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大谷翔平に期待したいフランク・ロビンソンが成し遂げたもう一つの金字塔の達成

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
史上初めて3度目のMVP満票受賞を果たした大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【記録ずくめで3度目のMVP受賞】

 全米野球記者協会(BBWAA)は現地時間11月21日、同協会主管の賞レースの最後を飾るMVP受賞者の発表を行い、ナ・リーグでは大谷翔平選手が前評判通り順当に選出された。

 すでに日本でも大々的に報じられているように、自身3度目のMVPもまさに記録ずくめの受賞となった。

 DH選手として初めての栄冠であり、3度目の満票受賞も史上初の快挙だ(というよりも、複数回の満票受賞は大谷選手しかいない)。

 また2年連続の受賞もミギュエル・カブレラ選手(2012~13)以来となる快挙であり、両リーグでMVPを獲得したのは、故フランク・ロビンソン選手以来史上2人目の金字塔でもある。

 まさに大谷伝説に、新たな1章が加わった感じがある。

【ロビンソン選手が成し遂げたもう一つの金字塔】

 今回58年ぶりに両リーグのMVP受賞を達成したことで、ロビンソン選手の名前が脚光を浴びることになったが、実は個人的にではあるが、以前からロビンソン選手のもう一つの金字塔に注目し、大谷選手が並んでくれることを密かに期待しているのだ。

 そのきっかけとなったのは、今年のオールスター戦だった。

 この試合に「2番・DH」で先発出場していた大谷選手は、第2打席で3ラン本塁打を放ち、ナ・リーグに先制点をもたらした。このままナ・リーグが勝利すれば、間違いなくMVPの有力候補だった。

 そこで試合観戦を続けながらネットでデータをチェックしたところ、とんでもない事実を発見してしまったのだ。

 NBAでは偉大な選手の証しでもあるレギュラーシーズン、オールスター戦、NBAファイナルのすべてでMVPを獲得する選手は決して珍しくないのだが(マイケル・ジョーダン選手、コービ・ブライアント選手、レブロン・ジェームス選手など多数)、MLBでレギュラーシーズン、オールスター戦、ワールドシリーズのすべてでMVPを獲得した選手をなかなか探し出すことができなかった。

 さらに各カテゴリーの歴代MVP受賞者リストを念入りにチェックしたところ、ロビンソン選手がまさにその人だったのだ。

【決して容易ではないMLBでの全カテゴリー制覇】

 ロビンソン選手は、1961年(レッズ)と1966年(オリオールズ)でMVPを獲得したほか、1966年のワールドシリーズでもMVPを獲得し、さらに1971年のオールスター戦でMVPを受賞し、すべてのMVPを総なめにしている。

 出場人数が限られているNBAでは、どうしても中心選手にコート上の影響力、支配力が集まってしまうため、どのカテゴリーにおいてもMVPを獲得しやすい環境にある。

 だがMLBでは、そう簡単なことではない。中でもオールスター戦に限って考えると、出場選手が大量に控えているため、NBAのように最後まで試合に出続けることなど滅多にない。

 今年のオールスター戦でも、大谷選手が交代した後でア・リーグに逆転を許しており、残念ながらMVPを逃している。

 そうした背景を理解した上で、今もロビンソン選手に次ぐ全カテゴリーでのMVP獲得を大谷選手に期待しているのだ。

 果たして大谷選手が本当に達成できるのか、皆目見当がつかない。だが大谷伝説に新たな輝きをもたらすことは間違いないだろう。

 そんな楽しみを抱きながら、来シーズン以降の大谷選手を見守っていけたらと思う。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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