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「韓国の次は日本!」 予想される中国の「報復措置」 経済制裁と歴史問題で圧力?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
「安重根追悼式」(111周年)ポスター(安重根義士記念事業会HPから)

 韓国では明日(25日)が初代内閣総理大臣・伊藤博文を暗殺した安重根の命日(111周年)にあたることから追悼式がソウル市内の孝昌公園で行われる。主催は「安重根義士記念事業会」で龍山区と抗日独立烈士宣揚団体及び安重根平和研究院の3団体が後援する。

 安重根の遺体は未発見のままだが、銅像が暗殺事件の現場となった中国黒竜江省のハルピン駅に建立されている。

 安重根銅像は2013年2月25日に大統領に就任した朴槿恵前大統領が4か月後の6月に訪中し、習近平主席に直接要請し、中国側が手掛け、建てたもの。

 日本政府が「銅像は日韓関係に役立たない」と不快感を示し、反対したにもかかわらず中国は韓国の要請から僅か半年で完成してしまった。当初は石碑とされていたが、いつの間にか銅像になっていた。それも記念館というおまけまで付いていた。そして2014年1月19日に現地で「安重根義士」なる開館式が行われた。当時官房長官だった菅義偉首相は安重根が伊藤博文の暗殺犯であることから安重根義士記念館が設立されたことに「テロリストへの礼賛」とコメントしていた。

 朴槿恵大統領の訪中(6月27-30)は韓国の外交の軸足が「米日」から「米中」へと転換した歴史的な瞬間だった。

 韓国は朴正煕政権下の1965年に日本と国交を結んで以来、外交の枢軸を同盟国の米国と友好国の日本に置いていた。従って、朴正煕政権以来、政権発足後の歴代政権の最初の外遊地は保守政権であれ、進歩政権であれ決まって米国で、その次が日本であった。 しかし、第18大統領に就任した保守派の朴槿恵氏は5月の訪米の後、 次の外遊先として選んだのは日本でなく、中国であった。中国が熱烈歓迎したのは言うまでもない。そのプレゼントこそがまさに「安重根像」だった。

 朴大統領は2015年にも日米の反発をよそに9月3日に中国で開催された「抗日戦勝70周年記念式典」に西側首脳として唯一出席している。中国はこの時も厚遇した。

 中国では皇帝の色でもある黄色のジャケットを着た朴大統領を中国側は天安門のひな壇の最前列、それもど真ん中に立たせた。同盟国の北朝鮮からやって来た崔龍海政治局常務委員(国防委員会副委員長)が端に立たされていたのとは好対照だった。ちなみに崔氏は天安門をバックに記念写真を撮った時は向かって二列目の左端に追いやられていた。

 しかし、朴大統領が2016年7月にハネムーンの関係にあった習近平主席の要望を拒否し、オバマ大統領からのTHAAD(高高度防衛ミサイル)の韓国配備要請を受け入れた時は、中国は猛反発した。中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹誌である「環球時報」が韓国に対して制裁を求める論説や社説を公然と掲載したのだ。

 同紙は7月10日の論評で「(中国は)米韓の行動に言葉で抗議するだけでなく、相手が痛がるような強力な制裁を掛けるべき」と主張し、韓国が配備を決定した7月8日の社説でも「韓国配置を積極的に推進した韓国政治家らの中国入国を制限し、彼らの家族の企業を制裁すべき」と「報復措置」を唱えていた。

(朴槿恵政権が戦々恐々の中国の「報復措置」)

 実際、当時中国国内では韓国への観光自粛の機運が高まり、韓国の観光業、旅行業、免税店などが被害を被った。韓国の音楽、映画など文化産業への検閲も強まり、韓流ブームにブレーキがかかった。さらにTHAADの敷地を提供したロッテグループの商品を中心に韓国製品不買運動が起こり、年間8.5兆ウォン(8500億円)の損害が生じた。

 習近平政権は日本が米国との外務・防衛担当閣僚による「2プラス2会談(安全保障協議委員会)」で中国を名指しで全面批判したことに反発している。

 中国外務省の副報道局長は日本に「アメリカの戦略的属国」とのレッテルを貼り、「中日関係を破壊した」と対日批判を強めているが、中国は今後、日本に対して韓国同様の「制裁」を掛けることも予想される。経済制裁だけでなく、しばらく鳴りを潜めていた歴史問題を持ち出し、圧力を掛ける可能性も想定される。

 数日前に韓国のテレビ「JTBC」が放映していたが、1932年に上海に建てられた旧日本軍のための慰安施設の撤去計画を中止し、「歴史的記念物」として保存を決定したこともそうした前兆かもしれない。

 慰安婦施設がある場所が再開発地域に指定されていることから上海市は撤去を計画していたようだが、中国政府は上海市に「文化財」として建物を保存するよう指示したとのことだ。

(日本とは異なり韓国が「米国か、中国か」の「二者択一」ができないのは進歩政権も保守政権も同じ!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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