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キャプテン吉田麻也が率いる「生まれ変わったLAギャラクシー」

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 「マヤはいいね! レベルが違う。素晴らしいリーダーだ」

 現地時間10月5日、LAギャラクシーのホーム、ディグニティ・ヘルス・パークのプレスルームでは、そんな言葉がアメリカ人記者の間で飛び交っていた。

 左腕にキャプテンマークを巻いた背番号4は、この日もディフェンスラインをまとめ上げ、オースティンFCのCF、ディエゴ・ルビオを何度も潰した。

撮影:筆者
撮影:筆者

 キックオフ直後から危険を察知して前でボールを奪うシーンや、インターセプトが光る。ギャラクシーの攻撃面は、FCバルセロナ育ちの背番号10、リキ・プッチが広い視野を活かしてのドリブル、鋭いパスでチャンスを作った。

 31分にギャラクシーが挙げた先制ゴールは、プッチが右サイドのオープンスペースに送ったボールから生まれた。後半の立ち上がりに追いつかれたものの、76分にも背番号10のドリブルがオースティンを剥がしたところでパス。それが決勝点に繋がる。2-1で勝ち点3を積み上げた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 強いLAギャラクシーが戻ってきた。今季、ホームで行われたゲーム16試合で負け無し。13勝3分で、プレイオフを見据えている。ギャラクシーは2002年、2005年、2011年、2012年、2014年と5度、MLS王者となっているが、ここ数年は低迷していた。特に昨シーズンは、8勝14敗12分で西地区14チーム中13位の体たらく。そんな姿はすっかり過去のものとなった。

 ファンもディグニティ・ヘルス・パークに返ってきた。今季のリーグ戦で最後のホームとなったこの日は、2万6574名のファンがスタディアムを埋めた。9月21日も2万5387名で満員御礼となっていたが、更に埋まった。

山根視来もレギュラーとして活躍する。右はプッチ
山根視来もレギュラーとして活躍する。右はプッチ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 番記者たちが会見場に移動し、グレッグ・ヴァニー監督、ディフェンダーのジョン・ネルソンが質問に応じた後、広報の女性がその場にいたメディア全員に問いかけた。

 「マヤはシャワーを浴びているけれど、待ちます?」

それぞれの記者が「もちろん!」と答えてから20分ほどが過ぎ、23時5分にベージュのスーツを着た吉田が現れた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 最後のインタビュアーとして私は質問した。

―――キャプテンとして心掛けていることを教えてください。

 「日本代表の時もそうですが、上手くいっている選手、そうでない選手、問題を抱えている選手、勢いに乗っている選手と色々あると思うんですが、全体のベクトルが正しい方向に向いているかどうかを注意していますね。それさえ上手くいっていれば、ある程度、きちんと進めると思います。一人が右に行って、もう一人が左に行ってとかやっていると、まとまるものもまとまらないので。僕の世代の選手と違って、厳しく言い過ぎると難しい点もあるんですが、その辺を上手くヒューマンマネージメントしながらやっているつもりです。簡単じゃないですね」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

―――昨シーズンと比べて、強いギャラクシーになった実感、やりがいはどのように感じていますか?

 「シーズン当初、序盤はそんなに感じなかったですけれども、徐々に勝ちが積み上がっていく上で、難しいゲームを制したり、ひっくり返したりしていくうちに『ホームでは絶対に負けないぞ』という自信というか、そういうものが付いてきて‥‥まぁ、過信になってはいけないので、地に足つけるところはしっかりつけて、修正するところはして、いいベクトルになるように気をつけています」

―――これまでのアメリカ生活で、得たものって何でしょうか?

 「ピッチ内外で、日々学びがあることです。サッカー選手として違うレギュレーションでシーズンを戦っていく、この広い国でどうやって戦うか、相手のレベルもそうだし、MLSにはMLSの戦い方があるということを感じましたし、ピッチ外でもクラブをどうやって経営するかや、他のスポーツビジネスを見ても、勉強になることが沢山あるので、この一年の経験が将来自分に生きるな、ということを凄く感じています

撮影:筆者
撮影:筆者

 頼れるキャプテン、吉田麻也は「まだ何も成し遂げていない」と繰り返した。MLSはリーグで首位だったとしても、プレイオフで全てが決まる。勢いのあるギャラクシーから、目が離せない。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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