「箱根駅伝の最大の美徳とは…」。日本の駅伝文化を見つめる韓国の眼差し
「東京近郊が麻痺」「感動を呼ぶ」
今日から始まる第95回東京箱根間往復大学駅伝競走。“箱根駅伝”は日本の正月の風物詩となったが、韓国でも箱根駅伝は紹介されている。
駅伝は韓国語で「ヨクジョン」というのだが、韓国のポータルサイト最大手の検索窓に「ハコネ ヨクジョン」と打ち込むと、過去記事からウィキペディア韓国版の「箱根駅伝」説明、さらには一般人が撮影・掲載した関連動画などがヒットする。
日本旅行体験者の個人ブロガーのレポートでは「毎年1月2日と3日、東京近郊は午前中に麻痺します」というのものから、「感動を呼ぶスポーツ、日本の正月の風物詩“箱根駅伝”」というタイトルまであって興味深い。
女性のスポーツ参加増加。ランニング人口も
もともと韓国にはマラソン好きが多く、日本同様にマラソンと言うと「人生の縮図」「人間ドラマ」というイメージが強くて中高年に人気だったが、最近はユ・スンオク、レイヤンらフィットネス・タレントの影響を受けてスポーツを始める人々たちが増えている。
特に20~30代の女性たちの間のスポーツ実施率が伸びており、複数の韓国メディアによると、韓国のランニング人口は500〜600万人になり、小規模から大規模なものまで含めると、年間400回以上のランニング大会(ハーフマラソンなども含め)が行なわれているほどだ。
その中には“ヨクジョン“も含まれているが、残念ながら韓国に箱根駅伝ほどにメジャーな“ヨクジョン”大会はない。
韓国には「箱根駅伝」級がない
昨今、韓国マラソン界は世界的なランナーをまったく輩出できずにいるが、韓国の陸上関係者は「箱根駅伝のような大会が韓国にないことも原因のひとつ」と、指摘していたこともあった。
(参考記事:“特別な存在”であるのに、軽くなる一方の韓国マラソンの存在感)
韓国から見ると、「日本は箱根駅伝を通じてレースのスピードをアップグレードさせ、長距離選手層の底辺を広げる効果を得ている」といのだ。
昨年12月に発表された野球世界ランキングでも日韓の格差が広がっているが明らかになり、その原因として“甲子園”を引き合い出す韓国球界関係者がいたが、長距離走でも同じようなことが言えるということなのだろう。
(参考記事:野球世界ランキングが発表、日本と韓国の“格差”がさらに広がる)
実際、韓国の駅伝大会は“箱根駅伝”とは比べものにはならない。
古くはソウルと仁川までを競った『京仁(キョンイン)駅伝』、ソウルから木浦(モクポ)間を走った『京湖(キョンホ)駅伝』なとがあったか、今はない。
もっとも有名だった釜山(プサン)からソウルまで走る『釜山-ソウル間 大駅伝継走大会』も、2016年大会でその幕を下ろしている。全国規模の知名度を誇る駅伝大会は皆無で、各地域の体育会や陸上競技協会などが主催・主管する駅伝大会ぐらいである。
例えば昨年11月に行われた『第27回江原(カンウォン)駅伝大会』は、1区間7キロで3日間・合計372・1キロを走るレースだが、取り上げたのは地方メディアだけだった。
かつてスポーツ新聞『スポーツ朝鮮』は、「日本の駅伝はテレビで生中継されることが多くも、それが陸上競技を人気スポーツにする一助にもなっている」と評価していたが、韓国の“ヨクジョン”はローカル・イベントの域を脱せられずにいる。
それだけに正月の朝から全国ネットで生中継があり、東京から箱根までの沿道に観衆が集まり声援を送る箱根駅伝が、韓国人の目には新鮮に映るのかもしれない。
過去に箱根駅伝の魅力を特集した韓国メディア『ノーカットニュース』の記事の中にも、こんな文面があった。
『風が強く吹いている』は韓国でも
「箱根駅伝のもっとも大きな美徳は、ひとりではなく“みんな”で走るということだ。走者たちはタスキを継ぎながら興奮と一体感を味わい、ひとつの目標に向かって全員が全力を尽くして努力しながら、走りと心で疎通する。(中略)
マラソンは人生であり、人生とは孤独な旅路であるが、ひとりでは生きていけないのもまた人生だ。タスキを繋げながら展開される箱根駅伝は人生と似ている」
韓国では昨年秋から、箱根駅伝を題材にした三浦しをんの小説であり、映画化・アニメ化もされた『風が強く吹いている』が、アニメ専門ケーブルテレビ局で放映されている。
(参考記事:韓国のテレビ関係者に聞いた、韓国で人気の「日本ドラマBEST 5」は?)
もしかしたら今年の箱根駅伝は、韓国のスポーツ・ファンやアニメファンたちも注目しているかもしれない。