なぜ森保ジャパンはコスタリカに敗れたのか?攻守の“ちぐはぐ感”と5バック攻略の失敗。
一転して、苦しい状況に追い込まれた。
カタール・ワールドカップのグループE第1節でドイツに勝利した森保ジャパン。だが第2節でコスタリカに0−1と敗れ、シチュエーションが難しくなっている。
森保一監督はドイツ戦から先発メンバーを5名、入れ替えた。山根視来、堂安律、守田英正、相馬勇紀、上田綺世がコスタリカ戦のスタメンに名を連ねた。
ドイツ戦では、後半から3バックにシステムを変更した。だが森保監督はコスタリカ戦で9月の強化合宿から使い始めた【4−2−3−1】を選択して、ボールを保持しながら攻撃するプランで臨んだ。
一方、初戦でスペインに0−7と敗れたコスタリカは、スペイン戦で使用した【4−4−2】をやめ、【5−4−1】を敷いた。従来の戦い方に戻して、今大会初勝利を目指した。
■日本とコスタリカのプラン
日本は守備時に【4−4−2】を形成する。トップ下の鎌田大地が前に出て、CFの上田と共にプレスを掛ける。
しかしながらコスタリカは3枚のCBで行うため、噛み合わせが悪かった。常に数的優位の状態でボールを握り、コスタリカが余裕を持ちながらビルドアップを行う。
また、コスタリカはジョエル・キャンベルが左サイドに降りてきてビルドアップに参加した。ここが、日本としてはマークを捕まえにくかった。左利きで、技術があり、独特のリズムでドリブルするキャンベルに対して「1対1で潰す」「挟み込んで囲む」といった対応策を採れなかった。
コスタリカが「0−0でオーケー」というゲームプランだったのは明らかだった。そして、ワンチャンスをモノにして、勝ち点3を得る。カウンターであろうと、セットプレーであろうと、その一発を強(したた)かに狙っていた。
■5バックの攻略に苦しむ
対して、日本は5バックのコスタリカを相手に、攻めあぐねた。攻撃時、いわゆる「5エリア」を攻略するため、打つべき手を打てなかった。
左ボランチに配置されたのは守田だった。相馬が左サイド、堂安が右サイドに張る。鎌田が右のハーフスペース、守田が左のハーフスペースを取る動きをしていた。
本来なら、堂安が右のハーフスペースを取るべきだ。そして、右のワイドを、右SBの山根が取る。
堂安は左利きのドリブラーだ。右のハーフスペースでボールを受ければ、選択肢を多く持てる。攻撃が得意なサイドバックの山根が上がるのも理に適っていた。山根はインナーラップ、オーバーラップの走り分けもできる選手なのである。
無論、日本の5エリアの取り方が完全に悪かったわけではない。だが5バックを敷くコスタリカに対して、複数のパターンが必要だった。例えば、長友佑都が上がる形もあって良かったのだ。
■攻守におけるバランス
日本は終始、攻守において「ちぐはぐ」な印象を与えていた。
ボールを保持するのか、攻め切るのか。速攻なのか、遅攻なのか。前からボールを奪いに行くのか、後ろに引いて跳ね返すのか。チーム内に一本軸が通っている、という感じがしなかった。個々の選手が、個々の判断で動いている、という風にしか見えなかった。
コスタリカに勝たなければいけない。そういった心理が働いたのかも知れない。しかしながら、正直、コスタリカの攻撃に怖さはなかった。だからこそ日本に縦パスやリスクを冒して仕掛けるといったチャレンジングなプレーが欲しかった。
他方で、コスタリカは0−7の大敗を経て、試合の経過につれ自信を取り戻していくのが手に取るように分かった。北中米予選を7勝4分け3敗で勝ち抜いたように、堅守速攻のスタイルへと原点回帰していった。自分たちのやり方を思い出して、確信を深めていく様は、さながらドイツ戦の日本を見ているようだった。
失点以外は狙い通りの展開だったが、結果が狙い通りではなかった。それが試合後の森保監督の言葉だ。
ドイツに勝利した後で、期待からの落胆は大きい。だが、グループステージ第3節のスペイン戦が残されている。コスタリカがスペイン相手にショッキングな敗戦をしながら立ち直ったように、我々は最後まで戦わなければいけない。
※文中の図は全て筆者作成