JR北海道が過去最大の営業赤字 何が経営を厳しくさせたのか
「経営が厳しい」と言われ続けているJR北海道。新車投入の遅れや古い車両の使用長期化が目立ち、必要な設備投資もままならない状況になっている。石勝線夕張支線は廃止が確定し、札沼線の北海道医療大学~新十津川間も廃止が地元とほぼ合意されている状況になった。
そんな中で、JR北海道は中間決算を発表した。グループ全体として上期の最終損益は11億円の赤字、営業赤字は過去最大の170億円、経常損益も1億円の赤字となった。
2017年度の線区別収支状況としては、全線区で551億円と、前年度に比べ25億円赤字が増えた。その中で新千歳空港行を含む札幌近郊圏では赤字額を圧縮できた。
何がJR北海道の経営を厳しくさせたのか
11月9日に発表されたJR北海道・島田修社長の談話によると、台風21号と北海道胆振東部地震の発生による鉄道運輸収入の減収があり、災害の関連でバスの運休や店舗休業、ホテルのキャンセルなどがあったという。
厳しい自然災害の中で、下期は収益の確保と費用の削減に努めるという。
線区別収支状況についてのJR北海道の説明によると、2017年度は石勝線の前年度に起こった台風災害からの回復、札幌圏の収支が改善されたことが記されていた。一方で、北海道新幹線の新青森~新函館北斗の営業損失が拡大した。車両の検査や、青函トンネル内の老朽設備の取り替えが理由だという。
自然環境が厳しく、過疎化が進んでいる中で路線ごとの赤字が増えている状況の中、台風と地震が追い打ちをかけ、さらにJR北海道の経営は厳しい状況に追い込まれた。台風と地震のため、頼みの綱の関連事業も売上が落ち、グループ全体の経営も悪化している。
鉄道各社の決算報道を見ていると、ことしは豪雨などで厳しい状況に追い込まれ、それゆえ厳しい数字となっているという会社が多い。しかしJR北海道の場合、もともとの悪い状況にさらに追い打ちをかけられたという印象さえある。
自然災害がJR北海道の経営を厳しくさせたというのは、事実であろう。しかし自然災害に強い鉄道にできない状況にあるということもまた確かである。災害に強いように、設備を強化し、すばやい復旧が可能にできるようにするという力もまたJR北海道にはない。
JR北海道の各路線は、札幌都市圏以外は閑散路線であり、短編成の気動車が普通列車として走っているという路線も多い。地域の乗客は、通学客以外に見込めないというエリアもある。
さらに災害のたびに、高速バスに特急の乗客が流れるという現象も起こっている。鉄道が復旧に時間がかかるのに対し、バスは最近できた高規格の道路を使用するため、そのたびに長距離の利用客が高速バスに流れる。これが、JR北海道の現状を厳しくさせる。
後手の対策ではJR北海道は厳しいままだ
災害のたびに復旧に追われ、車両は古いものをだましだまし使う。国からの補助は抜本的な対策に使われず、維持管理をメインに使用されている。関連事業からの収益で鉄道事業を補助し、その方法もだんだん難しくなってきた。
維持していくことが厳しいなかで、災害がその状況に追い打ちをかける。地元の市町村は金を出し渋り、北海道は抜本的な対策を取ろうとしても取る意志がない。本来ならば高橋はるみ北海道知事がリーダーシップを取るべきだが、知事にそこまでの意欲はない。
知事も国に陳情してはいるものの、安倍政権は国土のインフラ整備という地味なことには関心はなく、鉄道でもリニア中央新幹線などの成長しそうなテーマに力を入れている。
こういった状況の中では、国費を投入して施設や車両の整備を行い、JR北海道が安全な運行に専念することができればとは思うものの、政府に鉄道インフラの充実といった考えはなく、安倍首相も関心を持っていない。まして、比較的立憲民主党が強い北海道に対し、縁故主義的な色彩の強い安倍政権がインフラ強化のために力をつくそうとは、思わないだろう。
本来ならば国の予算の中で鉄道インフラの整備を行うことにし、抜本的な対策を取ることが必要だ。JR北海道は、ぎりぎり生き残っている状況に置かれている。もはや政府が前面に立って改善策を立てていくしか、方法はないのだが、はたして可能なのだろうか?