設置率83.4%…住宅用火災警報器の設置率をさぐる(2023年公開版)
火災は起こさないようにするのが一番だが、万一発生しても事前に防火・延焼防止対策を施し、さらに早期に発見・確認した上で早期に適切な対応をすれば、被害を最小限にとどめられる。その備えとして有益な手法の一つが火災警報器。今回は住宅用の火災警報器(※)について、消防庁が定期的に発表している設置率に関する調査結果「住宅用火災警報器の設置率等の調査結果」から、設置状況を把握確認する。
直近の2023年6月時点における全国設置率は84.3%。一方2014年6月調査回分から確認が始まった条例適合率は67.2%との結果が出ている。
以前は各消防本部が多様な調査方法を用いた結果を集計していたが、2014年6月分からは消防庁の指示により全国統一の調査方法(訪問調査)を原則とする調査様式で各消防本部などが行う形となったため、調査様式変更前後で数字上のぶれが生じ、やや値が下がる結果が出ている。しかしそれ以降は再び値を上げ、8割台に達し、なおおおよそ上昇が続いている。実情として住宅用火災報知器の設置状況は順調に進んでいると見てよい。しかし設置率84.3%との値は、見方を変えれば1割台後半はまだ未設置の住宅が存在することになる。
これを都道府県別に区分し、高い順に並べ替えたのが次のグラフ。
最高値を示したのは前年の2022年6月時点同様福井県で95.6%。ほぼ20軒に19軒が設置済み。逆にもっとも低いのは沖縄県で62.0%。5軒に3軒程度しか設置が進んでいない。全国平均を下回る地域は27。9割超えはトップの福井県と宮城県、東京都、大分県のみ。
住宅火災における死者の多くは高齢者で、上記にある通り原因としては逃げ遅れがもっとも多い。さらに発生時間別では「火災件数そのものは起床している時間が多い」ものの、「火災による死者数は就寝時間帯の方が多い」結果が出ている。次のグラフは最新の消防白書の公開値から作成したものだが、全数比率の動向でその通りの結果が出ている。
つまり人命の観点では就寝時間帯の火災によるリスクは他の時間帯よりも大きい。そのため火災警報器は寝室への設置が義務付けられている。
繰り返しになるが、現状では非設置による罰則規定は無いものの、コストとリスクを天秤にかければ、特に戸建住宅居住者には早急に設置を願いたい。そして普段は使わないがいざという時に確実な稼働が求められるタイプの機器、保険的な道具に関しては、定期検診と定められた期間毎の付け替えも忘れないようにしよう。
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※住宅用の火災警報器
2004年6月2日の消防法改正で住宅用火災警報器の設置に関して、新築住宅は2006年6月1日以降のもの、既存住宅は市町村条例で定める日(ただし2011年6月1日まで)に順次義務化された。つまり現状では日本全国で新設・既存住宅すべてで設置が義務付けられていることになる(ただし罰則規定は無い)。
住宅火災における死者の発生要因の多くは、火災における逃げ遅れ。自ら火を放った事案以外での火災による死者のうち、約6割は逃げ遅れを起因としており、国内外で住宅用火災警報器の設置で死者発生リスクや損失拡大リスクが減少するとの統計結果も出ている。
もっとも一定規模以上の共同住宅などで自動火災警報設備などが設置されることで、住宅用火災警報器の設置が免除される場合もある。今回確認する設置率は、単純に設置義務住宅において一か所以上設置されている世帯を指すが、別指標として「住宅の部分すべてに設置されている世帯率」を意味する「条例適合率」も存在する。条例適合率は当然設置率よりも低い値となる。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。