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世界の気候変動を止めるためにできることは?「未来のための金曜日」(FridaysForFuture)

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
スウェーデンの16歳、Greta Thunberg(グレタ・トゥーンベリ)さん(写真:ロイター/アフロ)

世界で発生する食品ロスと食料廃棄は、気候変動を引き起こす、大きな要因の一つだ。

FAO(国連食糧農業機関)のレポートによれば、世界の温室効果ガス(GHG)排出量のうち、世界の食品ロスと食料廃棄がもたらすものが、およそ8%も占めている。

FAOのレポートでは、

世界の食料ロス・食料廃棄の排出量を一国にまとめると、中国( 10.7Gt )と米国( 6.3Gt )に次いで、第3位( 4.4Gt )の排出源に位置づけられる。(中略)エネルギー利用の観点から見ると、世界のフードシステムにおけるエネルギー消費の38%が、ロスや廃棄によって無駄になる食料の生産に使われている。

出典:FAO「世界の農林水産」レポート

としている(Gtとは、ギガトンの略)。

国連気候行動サミットでスウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリさんがスピーチ

2019年9月23日、米国・ニューヨークの国連本部で、国連気候行動サミット2019が開催された。

スウェーデンの16歳、Greta Thunberg(グレタ・トゥーンベリ)さんは、二酸化炭素排出量の多い飛行機を使わず、ヨットを使って2週間かけて訪米し、説得力のあるスピーチを行った。

グレタさんが世界で注目を浴びたのは、2018年12月にポーランドで開催された、COP24(通称:コップ24、国連気候変動枠組条約第24回締約国会議)でのスピーチだ。このときのスピーチと、今回のスピーチを比べると、わずか半年ちょっとしか経っていないが、心の底から溢れ出す感情(特に社会に対する怒りや悲しみ)は、今回の方が、より強く伝わってくる。

2018年12月 COP24

2019年9月 国連気候行動サミット

「未来のための金曜日」(FridaysForFuture)

グレタさんは、2018年8月、毎週金曜日に国会前での座り込みを始めた。地球温暖化対策に真摯に取り組むことを求めて。

グレタさんの行動は、世界中の若者を動かした。

「FridaysForFuture(未来のための金曜日)」と称され、公式サイトも完成した。

FridaysForFuture 公式サイト

この世界の動きが、2018年12月のCOP24でのスピーチへとつながった。2019年1月には、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議、於:スイス)にも招かれた。このときも、飛行機ではなく、鉄道を使って移動した。

今回、気候行動サミット2019に合わせて、世界150カ国以上で若者たちがイベントを開催した。

2019年3月にはイタリア・ベネツィアでも若者デモ開催

2019年3月15日の金曜日、イタリア・ベネツィアでは、若者たちが街じゅうをプラカード持参で歩き回るデモを行った。「未来のための金曜日」である。当時、筆者はデモを目の当たりにしていた。

イタリア・ベネツィアの街を、プラカードを持って歩く若者たち(筆者撮影)
イタリア・ベネツィアの街を、プラカードを持って歩く若者たち(筆者撮影)

ベネツィアの街は、場所によっては道路がとても狭い。その狭い道を、観光客が足止めを食うくらい、数百人以上の若者たちが、列を途切らせることなく歩いていた。

ベネツィアでFridaysForFutureデモを行う若者たち(筆者撮影)
ベネツィアでFridaysForFutureデモを行う若者たち(筆者撮影)

スウェーデンは世界のSDGsランキング上位の国

世界のSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)ランキングで最新の1位はデンマークだ。スウェーデンも、毎年、上位に入るほど、環境対策や持続可能性の追求は進んでいる。全体的には日本よりもずっと進んでいるわけだが、そのスウェーデンで暮らすグレタさんからしたら、自国だけでなく、地球全体で進めないと、もう間に合わない、という危機感の強い思いだろう。

2019年7月の取材によれば、セブン-イレブンで販売するバナナに認証マークがついているのはスウェーデンだけだそうだ(スウェーデンにて、筆者撮影)
2019年7月の取材によれば、セブン-イレブンで販売するバナナに認証マークがついているのはスウェーデンだけだそうだ(スウェーデンにて、筆者撮影)

参考情報

映画『バナナの逆襲』

2019年7月、筆者がスウェーデンを取材した際、コーヒーかすやバナナの皮など、食べられない部分(不可食部)をリサイクルした再生可能エネルギーを使って、バスが走っていた。

日本では、食べられない部分だけでなく、食べられる部分(可食部)までリサイクルして「うち(の組織)は、ちゃんとリサイクルしています(から環境対策OK)」と謳うことが多いのではないだろうか。

気候変動を止めるためにできることは?

世界の若者たちの「FridaysForFuture」を受けて、私たちができることの一つは「食べられる食べ物を捨てないこと」

冒頭に述べたように、世界で発生する食品ロスや食料廃棄は、中国・米国に次いで大きな温室効果ガスの排出源となっている。

世界の食料ロス・食料廃棄の排出量を一国にまとめると、中国( 10.7Gt )と米国( 6.3Gt )に次いで、第3位( 4.4Gt )の排出源に位置づけられる。

出典:FAO「世界の農林水産」レポート

小さな改善が、大きな改革につながるはずだ。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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