Yahoo!ニュース

米大学野球デビューの佐々木麟太郎とスタンフォード大学を待ち受ける2つの試練

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
スタンフォード大は2月14日にシーズンが開幕する(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBより先にシーズン開幕を迎える大学野球】

 今オフは活発に進行しているMLBのFA市場だが、やはりクリスマス・シーズンを迎えると、どうしてもスローになり始めているように見える。まだ多くの大物FA選手が未契約の状態にあり、クリスマス明けから再び活況を呈することになりそうだ。

 また年明け早々から本格的に始動するのが大学野球だ。NCAA(全売大学体育協会)の規定により現在はチーム練習が禁止されているのだが、年明けから解禁されるとともに、MLBがスプリングトレーニングに突入する2月14日にシーズン開幕を迎えることが決まっている。

 昨年夏に米国留学を宣言し、無事フルスカラシップ(全額免除の奨学金)学生として名門スタンフォード大学に入学した佐々木倫太郎選手も、いよいよ米大学野球デビューを飾ることになる。

【3ヶ月間で公式戦50試合を戦うスタンフォード大学】

 大学公式サイトに掲載されている現時点でのロースターをチェックすると、佐々木選手は「redshirt(NCAA設定の成績に達していない学生を対象に、チーム練習に参加可能だが公式戦に出場できない制度)」扱いになっていないので、現状では佐々木投手は1年目から公式戦に出場できる見込みだ。

 佐々木選手は現在「一塁手」で登録されており、他にも2選手(3年生と4年生)が一塁手で登録されていることから、彼ら3人でレギュラー争いが行われるのではないだろうか。

 ちなみにスタンフォイード大学は、2月14日のカリフォルニア州立フラートン校戦でシーズンに突入し、5月17日のノースカロライナ州立大戦まで計50試合の公式戦を戦う予定だ。

 昨年のスタンフォード大学は20勝32敗と大きく負け越してしまい、公式先週終了後に開催された所属カンファレンスのトーナメントで早々に敗退してしまい、大学野球のポストシーズンともいえるNCAAトーナメントに4年連続出場を逃している。それだけに2025年は、雪辱を期すためのシーズンといっていいい。

【カンファレンス変更で公式戦から過酷な戦いに】

 だが2025年シーズンのスタンフォード大学はこれまでと違った体制に身を置くことになったため、2つの試練が待ち構えている。それは佐々木選手にとっても、難しい船出を意味している。

 すでに日本でも報じられていると思うが、スタンフォード大学は今年9月から、昨季まで所属していた「パシフィック12・カンファレンス(通称:Pac-12)」というカンファレンスから「アトランティック・コースト・カンファレンス(通称:ACC)」に所属を変更している。

 これに伴い公式戦すらも、かなり厳しい戦いを強いられることが必至な状況なのだ。

【5度の大陸横断移動と対戦相手は強豪校ばかり】

 これまで所属していたPac-12は太平洋岸地域の大学によって構成されていたため、他の大学もカリフォルニア州、ワシントン州、オレゴン州など近隣州に集まっていた。

 そのため昨シーズンの公式戦を見ても、遠征試合は最長でもテキサス州くらいで済んでいた。ところがACCはスタンフォード大学とカリフォルニア大学(同じくPac-12から移籍)の2校以外、すべて大西洋岸地域を拠点とする大学が所属しているのだ。

 そのため今シーズンの公式戦では5度の遠征が組まれているのだが、ノースカロライナ州を手始めに、バージニア州、サウスカロライナ州、マサチューセッツ州、ノースカロライナ州とすべて大陸横断移動を強いられることになる。

 しかもACCは、大学野球における強豪校が多数集めっている。ちなみにNCAAが発表した昨シーズンの最終ランキングを見ると、トップ10入った10校のうち実に5校(フロリダ州立大学、ノースカロライナ大学、ノースカロライナ州立大学、バージニア大学、クレムゾン大学)がACC所属校だ。

 一応スタンフォード大学が戦う50試合中20試合はカンファレンス外大学との対戦が組まれているものの、カンファレンス内で対戦する10校のうち4校が前述したトップ10校なのだ(ACCには全17校が所属しているが、更新戦は全校総当たりになっていない)。スタンフォード大学にとって、まさに試練ともいえるシーズンといっていいだろう。

 ただ裏を返せば、佐々木選手はシーズン1年目から、米国での相当にレベルの高い大学野球を経験できるということでもある。少し気が早いかもしれないが、今から佐々木選手がどんなスタートを切ってくれるのか楽しみでならない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事