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シャビはバルサに「ショータイム」を届けられるか...「時間」と「空間」を管理する司令塔システム。

森田泰史スポーツライター
バルサの監督になったシャビ(写真:ロイター/アフロ)

フットボールは、ショーではない。

だがこのクラブでは、ショーが期待される。そう、バルセロナだ。それを理解していない者は、長く留まることができない。ロナルド・クーマン、キケ・セティエン、エルネスト・バルベルデ、いずれも実質上の解任という憂き目に遭っている。

逆説的に言えば、その哲学なくしてシャビ・エルナンデス監督の就任はなかったかもしれない。いまもってなお、私はこのタイミングでのシャビの就任に反対だ。しかし、時は進む。現実を受け入れ、分析と考察を続ける必要がある。

アラベスに引き分けたバルセロナ
アラベスに引き分けたバルセロナ写真:ロイター/アフロ

事実、バルセロナのファン離れは深刻なテーマになってきている。

リーガエスパニョーラ第12節、バルセロナ対アラベスの一戦で、本拠地カンプ・ノウの集客数は3万9000人程度だった。キャパシティは9万8000人で、すでに100%の動員が許されているにもかかわらず、である。

当然、コロナ禍であるから、バルセロナの観光客数は減っている。その影響は大きい。また、この夏にはリオネル・メッシが退団した。加えて、クーマンの提示するフットボールが退屈となれば、「三重苦」である。ファンからすれば、スタジアムに足を運ぶほどではないという答えに行き着く。これほどまでにバルセロナでファンの興味が失われたのは、1990年代半ば以来だといわれている。チャンピオンズリーグの誕生で、ハレーションが起こった、あの頃だ。

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■バルサの中盤

シャビの就任で、バルセロナが「回復」せねばならないのは中盤だ。ガビ、ペドリ・ゴンサレスと期待のカンテラーノとヤングプレーヤーが出てきているが、問題はセルヒオ・ブスケッツとフレンキー・デ・ヨングの使い方である。

ブスケッツ、シャビ、アンドレス・イニエスタ。バルセロナの最盛期において、ミドルゾーンを牛耳っていた3選手だ。しかし、それ以降、ブスケッツのパフォーマンスは下降線を辿っていった。

ブスケッツが良いプレーをするためには、彼を「プロテクト」する選手が周りにいなければいけない。ただ、それはフィジカルに優れた選手であるべきではない。その逆だ。テクニックがあり、ポジショニングに優れ、フットボールを理解している選手が必要だ。現に、イバン・ラキティッチ 、アンドレ・ゴメス、パウリーニョ、アルトゥーロ・ビダルといった選手が傍でプレーしている時のブスケッツのパフォーマンスというのは決して高くなかった。

そして、デ・ヨングだ。

2018―19シーズン、「ヤング・アヤックス」が欧州で躍進した。チャンピオンズリーグでレアル・マドリー、ユヴェントスと各国の王者級のチームを次々に撃破。その中心に、デ・ヨングがいた。

アヤックスでは、まさに獅子奮迅の活躍を見せていた。攻守において全権を与えられていた。そこにあったのは、自由だ。4トップを駆使したテン・ハーグ監督の下で、デ・ヨングはディフェンスラインと前線の繋ぎ役を担った。最終ラインに下がり、2枚のセンターバックと共にビルドアップでボールを前進させる。プレスを掛けられても、デ・ヨングが個人技で剥がすというシーンが度々あった。中盤でのラセ・シェーネとのコンビは抜群だった。

■シャビのフットボール

シャビはアル・サッドで【3−4−3】を使用していた。それはポゼッション率を高めるためだった。シャビの言葉を借りるなら、「システムではなくプレーモデルが重要だ」ということだ。

2019−20シーズン、アル・サッドの国内リーグ戦におけるポゼッション率は63%だった。

シャビは「数的優位」に拘りがある。相手が2トップでプレスを掛けてくれば、3バックで「3vs2」をつくる。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『WSK』『サッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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