ヒット商品が連発!当たり年だった2019年のコンビニスイーツを振り返る
2019年は、コンビニスイーツから数多くのヒット商品が誕生し、話題に尽きない年であったように思う。2009年にローソンから「プレミアムロールケーキ」が発売され、コンビニスイーツというジャンルが日常に浸透。それから、ちょうど10年。コンビニスイーツの転換期を感じる年でもあった2019年を、ヒット商品とともに振り返る。
2019年最大のヒットスイーツは、売れまくったアノ商品
2019年のコンビニスイーツを代表する最大のヒット商品といえば、ローソンの「バスチー」をおいてほかにはない。2019年3月の発売以来、累計3200万個を販売。Yahoo!検索大賞のスイーツ部門賞をはじめ、DIMEトレンド大賞、日経トレンディヒット商品ベスト30など、今年の流行を示すランキングにも数多く選出され、メディアでも大いに話題になった。
「バスチー」の原型となった「バスクチーズケーキ」は、フランスとスペインの国境にあるバスク地方で食べられているスイーツ。昨年あたりから、スイーツ好きの間でじわじわ人気が出ていた商品だが、「バスチー」の販売によって、一気に知名度がアップ。さらに10月にはセブンイレブンからも「バスクチーズケーキ」が発売されたことで、一般にも広く知られるようになった。
ローソンでは、12月25日には、発売後初となる「バスチー」のリニューアルを決行。表面のべたつきを抑えて食べやすく改良するとともに、卵黄や北海道産生クリームの分量を増やし、よりしっとり濃厚に進化させた。また一方で、8月には、ナッツやクリームをトッピングした「プレミアムバスチー」、クリスマスには、雪に見立てたふわふわのチーズクリームをのせた「スノーバスチー」など、限定のバスチーも販売しており、アレンジ商品の展開も含めて「バスチー」人気は、来年も持続しそうな勢いだ。
コンビニのケーキが“カップ”化
一方、今年のコンビニスイーツで「バスチー」と並び目立っていたのが、カップケーキだ。セブンイレブンが今年3月に、ショートケーキ、モンブラン、ティラミスの3種類を「カップスイーツ」として販売。手軽に持ち運びができ、スプーンで食べられる気軽さを武器に、従来のケーキタイプ商品よりも幅広いシチュエーションで食べてもらうことを狙った商品だ。
ローソンでも、10月に新シリーズの「CUPKE(カプケ)」を発売。ショートケーキ、モンブラン、チョコレートケーキ、ティラミスの4種類からスタートし、12月には、2種類の味わいを表現した「ダブルチョコレート」と「ダブルモンブラン」の2品を発売。かわいいデザインのカップは、「お土産にも使える」と話題になっている。
これら2商品は、いずれも従来から一定のニーズはあるものの、思うように売れていなかった「ケーキ」ジャンルをテコ入れする目的で開発したもの。とはいえ、カップに入ったケーキタイプの商品は、これまでにも数多く売られてきた。今回、ヒットにつながった要因は、一度に数種類の味を発売して、ショーケースの見え方を工夫したことだ。ずらりと並んだカップケーキは売り場でも存在感を発揮し、選ぶ楽しみも消費者に与える。またその後のシリーズ化もしやすく、ファンがつきやすい。
コンビニスイーツはかつて、「洋菓子専門店と同じ品質の商品を、コンビニでも」というコンセプトを掲げて商品開発を行なってきたため、ケーキも棚から外せない商品としてつねに置かれていた。しかし、近年は和洋折衷スイーツのような、コンビニならではの商品が支持されるようになり、「洋菓子店と同じようなアイテムをコンビニに求めない」お客も増えてきた。専門店のようなふわふわの三角ショートを、何日間かかけて売るコンビニスイーツで実現するのは、やはり難しい。カップに入れて保形性を保った「カップスイーツ」は、「コンビニでケーキを売る」という目的に対しての最適解なのでは、と思う。
「バスチー」に続け!ローソンから「新食感スイーツ」が続々
ローソンでは今年、バスチーを皮切りに「新食感」をキーワードにしたスイーツを多数販売。サクサクのクッキーでバタークリームをサンドした「サクバタ」、ザクザクとしたシュー生地が特徴の「ザクシュー」、もちもちの生地でたっぷりのクリームを2層に包んだ「どらもっち」など。いずれも「バスチー」には及ばないものの、SNSで話題になる商品も多く、とくに11月に発売された「ホボクリム」は、薄皮生地にたっぷり詰まったクリームの量が「ありえない」と話題に。クリーム好きの心を捉え、品薄状態になる人気を見せている。
ファミリーマートでは、「スフレプリン」が人気NO.1に定着
コンビニスイーツの売れ筋ランキングは、価格帯的な理由もあり、だいたいはシュークリームかプリンが1~2位、というのが一般的で、一時的なヒット商品に瞬間その座を奪われることはあっても、基本的な順位は10年でもあまり変わっていない。そんな王者に食い込むニューフェイスとして、ファミリーマートの定番人気スイーツとなったのが、「スフレ・プリン」だ。2018年11月に発売されて以来、安定した売れ行きを見せ、2019年は「スフレ・プリン ストロベリー」、「真っ白ミルクのスフレ・プリン」、「スフレ・プリン ティラミスカフェ」とシリーズ化してきて、4品で累計1550万個を突破。11月からは、ファミリーマートの人気アイス「食べる牧場ミルク」とコラボした「食べる牧場スフレ・プリン」が販売。「2大人気商品のコラボ」と話題になっている。
コンビニにもタピオカ旋風!
タピオカ全盛だった今年の夏。コンビニからも、タピオカドリンクはもちろん、アイスやカップスイーツなどまで、タピオカ関連のスイーツが多数販売された。
ファミリーマートでは、「タピオカミルクティーパフェ」などスイーツのほか、人気シリーズのフラッペで「タピオカティーフラッペ」を2年ぶりに販売して話題に。セブン‐イレブンの「タピオカミルクティーゼリー」や「大きなタピオカみたいな大福(ミルクティー)」なども話題を呼んだ。
バスチー、GODIVAコラボに見るコンビニスイーツの“高価格帯化”
ローソンの話ばかりになってしまい恐縮だが、それくらい今年は、ローソンがヒット商品を連発した特異な年だった。2017年6月から展開している「GODIVA」とのコラボスイーツも、3年目を迎えたが未だ堅調だ。2019年12月現在でデザート25品、ホットドリンク2品の計27商品を発売し、シリーズ累計2,300万個以上を販売。12月には、初めてアイスクリーム規格での商品「Uchi Cafe×GODIVA ショコラアイスクリームロールケーキ」も発売され、アイテムの幅が広がっている。
「バスチー」にカップケーキ、そしてその他の商品から見えてくるのは、コンビニスイーツの“高価格帯化”だ。かつてコンビニスイーツの礎を築いた、ローソンのヒット商品「プレミアムロールケーキ」は、当時150円。その後ヒットした「ぎゅっとクリームチーズ」も150円。ファミリーマートの「Wクリームエクレア」も150円。セブン‐イレブンの「もこ」シリーズも140円前後だった。
「バスチー」のヒットは、売れ数以上に「200円台のスイーツが売れた」という事実のほうが、コンビニスイーツ開発者にとっては大きな意味をもつ。商品価格を200円台に設定できることで、使える食材や表現の幅が広がるからだ。
こうした経緯から2020年以降は、200円台以上のコンビニスイーツが増えてくることも予測される。「コンビニスイーツは300円まで」という消費者の感覚は、じつは10年前から変わらない心理だが、高級アイスが売れているのと同様、コンビニスイーツの単価もじわじわと上がってきていることは事実だ。
フードロスに対する取り組みも、重要なテーマに
食品業界に波及するフードロスへの取り組みは、コンビニスイーツも例外ではない。ファミリーマートは今年、クリスマスケーキを完全予約制にしたが、日常的に棚に並ぶコンビニスイーツにおいても、賞味期限をのばす取り組みが行われている。実際に、ローソンの「どらもっち」や「バスチー」などは、発売当時に比べ賞味期限が1日のびているという。
コンビニスイーツは、次の時代へ…
2019年に10周年を迎えた、ローソンの「プレミアムロールケーキ」。ローソンでは3週間限定で、復刻版ロールケーキの販売を行なったり、「ウチカフェ10周年感謝祭」として1日限定の半額セールを実施。だが、いまや消費者にとって、ローソンの看板スイーツはすっかり「バスチー」に塗り替えられたようでもある。
平成を代表する「プレミアムロールケーキ」、そして令和の幕開けとともに爆発的にヒットした「バスチー」。コンビニスイーツは、食を取り巻く様々な問題と共存しながら、次の時代を切り拓いていかなくてはならないようだ。