アウシュビッツ博物館のオンラインレッスン 日本語版を開始:ホロコースト学習で貴重な日本語のデジコン
アウシュビッツ博物館が注力するデジタルコンテンツをオンラインで世界中に発信
第2次大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人、政治犯、ロマなどを殺害した、いわゆるホロコースト。そのホロコーストの象徴のような施設が、ポーランドに設立されたアウシュビッツ絶滅収容所。
ポーランドに設置されたアウシュビッツ絶滅収容所では約110万人が殺害された。ホロコーストで殺害された約5人に1人がアウシュビッツで命を落とした。アウシュビッツ絶滅収容所は現在でも博物館としてホロコーストの悲惨さを伝えており、世界中から観光客が訪問している。2019年には過去最高の230万人以上がアウシュビッツ絶滅収容所を訪問していたが、2020年は世界規模でのパンデミックの影響で、アウシュビッツ絶滅収容所博物館も一時閉鎖しており訪問者数は52万人程度だった。2021年もまだ世界的なパンデミックの影響で56万人程度だった。2022年はコロナから回復して118万人の観光客が訪問。2023年の訪問者が167万人だった。2022年よりは増加しているものの、最盛期だったコロナ前の2019年に比べると60万人以上少ない。それでも現在でもアウシュビッツ絶滅収容所は世界的な観光名所の1つである。
アウシュビッツ博物館では新型コロナ感染拡大前からオンラインやバーチャルでの展示に注力していた。仮想現実(VR)技術で紹介したり、オンラインで展示をしてホロコースト教育の教材を提供したり、パノラマで展示をしたりしている。最近ではポッドキャストでの配信にも注力しており、世界中のどこにいてもアウシュビッツ絶滅収容所のオンライン見学ができる。そのため、コロナ禍でアウシュビッツ絶滅収容所に直接訪問できなかった時には、世界中の多くの人が利用していた。
不自然な日本語表現はあるがホロコースト学習に最適な日本語のデジコン
アウシュビッツ博物館ではオンラインでのレッスンも無料で提供しており、ポーランド語や英語などでアウシュビッツ絶滅収容所での悲劇やホロコーストの歴史などを学習することができる。生存者らの証言などもデジタル化されてテキストや動画で公開している。欧米やイスラエルの学校ではホロコースト教育が行われているが、このようなアウシュビッツ博物館が提供しているデジタルコンテンツ(デジコン)を教材として利用していることが多い。
そして2024年10月にアウシュビッツ博物館が提供しているオンラインレッスン「アウシュヴィッツ - 強制絶滅収容所」が日本語でも提供されるようになった。翻訳はおそらく機械翻訳かAI(人工知能)が実施しているのだろうか、少し日本語として不自然な表現もいくつかある。だがアウシュビッツ絶滅収容所での出来事やホロコーストの歴史を学習するには十分なレベルの日本語である。貴重な日本語でのホロコースト学習の教材の1つである。
またアウシュビッツ絶滅収容所に関するデジタルコンテンツとしては、Googleのデジタルアーカイブ「Google Arts & Culture」にも1940年6月14日の大量輸送開始の時の様子の写真がデジタルアーカイブとして掲載されている。2020年6月14日には、アウシュビッツへの大量輸送開始80年を記念して、囚人の手紙をデジタルアーカイブとして公開した。「Google Arts & Culture」では他にもアンネ・フランクのデジタルアーカイブも公開している。他にも様々な歴史や自然科学に関する世界中の知をデジタルアーカイブ「Google Arts & Culture」で公開し、世界中の研究者の研究や学生の学習などに活用されている。
戦後約80年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰えており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。ホロコーストの記憶や経験を後世に伝えようとして、当時の写真や地図、歴史的な記録、手紙などをデジタル化して保管する動きはGoogleだけでなく多くのホロコースト博物館やユダヤ財団、大学などで進められている。またホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化も積極的に進められている。デジタル化された写真、手紙、証言や動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても多く活用されている。
▼日本語版でのホロコースト学習コンテンツの提供開始を伝えるアウシュビッツ博物館の公式X