見取り図にとって「東京進出」という表現が正しくない理由
多忙な見取り図、2021年は東京と大阪を新幹線で290往復
お笑いコンビ・見取り図が4月より大阪から東京へ活動拠点を移すことが、2月27日に発表された。
見取り図といえば、『M-1グランプリ』で2018年大会から3年連続で決勝進出を果たし、2019年には『第4回上方漫才協会大賞』で大賞に輝くなど、現在のお笑い界をリードする人気コンビだ。
『ノブナカなんなん?』(テレビ朝日系)、『ラヴィット!』(TBS系)といった多くのテレビ番組に出演し、2月26日からは『見取り図×ニューヨークのなりたいテレビ』(日本テレビ系)もスタート。売れっ子になってからも精力的に、YouTubeチャンネル『見取り図ディスカバリーチャンネル』の制作に取り組むなど、とにかく多忙を極めている。
見取り図本人は好んで「東京進出」とは表現してこなかった
近年は東京と大阪を何度も行き来する生活が続いており、2021年12月28日放送『八方・今田のよしもと楽屋ニュース2021 ファイナリスト大集合!ゴン攻め&ビッタビタの大スクープ!うっせぇわSP』(ABCテレビ)出演時、2021年は東京と大阪を新幹線で年間290往復したことを明かした。番組のなかで盛山晋太郎は「東海道を300往復して、富士山がちょっと動いていることに気づいた」と発言。共演者から「だいぶ疲れている」と心配されたほどだ。
また盛山は、2021年3月14日更新のnoteのなかで東京での遠征仕事でホテル生活が続いていることに触れ、連泊の合間に30分だけ大阪の自宅に帰ったと記述。わずかな時間の自宅滞在だったが「リセットされた感がある」と語っていた。2021年4月に見取り図をインタビューした際、盛山は「あのときは本当に忙しくて」と振り返り、リリーは「最初の頃はホテル暮らしが精神的にしんどかった。今は前よりもリセットできるようになり、どんな場所でも落ち着いて仕事ができるようになってきた」と、東京での仕事にようやく慣れたと話していた。
東京でのテレビ出演が増えたこともあり、拠点を変えるのは当然の選択かもしれない。ただ「劇場番長」と称されるだけに、所属するよしもと漫才劇場を卒業するのは、苦渋の決断だったのではないか。
メディアでは、「見取り図、東京進出」の見出しが躍った。しかしこの表現は、実は正しいものではない。というのも彼ら自身、「東京進出」というワードを好んで使っている印象がなかったからだ。
盛山晋太郎「東京、大阪の垣根なんてない」
見取り図にインタビューした際、「東京進出」との言葉を用いて筆者が質問すると、盛山は「東京、大阪の垣根なんてない」と言っていた。
確かに居住地は東京になる。でも、仕事をするところはひとつの場所に定めていない。だからこそ、今までも、これからも「東京進出」という言葉を積極的には使わないのかもしれない。
マップ(地図)を想起させるそのコンビ名であったり、「いろんなものを発見する」という意味も持つ単語「ディスカバリー」をYouTubeチャンネルのタイトルに持ってきたり、見取り図を取り巻くのは「行動範囲の広さ」だ。
前述した東京・大阪間の290往復や、1日12ステージに出演するために大阪の劇場を駆け回る様子を捉えた密着ドキュメント(2021年10月10日更新『見取り図ディスカバリーチャンネル』)など移動が付きものなところも、拠点をひとつに絞らない活動スタイルに通じている。
東京拠点は『M-1』ラストイヤーへの布石?
ただ、東京を拠点とすることで期待できるのは、「見取り図の漫才の精度がより磨かれるのではないか」というところである。
雑誌『お笑い2021 Volume.4』(2021年/竹書房)のインタビューでも、盛山は「テレビに出たくてこの世界に入ったんですけど、それで劇場公演や単独ライブがロークオリティになるのは違うと思いまして。やっぱりそこは地に足を付けてね」と漫才第一であることを口にしている。
『M-1グランプリ2021』では準決勝で敗退。一部では、「テレビに出すぎて、漫才に力を入れることができなかったのではないか」と邪推の声があったそうだが、2021年12月23日放送『やすとものいたって真剣です』(ABCテレビ)で盛山は「劇場などでの漫才本数は、2021年は450本以上。めちゃくちゃ漫才と向き合った」ときっぱり否定している。
拠点を東京に移すことで時間をより有効的に使え、漫才にも好影響が生まれるはず。2022年、『M-1』ラストイヤーを迎えた見取り図。2021年大会終了後に大阪でおこなわれた記者会見では、次回開催のエントリーについて「日々の劇場での漫才を頑張りたい」と明言は避けていた。ただ活動拠点が東京となったことが、最後の『M-1』挑戦に向けての布石になっているのかもしれない。