羽田空港の断水 考えられる原因
断水の原因は「水の塩辛さ」
羽田空港の第2旅客ターミナルビルなどで11月6日から続いていた断水が8日午後に解消した。
断水の原因は「水の塩辛さ」。
水道法では、水道水に含まれる塩化物イオン濃度の水質基準を1リットル当たり200ミリグラム以下に規定。平常時は10ミリグラム程度で、200ミリグラムを超えると、塩辛さを感じる。
調査のために6日午前9時ごろに給水を止めた。水質に問題がなかった第1ターミナルは昼過ぎに復旧したが、塩分が検出された第2ターミナルと洗機場では断水が続いた。
では、塩辛さの原因物質はどこで混入したか。
羽田空港へは東京都水道局が水道水を供給している。
都水道局は6日から3日続けて空港につながる配水管で塩素や濁り具合、においなど水質を調査したが異常はなかった。
空港に入った水は、地中などの水道管を通って各施設の貯水槽などに運ばれる。
共同溝から第1ターミナルビルに行く配水管の水質検査では塩分などの異常は検知されなかった。
第2ターミナルビルの貯水槽では異物混入の形跡などは確認されていない。
共同溝から第1ターミナルビルにつながる水道管の分岐を過ぎてから、貯水槽までの間で塩分が混入した可能性が高い。
塩分が混入した原因が分かっていないため、今後も水質検査や水道管の点検をするという。
水道水中の塩分濃度が上がったケースはいくつかある。
その原因は、主に4つ考えられる。1つ目は原水に海水などが混入すること、2つ目は管の誤接続、3つ目は、給水管に亀裂などが入って海水など混じるケース、4つ目は受水槽などの掃除中に起きるトラブルだ。
原水に海水などが混入する
海水には一定の濃度で塩分が含まれている。
地球が形成されたばかりの頃、海の水は酸性で、その影響で地殻を溶かした。それによってアルカリ金属、アルカリ土類金属が溶け出して、海水は次第に中性になった。このときに塩分が含まれるようになった。
海水に含まれる塩分を構成している成分は「塩化ナトリウム」と「塩化マグネシウム」、「硫酸マグネシウム」、「硫酸カルシウム」、「塩化カリウム」などがあげられる。
海水が水道原水に入ったケースは以下がある。
1994年、鹿児島県川内市では海水が川内川を逆流し、同川から取水する上水道が塩辛くなる問題の処理に追われた。
1996年、東三河地方で水不足が深刻化する中、愛知県豊橋市が豊川の川底から取水している伏流水の塩化物イオン濃度が水質基準を上回った。渇水で豊川の流量が減ったのに加え、大潮で三河湾の海水が遡上したのが原因とみられる。
1996年、広島県三原市水道局の取水口から海水に近い塩水が入り、塩分濃度の高い水道水が市内の一部世帯に供給された。高潮で逆流した海水が取水口下流の沼田川頭首工を越えたため。
2004年、長良川河口堰の上流に海水が逆流し、愛知県知多半島への水道水の取水が停止され、木曽川からの愛知用水に切り替えられた。
2007年、宮崎県宮崎市佐土原町の一ツ瀬川にある浄水場取水口に海水が遡上し、水道水への混入が予想されたため、給水を停止した。
2011年 東日本大震災の津波によって、三陸地方の多くの水道が塩害に悩まされた。
2019年、少雨による久慈川の流量低下に伴い、茨城県日立市の水道水確保に影響が出た。流量が低下したことで、月2回ある大潮の時期を中心に海水が市の取水口まで遡上。塩分濃度が国の基準を上回って取水できない時間帯が発生し、貯水量が不安定になった。
だが、今回の羽田空港のケースでは、都水道局の水質調査で異常はないことから、この可能性はない。
誤接続のケース
給水管と、その他の目的の管(井戸水、工業用水、給油、冷却水等)などが、誤って接続され、水道水中に異物が混入することがある。
2005年、愛媛県今治市は市内の一部の上水道に海水が混入した可能性があると発表した。調査の結果、この地域内にある水産加工工場で海水をくみ上げるパイプが上水道につながり、海水が逆流していることがわかった。
2017年、香川県高松市で「水道水が塩辛い」と約70件の訴えが寄せられた。付近は海に面し、停泊中の船で水道管の誤接続があり海水が流入した。
水道管の亀裂から異物が混入する
水道管は経年劣化する。空港内の給水管が古くなり、小さな穴が開いたり、亀裂ができることがある。何らかの原因で圧力が変わると、その穴から汚水が引き込まれることがある。羽田空港は海に近く、そこから海水が入る可能性はある。
空港内の水道管路の総計は21.5キロにおよぶ。その点検や修繕のノウハウを運営会社が有しているかは疑問が残る。
受水槽などの掃除につかわれた薬品
受水槽などの掃除の際の作業にミスによって、薬品が混入するケースがある。マンションの貯水槽で掃除のミスにより、水道水の味が変わることがある。
いずれにしても空港は重要な社会インフラである。
運営会社は、原因を徹底究明し、情報開示すべきである。