ロマゴンがカリフォルニアで本格始動。王者に復帰すれば井岡一翔と統一戦はもうすぐだ
同胞がいる米国で再スタート
リングを離れて1年が過ぎた軽量級の元4階級制覇王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)が先週半ばから米カリフォルニア州コアチェラで復帰に備えて本格的なジムワークとロードワークを開始している。現時点でカムバック戦の具体的な日程は未定だが、ニカラグア、米国メディアによると来週にもアナウンスされるという。
海外メディアには“チョコラティート”、日本のファンやメディアからは“ロマゴン”の愛称で呼ばれるゴンサレスは昨年9月ラスベガスのゲンナジー・ゴロフキンvsカネロ・アルバレス2の前座でモイセス・フエンテス(メキシコ)に一撃KO勝ちして以来リングから遠ざかっている。最大の理由は右ヒザ半月板の負傷。隣国コスタリカで12月に出術を行い、経過は良好と伝えられたが始動するまで5ヵ月以上を要した。万全の状態で復帰することを念頭に置いたためだろう。
5月、地元マナグアのジムに戻ったロマゴンは6月に一度コアチェラでトレーニングを実行している。この時はほとんどメディアに取り上げられなかった。本人はそれなりのモチベーションを持って渡米し取り組んだはずだが、米国ビザの更新も関係しニカラグアへUターン。今回の特訓の予行演習みたいなものに思える。
ちなみにロマゴンは以前ロサンゼルスで行った試合やフエンテス戦の前にもコアチェラで最終調整を行った。これは同地の元IBFバンタム級王者ランディ・カバジェロ(米)の父マルコス・カバジェロが選手をコーチしていることが理由。カバジェロ父はニカラグアからの移民。今回はチーフトレーナーとして現場を仕切る。これにフィジカルコーチとロマゴンの父ルイス・ゴンサレスがコラボしてチームを組む。
500ラウンドのスパーリングを敢行
5月から数えて約4ヵ月。ニカラグアと米国を往復したロマゴンはカルロス・ブランドン・マネジャーによると、すでに500ラウンド以上のスパーリングを実行している。それを実証するようにコアチェラに戻ったロマゴンは、とても1年以上のブランクを持つ選手には見えない、素晴らしいコンディションとの評判だ。朝6マイル(約10キロ)走り、午後3時からジムワーク。夜8時にはヨガ教室に通いメンタル面をケアする。
いつでもリングに立てる状態――。そう表現できる状況に思えるが、ブランドン・マネジャーは「石橋を叩いて渡る」がごとく慎重な対応を見せる。「チョコラティ―トがリングで本当に活躍できるのか厳格に評価し判断しないといけない。それまで相手の名前も公表できない」と同マネジャー。
この陣営の姿勢が復帰のスケジュールが決まらない理由の一つに思える。だが当面の目標はただ一つ。115ポンド(スーパーフライ級)王座の奪回だ。一時噂された118ポンド(バンタム級)転向は今のところ視野に入れていない。「115ポンドで再び歴史をつくらせたい」とブランドン氏。復帰戦でいきなりタイトル挑戦という展開も絶対ないとは言い切れない。
DAZNから熱烈オファー
むしろ、その線の方が有力かもしれない。ロマゴンは帝拳ジムと強い結びつきがあり、米国大手のゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)とも友好な関係にある。また米国で「SUPERFLY」シリーズをプロモートしたトム・ローファー氏もロマゴンのキャリア進行のカギを握る人物の一人。そこへ参画してきたのが英国のプロモーター、エディ・ハーン氏。スポーツ動画配信DAZNの米国市場開拓の旗頭という立場でロマゴン陣営に接近。「私はチョコラティートの熱烈なファン。いつでもウェルカム」とメディアに発言。復帰戦のプロモートにやぶさかではない。
以前ロマゴンと何度か“共演”したゴロフキンがDAZNと大型契約を結び10月5日ニューヨークでIBFミドル級王座決定戦に臨む。そのリングでロマゴンがカムバックする話もあるが、これは時期が短く無理。だがハーン氏にはWBAスーパーフライ級王者カリド・ヤファイ(英)という持ち駒がいる。またWBC同級王者フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)の最新防衛戦もハーン氏は共同プロモーターというポジションで携わった。地元で快勝したエストラーダはヤファイとの統一戦を希望。同じくハーン氏はヤファイvsゴンサレスの統一戦を頭に描いている。
サウジかベガスかハリウッドか
すでに期日は12月7日。サウジアラビアのアンディ・ルイスJr対アンソニー・ジョシュアのヘビー級戦のリングで開催という話も出ている。ヤファイは一時ロマゴンの標的としてクローズアップされた選手。その時は話が立ち消えたが、条件が揃えばスピード締結されてもおかしくない。またライトフライ級王者時代にロマゴンに挑戦し善戦しながら判定負けしたエストラーダもリベンジに燃えている。一度勝っているが危険度はヤファイよりも高い。
一方でロマゴンのカムバックは11月2日ラスベガスのカネロvsセルゲイ・コバレフのリングだといわれる。有力メディアの一つESPNデポルテスのコラムニストが「可能性が一番大きい」と伝えるだけに信頼性が高い。これはDAZNが中継するイベント。ハーン氏とサインを交わした(現時点では実現していないが)ロマゴンが移籍第1弾に臨む設定になる。
ロマゴンのターゲットには当然WBOチャンピオン井岡一翔(Reason大貴)も入っている。次戦というわけには行かないだろうがニカラグア人がヤファイに勝ち王者に就けば、実現に大きく前進しそうなファン垂涎の対決だ。日本人初の4階級制覇に成功し再び海外志向に傾く様子もうかがえる井岡だが、このカードは日本開催も十分あり得る。ロマゴンの復帰具合にもよるが、今から想像しても胸が躍る。
井岡が米国デビューしたSUPERFLY3を主催したローファー・プロモーター(360 Promotions)は昨年からロサンゼルスのハリウッドで興行を開催している。次回は10月27日。メインには“ゴロフキン二世”の呼び声もある強打者セルゲイ・ボハチュク(ウクライナ。15勝15KO無敗)が起用される。同氏との縁からロマゴンの復帰戦はこの日ではないかとも憶測される。
ロマゴンと井岡の試合を手掛けているローファー氏はSUPERFLY1からロマゴンとの絆が強い。もし元4階級制覇王者がハリウッドのリングに上がるなら、かなりの確率で井岡との夢の統一戦が締結に向かうのではないだろうか。ロマゴン自身も「すべてを捧げて王者に返り咲く。ヤファイ、エストラーダ、イオカ誰が進路を塞ごうとしても私は勝ちに行く」と固い決意を強調している。