車、飛行機、船の電気化!ノルウェーの未来の海洋交通、オスロ港の陸電システム化
8日、0度の冬の冷たい空気に覆われた、オスロ中央駅から徒歩15分ほどのところにあるオスロ港では、外国船のための陸電供給システム設置のオープニングセレモニーが行われた。
環境汚染物質を減らすため、船舶の停泊時に、陸上より電力を供給し、船内の発電機エンジンを停止させる取り組みが進む。
ノルウェーといえばEV普及の先進国として有名。今後は、電動化された船と港や飛行機の普及においても、世界の最先端をいくだろうと筆者は感じている。
ノルウェーは交通手段やメディアを猛スピードでデジタル化している。FMラジオ全廃に踏み出したことは、世界中でもニュースになった。ほかにも現金の支払い方法、郵便、新聞購読などに加えて、交通手段も続々と電気化。
地球のために、電気化の未来
交通手段の電動化を急ぐ理由は、ノルウェー政府としてはそれこそが未来のあるべき姿として目標と定め、産業界なども動いているからだ。なによりも、大気汚染の改善につながる。
フィヨルドが美しいノルウェー独特の大気汚染問題
ノルウェー各地では、独特の地形や寒い冬の気候が原因で、大気汚染問題が発生しやすい。
フィヨルド観光客が多い地域となると、夏に多くの観光船が各国から押し寄せ、船から出る大量の排ガスが、美しいフィヨルド地帯の空気を汚染していることが問題となっている。
冬になると、山々に囲まれた盆地となっている街の上に冷たい空気が「蓋」となって覆いかぶさるため、車・船・暖炉などからの排ガスが街で溜まってしまう。結果、オスロやベルゲンなどの特定の都市の市民は、ぜん息などの問題に苦しむことになる。
観光客だけではなく、市民にとっても船は日常的な交通手段だ。様々な取り組みを行うことで、港や船からの排ガスを減少させることは当たり前の目標となる。
オスロ港はゼロエミッションを目指す
オスロ港で陸電可能となる「Stena Line」と「DFDS」の2社の大型船は物資の運搬も行う。物資の運搬手段を陸上から海上にすることができれば、最低50%の排ガスの削減が可能だとされている。港に新しいテクノロジーを導入する、そのひとつが陸電システム化だ。
オスロ港湾局は、2030年までに二酸化炭素量を85%減らし、将来的には排出ゼロのゼロエミッショの港にする目標を、オスロ市議会が昨年決議した。
3隻の大型船がターミナルで陸電
9日、オスロ港のフェリーターミナルに陸電設備が設置された。ノルウェー・デンマーク間を移動する観光船「Stena Line」と「DFDS」が所有する3台の船がここで充電可能となる(停泊時間は2~7時間)。
日本人観光客の中には、オスロ・コペンハーゲン間の移動で、DFDSシーウェイズのフェリーを利用したことがある人もいるだろう。
ノルウェー人にとって愛着が深い「デンマーク行きの船」が「環境に優しい船」になる喜び
ノルウェー人にとって、このデンマーク行きのフェリーは特別な思い出がある。物価がより安く、酒の法律がそれほど厳しくないデンマークへの船旅(船内は免税)、楽しい移動手段だ。デンマーク行きの2社の船を利用する乗客は毎年130万にもなる。
このようなデンマーク行きの船を、彼らは「デンマーク・ボート」と呼ぶ。
自分たちが慣れ親しんでいるデンマーク行きの船が、より環境に優しくなる。船や港が原因の大気汚染問題は、ノルウェーでずっと議論されていた。現場にいた関係者や政治家たちはとても喜んでいた。
ノルウェー・デンマーク間の移動に使われるStena Lineの船はスウェーデン製で、DFDSはデンマーク製。その一方、陸上電力供給システムがあるのは、オスロ港だけで、デンマーク側にはないという。オスロ港の広報のオムランド氏は、「北欧各国の企業や港は、互いに協力できているので問題はない」という。
3隻の大型船が出入りするオスロ港の陸電は、年に1300台の車から発生する二酸化炭素の削減量に匹敵し、フェリー側は1420トンの燃料を節約できる。
オスロは欧州委員会が主催する「欧州グリーン首都賞」を受賞し、2019年は都市での環境改善策を提案するロールモデルとして1年間始動する。
オスロ港は2020年前までに、すべての外国からのフェリーの陸電を目標としている。
オスロでの大型船の陸電設備設置はこれが初ではなく、すでに2011年にノルウェーのColor Line社が実施している。オスロ港での今回の新設備により、今後オスロ発のデンマーク・ドイツ行きの全てのフェリー5隻が、2020年から陸電システム対応となる(結果、オスロでの排ガス量を年間5000トン削減できる)。
また、2019年までには、オスロから近隣の自治体ネソッデン間を往復するフェリー3隻が完全電動化される予定だ。
Text&Photo: Asaki Abumi