男女平等先進国ノルウェーでも、まだまだ働く女性の活躍には課題がある。日本の女性たち84名がオスロへ!
日本の女性84名がオスロで現地視察
女性リーダーの育成、能力開発を図るNPO法人 J-Winによる海外研修がフィンランドとノルウェーで開催され、ノルウェーと日本で働く女性たちが交流をしました。6日、首都オスロではノルウェー経営者連盟(NHO)とノルウェーにおける産業革命を推進するイノベーション・ノルウェーとの協力により、フォーラムを開催。KDDI株式会社、ヤマトグローバルエキスプレス株式会社など、日本の約40社から管理職候補(60%)、あるいは既に管理職(40%)の女性たち84名が参加しました。
「女性は石油よりも大事」
ノルウェーでは将来的に枯渇するであろう石油産業の代用として、新しい産業革命やさらなる女性人材の育成が必要とされています。70年代初頭に50%だった働く女性の割合は2013年に75%に。元ノルウェー首相で現NATO事務総長であるイェンス・ストルテンベルグ氏は、「ノルウェーの女性は石油よりも大事」という名言を残しています。
しかしながら、ノルウェーの女性の社会進出にはまだまだ課題も多いと語るのは、イノベーション・ノルウェーCEOのアニータ・クローン・トローセット氏。同氏は2人の子どもを持ち、ノルウェーの働く女性の顔としても知られています。
まだまだ男性がトップのノルウェー
ノルウェーではCEOの役職に就いているのは3%、女性の起業家は30%、民間企業で働く男性の割合は10人中1人に対し、10人中7人の女性がいまだに国営企業で働いています。
学歴が重要視されるノルウェーでは、高等教育機関を卒業する女性の割合は32.3%と、男性の26.2%よりも高いにも関わらず、リーダーの役職に就いているのは男性が64.3%、女性が35.7%です。また、ノルウェーでは医者からのドクターストップを理由に病欠で長期的に職場を離れる割合が世界的にも高く、その割合は男性よりも女性のほうが60%も高くなります。
この見えない壁はなにか?
トローセット氏とともに、日本の女性たちは話し合いました。同氏は、女性たちに「完璧である必要はない」、「親が子どもたちに新しいロールモデルを見せることが大事」、「上の役職に就くことをためらっている部下を、後押しする人になってほしい」と伝えます。
「私は料理が下手だし、ヘビースモーカー、朝は子どもに服を選んであげることもしない。そういう意味では完璧なロールモデルではないの。でも2歩下がって、自分が重圧で燃え尽きないようにすることも大事」。
トローセット氏は、ブログを書き始めた当初、国内メディアから馬鹿らしいと酷評されたエピソードを振り返りますが、今ではソーシャル・メディアから積極的に発信をする代表的な企業リーダーとして評価されています。
ノーベル委員会 女性委員長が後悔した、子どもと過ごせなかった時間
男女平等先進国ノルウェーとして世界的に評価されているノルウェーですが、つい最近、意外なことがメディアで話題になっていました。
ノーベル平和賞の受賞者を決めるノルウェー・ノーベル委員会の新委員長は女性であるカーシ・クルマン・フィーベ氏。かつては保守党の党首も務め、米誌『Forbes』が選ぶ2015年「世界で最も影響力のある女性」100人で86位にランクインしています。誰もが認める世界的に大きな影響力を持つ女性です。
しかし、10月末にファイブ氏の娘が、「仕事で忙しいママが、家にいないことがずっと寂しかった」という内容の自著本を出版しました。国内の最大手新聞アフテンポステンでは「母親のファイブ氏が後悔していることがひとつだけある」という親子のインタビュー記事が取り上げられ、大きな話題に。「子どものために母親は父親以上に家にいないといけないのか?」、「やはり女性の労働市場進出には壁があるのか?」、「なぜファイブ氏は後悔しないといけないのか?」と、働く女性と母親の両立の困難さについて議論が巻き起こりました。
日本と比較すると、男女平等が当たり前のように浸透しているノルウェーで、この話題がここまで注目を集めたことは、筆者としては意外に感じたのを強く覚えています。
「完璧な人なんて、いないのよ!」
男性と違い、仕事人として、親として「完璧」が求められる女性。ノルウェーにはない文化、「世間」という考え方がある日本では、その壁はさらに高いのかもしれません。「完璧な人なんて、いないのよ!」ということを強調していたトローセット氏。
フォーラムに参加した女性たちからは、「どこの国でも問題は似ているなと感じた」という感想が多く、PwGあらた監査法人の公認会計士 寺井久美子氏は、「フィンランドでも同じことを言っていたが、理解してくれる良いパートナー選びがやはり大事ですね」と語りました。
統計結果はトローセット氏発表の資料より引用、一部は統計会社SSBでも確認可能
Photo&Text:Asaki Abumi