サラリーマン世帯の「家計の国民負担率」を推計してみた~世帯所得1千万円以上では50%超~
国民負担率が話題になっています。
岸田首相が進める「国民負担率50%超」で少子化は加速! 年収500万円の手取りは20年で33万円も減っている(2023年7月6日 週刊女性自身)
記事の中では、筆者も国民負担率の今後の推移に関する推計を行い、コメントを寄せました。
コロナでの大盤振る舞いや「異次元の少子化対策」に代表される全世代型社会保障制度の整備など「給付あれば負担あり」なので、全世代型の大幅な増税は今後も不可避なのは間違いありません。
ただ、国民負担率はあくまでもマクロの数字であり、国民負担率をそのまま私たちの家計負担にそっくりそのまま置き換えるのは難しいところがあります。
そういう事情もあり、先の週刊女性自身の記事では、家計負担に置き換える興味深い工夫がなされていますが、本記事ではその試みをさらに一歩進めた考察を行ってみたいと思います。
具体的には、総務省統計局「家計調査」(家計収支編 第2-3表 年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(全国・勤労世帯))から、年収別の家計の国民負担率を推計してみました。
ただし、家計調査では、法人税収や資産税収等考慮できない負担があったり、分母となる実収入が要素費用表示の国民所得とは異なることに留意する必要があります。
そうした限界を踏まえたうえで推計結果によれば、平均的な世帯では47.6%と2022年度の国民負担率の実績見込み47.5%程度の数値が得られました。
総じてみれば、年収が低いほど家計の国民負担率は低く、年収が増えるほど家計の国民負担率も上昇していく傾向にあることが確認できます。なお、年収500万円未満の所得階層では消費税等の負担が所得税等直接税の負担を上回っています。また、世帯所得年収で1千万円以上の世帯では家計の国民負担率が50%を超え、すでに五公五民となっていることも分かります。
国民負担率の批判にもあるように、負担だけではなく社会保障給付(年金、医療、児童手当等)を考慮に入れれば、年収300万円未満の世帯では給付が負担を上回るか給付と負担がトントンとなっています。裏を返して言えば、給付が社会保障に限定されますが、それ以上の年収の世帯では負担が給付を上回っているともいえます。
さて、このままいけば、近い将来マクロの国民負担率は確実に50%を超えると思われますが、その時、家計はその負担に耐えられるでしょうか?
あるいは、重税国家から脱却できる日はやってくるのでしょうか?