日本、中国、インドのトップはアジア諸国の人達からどれほど信用されているのか
アジアで大きな影響力を持つ国のトップ、日本の安倍氏、中国の習氏、インドのモディ氏は、「世界に良い影響を与えているとして信用できる」と思われているだろうか。要は信頼のおける人物として見られているだろうか。アジア諸国の国民に尋ねた結果を、アメリカ合衆国の民間調査機関PewResearchCenterが2015年9月に発表した調査結果「How Asia-Pacific Publics See Each Other and Their National Leaders」から確認していく。
調査対象母集団に向けて、アジア主要国の日本、中国、インドそれぞれの実質的政治上のトップに当たる安倍氏・習氏・モディ氏を挙げ、それぞれに対し、世界に良い影響を与えている、良い方向に導いているとして信用しているか否かを「大いに信用」「信用」「あまり信用しない」「まったく信用しない」(と「分からない」)の選択肢の中から1つ選んでもらい、そのうち前者2つを信用派、後者2つを非信用派としてカウント、該当人物がいる国の回答を除外して中央値を算出した結果が次のグラフ。
安倍氏への信用派は43%、習氏の47%の方が4%ポイントほど高い値。一方で非信用派は安倍氏が19%に留まり、習氏は10%ポイントの29%。習氏は肯定・否定派による二分化が著しい傾向にある。モディ氏の場合は安倍氏・習氏の中間的ポジションだが、やや非信用派が多い。
これを各国の詳細回答率別に見たのが次以降のグラフ。
まず日本の安倍氏だが、中国と韓国からの嫌悪度が著しい。特に韓国は6割超えが「まったく信用せず」の回答を示し、中国以上の強烈さを示している。「分からない・無回答」も1%でしかない。信用派の少なさはインドやインドネシア、パキスタンでも見受けられるが、これらの国は「分からない・無回答」の回答率が4割前後に達しており、「そもそもよく知らない」的な雰囲気が強い。意志を明確化した人に限れば、いずれも高い信用派で占められている。むしろ明確な意思表明をした人の中のみで信用派を再算出すると、韓国と中国以外では、よりによって日本が一番信用派が少ない、あまり笑えない状況にあるのが実情。
中国の習氏では中国自身の回答が無い。元資料でも特に説明は成されていないが、他の調査同様「国内政治に係わる批判的な意見」に抵触する用件は、設問そのものが不可能となる「お国事情」によるものだろう。それ以外では領土関連問題で係争中のベトナムやインド、インドネシアで値が低め、日本はもっとも強い嫌悪感を示している。一方でオーストラリアをはじめ、インド、インドネシア、パキスタンのように「分からない・無回答」の回答率が高いのも特徴的。
インドのモディ氏はインド自身が極めて高い値で信用されている以外は、2割から4割台が「分からない・無回答」を表しており、各国とも判断が難しい実情が表れている。係争中の中国やパキスタンの値はいくぶん低め。
これらを包括して確認できるように、信用派のみをカウントしたのが次のグラフ。「分からない・無回答」はそのような意思表示と評価し、それをのぞいた上での再計算は行わない。
最初に挙げたグラフで全体の中央値として5割を超えた人物が一人もいないことから分かる通り、全体的に信用が置かれている人物は皆無な結果が出ている。単純に順位付けをすると、安倍氏がトップの国はオーストラリア、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、ベトナム(、そして恐らくは中国自身)、習氏はパキスタン、韓国、モディ氏はインド(、中国)となり、安倍氏と習氏が競り合う形であることが分かる。
なおほぼ同時期に行われた同様の別調査では、アジア地域におけるアメリカ合衆国のオバマ大統領に対する信用度は69%。今回の三氏は、いずれもオバマ氏には及ばないということか。
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