ノート(108) 機械的に更新される起訴後の勾留 いよいよ公判前整理手続が始まる
~整理編(18)
勾留76日目
初の勾留更新
「裁判所から書類が届いているから、確認してくれるか」
この3日間ほどは特に動きがなかったが、週明けの月曜日であるこの日は、朝食後、刑務官からそう言われた。見てみると、5日後の12月11日に期限を迎える勾留について、更新するという裁判所の決定書だった。
起訴後の勾留期間は起訴日から2か月間であり、特に身柄拘束を継続する必要がある場合に限り、1か月ごとに更新できるとされている。ただし、次の4つに該当する場合を除き、更新は1回限りとされている。
(1) 重大犯罪:死刑、無期、短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯した
(2) 常習犯:常習として長期3年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯した
(3) 罪証隠滅:罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある
(4) 人定不詳:氏名又は住居が分からない
僕の場合、起訴されている事実や罪名、証拠関係などからこのどれにも当たらないはずだったが、それでも裁判所は(3)を理由として勾留更新を決定していた。
保釈請求をすればまず許可されるであろうと思われるような事案であっても、請求がない限り、(3)を理由として機械的に勾留更新が続けられるというのがわが国の刑事司法の実態だ。
今さらこうした実務の運用が変わるはずもなく、次の期限である1月11日も、その数日前には当然のように更新が決定されるものと思われた。
現職時代、公判を担当した事件で勾留更新の時期が来ると、裁判所の書記官から「裁判官が勾留更新の判断をするのに必要なので、事件記録を貸してもらいたい」といった連絡が来ていた。
検察事務官を通じて裁判所に貸し出すわけだが、裁判官がきちんと読んでいるのかと疑いをもつほど、あっという間に事件記録が戻ってきて、勾留更新が決定されていた。
裁判官による逮捕状や勾留状の発付があたかも自動販売機のようだと批判され、確かにそのとおりだが、起訴後の勾留更新の方がはるかに機械的であり、裁判所の姿勢に強い違和感を覚えざるを得ない。
公判前整理手続が始まる
この日は、いよいよ大阪地裁で第1回の公判前整理手続が行われた。
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