Yahoo!ニュース

厳しさを増す大学生のふところ事情を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 大学も勉学の場。しかし同時に金銭面で学ぶことも多い

大学生活は高校生までの生活と異なり、より大人に近い立場になるため、出来る事・するべき事・許されている事が多く、また自由度も極めて高いものとなる。当然多種多様な出費が生じるため、それをまかなうための収入が欠かせない。その収入を平均的な大学生はどのようにして得ているのだろうか。独立行政法人日本学生支援機構では2014年2月に、2年おきの定点調査の最新版となる「平成24年度学生生活調査」を発表しているが、そのデータからもっとも一般的な大学生のモデルとなる「大学学部・昼間部」にスポットを当て、収入事情を探ることにする。

該当学生では3/4近い人がアルバイトに従事し、収入の一部としている。

↑ アルバイト従事者率(大学学部・昼間部)
↑ アルバイト従事者率(大学学部・昼間部)

アルバイトをすれば当然収入が得られる。しかしそれだけで学生生活の支出をすべてまかなえる人は稀。ほとんどは奨学金、実家からの仕送り、さらには貯蓄を切り崩して生活していく。そこで収入項目を大きく「家庭給付(仕送り)」「奨学金」「アルバイト」「定職・その他」に区分し、それぞれの収入推移と、収入全体に対する比率を経年でグラフ化したのが次の図。全体額の漸減、そして「家庭給付」額が大きく減少しているようすが分かる。

↑ 大学生収入事情(大学学部・昼間部・万円)
↑ 大学生収入事情(大学学部・昼間部・万円)
↑ 大学生収入事情(大学学部・昼間部・比率)
↑ 大学生収入事情(大学学部・昼間部・比率)

これらの値は各年全体としての平均で、実際にはそれぞれの就学状態で大きく変化する。例えばアルバイトをしていない学生は当然バイト料は入らず、実家通いで家賃や食費の一部を浮かせることが出来なければ、お財布事情はさらに厳しくなる(ちなみに2012年における大学学部・昼間部の居住形態別学生数比率は、自宅56.8%・学寮や下宿など43.2%)。

全体の傾向としては、

・全体額の漸減。特に2010年が大きく減っている。2012年はわずかに増加しているが、アルバイトと奨学金の積み上げが原因。

・家庭給付の額はほぼ横ばいを継続していたが、2008年から2010年にかけて大きく減っている。

・アルバイトの額は横ばい、しかし2010年には減る動き(アルバイト従事者の比率減少が一因)。2012年には再び増加している。

・奨学金額は増加(受給者比率増加が主要因)。

などの動きが見える。特に2008年から2010年では大きなマイナス方向の動きがあり、2007年夏に始まる直近の金融危機、経済不況による影響が大きく出ているのが分かる。

「家庭給付」の額の減少は継続中。2004年から2006年にかけては幾分の景気回復を反映し額も上乗せされたが、2008年には失速。そして2010年には大きく下げ、8年前の2002年と比較すると30万円強も削られている。最新値となる2012年は急落こそないものの、減少傾向には変わりが無い。消費者物価指数の動向に大きな変化はないので、純粋に実家のお財布事情が厳しくなり、「仕送り」が減らされたことが分かる。

気になる動きとしてもう一つ留意すべきなのは、「奨学金」比率の増加。奨学金の額面が増額しているわけではなく、受給者率が上昇しているのが原因。2002年では全学生のうち31.2%が奨学金受給者だったが、これが2012年には52.5%にまで増加している。仕送り額の減額やアルバイト事情の厳しさを、奨学金で少しでも穴埋めしようとの動きである。

仕事の現場で学べる点も多く、大学時代においてはある程度のアルバイトは、むしろ奨励すべき話(極めて多忙な一部の学部を除く)。しかし大学生は本業が学業であること、そして学費の多分を実家にまかなってもらっていることを考ると、アルバイトをはじめとする金銭周りで学生自身が苦心する状況は、あまり好ましいとはいえない。

奨学金制度をはじめ、大学生を支える仕組みの再構築と改善が求められよう。

■関連記事:

子供の大学進学、増える負担、親はどうする?

家賃の面から大学生の収入と生活の厳しさをグラフ化してみる

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事