パナソニック&帝京大学、両成敗? 相馬朋和スクラムコーチが日本選手権後に【ラグビー旬な一問一答】
日本のラグビーシーズンを締めくくる日本選手権の第53回大会が、1月31日、東京の秩父宮ラグビー場であった。国内最高峰トップリーグ3連覇中のパナソニックが、大学選手権7連覇中の帝京大を49―15で下した。試合後、この日に対戦した両チームで指導に携わった相馬朋和スクラムコーチが心境を明かした。
相馬コーチは現役時代、帝京大学、三洋電機(2012年度からパナソニックに名称変更)でスクラム最前列のプロップとしてプレー。2007年のワールドカップフランス大会に出場するなど、日本代表としても活躍した。組み合う際の身のこなしで相手の圧力を軽減させ、2013年度限りでの引退時、チームメイトで現ジャパンのプロップである稲垣啓太に「勝ち逃げです」と言われた。
2014年度からはパナソニックでのコーチングと同時に、自ら申し出る形で母校の指導もおこなってきた。8人一体で真っ直ぐ組む、ベーシックな形と強さを体得させている。
今度の対戦が決まってからは「一体、どちらにつくのか」と聞かれ続け、「僕は両方のコーチです」と笑っていた。
以下、記者2名による一問一答。
――(当方質問)率直に、試合が終わった感想をお願いします。
「幸せでしたよ。関わったチーム同士が日本一を争うんですから、こんなに幸せなことはないです」
――(当方質問)かねて外野からは「どちらへ付くのか」と言われていました。
「両方のコーチをすると決まった時点から、どちらがどうというのは全くないです。火曜と水曜はパナソニック。水曜にスクラム練習がありましたから。そして木曜は帝京大学。その後、熱を出して、寝込みました。昨日の夜中には、熱が下がっていました」
――パナソニックのスーツに、両チームのピンバッジをつけています。
「朝、(両チームの)ネクタイも2本締めようと思ったのですけど、あまりにも変だったので止めました」
――優しい方だと思いました。
「何ででしょうね。どっちも大事なんですよね。当然ですね。両方のコーチなんですから。どちらの選手も愛おしく、尊敬もしています。彼らが認めてくれなければ、私は存在しない。私が凄いのではなく、彼らの度量、というのかな。その度量が能力と言うのなら、彼らは日本一にふさわしい」
――(当方質問)両チームのスクラムをご覧になって。
「パナソニック、強かったですよね。常に先手、先手を取っていた。最初のコンテストから全て勝って、優位に進めていた。私のコーチングしたことを全て、してくれていました。素晴らしかった。(帝京大学は)最初、面食らったんでしょうね。どうしても受け身に立った。途中からチャレンジしていく姿勢に戻っていました」
――(当方質問)帝京大学は坂手淳史キャプテンはひじの脱臼のため、リザーブからの出場でした。
「坂手が出ていたら違った…いや、そんな話はナンセンスかな。怪我した2人(試合中にロックの飯野晃司、金嶺志が負傷退場)を含め、全ての人間が挑んでいたし、楽しんでいた。楽しそうだったですね。ウォーミングアップからして。パナソニックと試合をするのが、こんなに楽しみだったんだ、と。勝たなきゃいけないではなく、挑んでいく。それに飢えていたのかな。それは、わからないですが…。とにかく、楽しそうでした」
――両チームへの発破は。
「パナソニックへは『負けていいはずがない。そんなつもりもないだろうけど』です。そこそこやっても評価されるだろうけど、その程度の仕事をする選手は、その程度の選手だ…と。帝京大学へは…。彼らが常に全力でやることを目標に掲げている。『できること、そのすべてを出しなさい』と。それそれが、それぞれの目的を果たした。いい試合でしたね。ファイナル(24日のトップリーグのプレーオフ。パナソニックが東芝を27-26で倒した)とは違う何かが、観ていた人の心に残ったんじゃないかなと。ラグビーって、いいですね。この2週間、ここでラグビーを観た人は幸せですね」
――(当方質問)挑まれる側のパナソニックが、正当な準備をしていた。
「(プレーオフが)終わった瞬間に堀江(翔太キャプテン)が言いましたもの。『コーチ陣、気を抜くな。俺たちも準備するから』って。そのメッセージで、『(祝勝会などでの)お楽しみはそこそこに』という線が引かれましたから。その時点で、決まりましたけどね。勝敗は」
――(当方質問)来季も同じような形で…。
「まだ、わかりません。(パナソニックの)ロビー(ディーンズ監督)も、何の考えも示していない段階ですから。これから、です」