の自分が見えにくくなっている。そんな時こそ、変なフィルターを取っ払って自分に戻っていくというか、本当の自分を認めてあげられるかが人生において大事なことだと思いますね。

過去は変えられないが、過去がどうなるかは 未来への挑戦で変わっていく。すでに昨年9月には、台湾で1万人を動員したフェス『東亞流行音樂節』にも出演。夢を叶えるのに遅すぎることはない。夢を笑わないという意識。いつだって“はじまりの道”は目の前に無限に広がっていることを教えてくれる。そんな、誰もの背中を押してくれる松田真将のメジャー1stアルバム『ROUTE55』に注目したい。

東亞流行音樂節 公演
東亞流行音樂節 公演

<INFOMATION>

●松田真将 1stアルバム『ROUTE 55〜はじまりの道』

2017年4月5日(水)発売(ユニバーサル・ミュージックジャパン)

1. はじまりの道

2. 愛してると言えるならいい

3. 鏡

4. Bliss of journey

5. こえ

6. あなたが今ここにいること、ただそれだけでいい

7. 虹が架かる時

8. あなたが今ここにいること、ただそれだけでいい- 台湾LIVE-

●松田真将 LIVE2017 『Route 55〜はじまりのみち〜』

公演日:2017年4月9日(日)開場/開演:16:00/17:00

会場:名古屋国際会議場 センチュリーホール 

公演日:2017年4月15日(土)開演:15:00〜

会場:福岡キャナルシティ博多(新星堂レコ発野外ライブ) 

●ラジオ番組『Route 55』

@FM(NAGOYA 80.7MHz、TOYOHASHI 81.3MHz)

毎週水曜日 20時半〜21時 オンエア

http://fma.co.jp/

●松田真将 公式サイト

http://shin-official.com

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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