Yahoo!ニュース

イ・ジョンフがポスティングでジャイアンツ入り 「同郷の先輩」イチローを追い韓国からメジャーへ

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表/KBO取材記者
イ・ジョンフ(写真:キウムヒーローズ)

ポスティング制度を利用したメジャーリーグ移籍を目指していた韓国KBOリーグ、キウムヒーローズのイ・ジョンフ外野手(25)のサンフランシスコ・ジャイアンツ入りが決まったとキウム球団が明らかにした。同球団からのメジャーへのポスティング移籍はカン・ジョンホ、パク・ピョンホ、キム・ハソンに次いで4人目。

契約内容はアメリカメディアが「6年1億1,300万ドル(約163億8,500万円)」と報じている。

イ・ジョンフは1998年生まれの25歳。2017年に徽文(フィムン)高からドラフト1次指名でキウムの前身ネクセン入りした。1年目から全144試合に出場し新人王を獲得。その年から2022年まで毎シーズン3割2分以上の打率を記録してきた左の巧打者だ。

2021年には打率3割6分で首位打者を獲得。翌2022年には打率、打点、安打数でトップに立ち、リーグMVPを手にした。通算打率は3割4分で3000打席以上の選手でリーグ歴代1位を誇る。

来季からのメジャー行きを念頭に置いて臨んだ2023年は、かつてのチームの先輩キム・ハソン(パドレス)の助言もあって打撃フォームを調整。メジャー投手の速い球に対応するためスタンスを若干狭くし、トップの位置を少し下げた。

3月に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本戦でダルビッシュ有(パドレス)、今永昇太(DeNA)から走者を置いた場面でヒットを放つなど結果を残したが、シーズン開幕後は4月末までの打率が2割1分8厘と苦しんだ。

しかし以前のフォームに戻しながら徐々に修正。6月には打率を3割台に乗せるも、7月22日のロッテジャイアンツ戦の守備時に左足首を痛め、戦列を離れた。左足関節前距腓じん帯損傷と診断され同月27日に手術。85試合に出場した時点で事実上今季を終えた。

ホームランを放ち、ファンの声援に応えるイ・ジョンフ(写真:キウムヒーローズ)
ホームランを放ち、ファンの声援に応えるイ・ジョンフ(写真:キウムヒーローズ)

イ・ジョンフの父は1998年から2001年途中まで中日でプレーしたイ・ジョンボム。イ・ジョンフは父の中日1年目の8月に愛知県で生まれた。父ジョンボムはスピード感のあるプレーで人気を集めた野手で、1994年にはMVPにも選ばれた韓国球界のスーパースター。親子2代でのMVP獲得はこの父子がリーグ史上初となる。

KBOを代表する選手として活躍を続けたイ・ジョンフは、韓国代表としてもアジアプロ野球チャンピオンシップ(2017)、アジア大会(2018)、プレミア12(2019)、東京オリンピック(2021)、WBC(2023)と国際大会でも結果を残してきた。かねてからメジャーでのプレーを希望していたが、「幼い頃は日本でやることが夢でした」と話す。

イ・ジョンフの背番号は新人の時は41だったが、2年目に51番に変えた。51といえばもちろんイチロー。「同郷」の先輩の番号を背負った。父の来日時、当時のスポーツ紙には「韓国のイチロー」の文字が躍ったが、二十余年を経てそのキャッチコピーは息子のものに。そしてイ・ジョンフはそのイチローが活躍を続けたメジャーリーグに進むこととなった。

これまでメジャーリーグでプレーした韓国人選手は26人。ジャイアンツ所属は2017年のファン・ジェギュン(現KTウィズ)以来2人目となる。イ・ジョンフと共に今オフにポスティングでのメジャー行きを目指す投手のコ・ウソクは、イ・ジョンフの妹と結婚したため2人は義兄弟の関係にある。

◇イ・ジョンフ KBOリーグ通算成績(太字はリーグトップ)

年度 チーム 打率 試合 打数 安打 HR 打点 盗塁 三振

2017 ネクセン .324 144 552 179 2 47 12 67

2018 ネクセン .355 109 459 163 6 57 11 58

2019 キウム .336 140 574 193 6 68 13 40

2020 キウム .333 140 544 181 15 101 12 47

2021 キウム .360 123 464 167 7 84 10 37

2022 キウム .349 142 553 193 23 113 5 32

2023 キウム .318 86 330 105 6 45 6 23

通算     .340 884 3476 1181 65 515 69 304

(関連記事:メジャーを前に最後の打席?イ・ジョンフが本拠地最終戦に代打で登場 7月以来の復帰

(関連記事:WBC韓国代表のイ・ジョンフが左足首手術で全治3か月 「早く回復して、必ずグラウンドで」

⇒ キウムヒーローズ紹介(ストライク・ゾーン)

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表/KBO取材記者

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FM那覇)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

室井昌也の最近の記事