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黄砂・PM2.5飛来の週間予測の可能性

竹村俊彦九州大学応用力学研究所 主幹教授
(写真:ロイター/アフロ)

5月6日に今年初めて日本へ黄砂が本格的に飛来し、2日経過した8日も黄砂が漂い続けています。この黄砂が中国華北地方(北京など)を4日に通過した際には、微粒子濃度は1立方メートルあたり2000マイクログラム前後と非常に高濃度でしたが、6日以降の日本での微粒子濃度は1立方メートルあたり100マイクログラム前後で推移していて、かなり薄まった状態で日本へ飛来していることがわかります。今回の黄砂については、日本への飛来の2〜3日前から予測情報が報道機関などから提供されていたため、飛来することを広く周知することができました。そして、予測どおりに黄砂が飛来しました。

ところで、現在の普通の天気予報では、1週間先までの情報が「週間天気予報」として提供されることが一般的です。それでは、同じように、黄砂やPM2.5の濃度を1週間先まで予測することは可能なのでしょうか?もし可能であれば、次の休日の予定を立てたりするときなど、便利だと思いませんか?

数日後の黄砂やPM2.5の飛来予測は可能!

タイトルで先に答えを書いてしまいまいましたが、1週間ほど先でも黄砂やPM2.5の飛来を予測することが可能であることが多いです。

日本では、気象庁が公式な黄砂予測を行っており、ほとんどの報道機関がその情報を利用しています。ただし、この情報は3日先までの予測しか公開されていません。したがって、上述したとおり、今回の黄砂についても、報道機関からの予測情報の提供は早くて2〜3日前からでした。一方、私がほぼボランティアで運用しているPM2.5・黄砂予測では、以下に示すとおり、4月30日の時点で、黄砂が5月6日に日本の広い範囲へ飛来することが予測できていました。

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私が運用している予測を振り返ってみると、今回の黄砂は、4月30日前後にタクラマカン砂漠で起きた砂嵐が、5月2日にゴビ砂漠で増長して、5月4日に中国華北地方(北京など)へ非常に高い濃度で到達し、その後は急速に濃度を下げながら、5月6日に日本の広い範囲に到達したと推測できます。これらは、実際に観測された濃度レベルや飛来のタイミングと一致しています。

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黄砂やPM2.5の飛来は、ほぼ気象条件で決まるため、週間天気予報の精度が高い場合は、黄砂やPM2.5の飛来も数日先まで精度よく予測することが可能であるはずです。あとは、黄砂やPM2.5の濃度を予測するソフトウェアがきちんと作られていれば、それらを数日先まで精度良く予測することができます(この部分はソフトウェア制作者の実力が試されるところです)。

ただし、黄砂の予測は、以前の私の記事「黄砂の予測は難しい?」で解説したとおり、砂嵐の場所や規模そのものを予測しなければならないため、大気汚染物質の飛来予測よりも明らかに難しいです。大気汚染物質の場合は、発生源や量はほぼ決まっているので、予測精度は黄砂よりも高くなるのが普通です。

今回のPM2.5濃度上昇は黄砂が主な原因

また、今回の黄砂飛来では、PM2.5の濃度も上昇しています。黄砂と同時に、人間活動由来の大気汚染物質も飛来することが多いのですが、今回に関しては、人間活動由来のPM2.5濃度は顕著に高いわけではなさそうです。

PM2.5とは、直径がおおよそ2.5ミクロンより小さい微粒子の総称で、どのような化学組成であるかは問いません。人間活動由来のPM2.5は、実は1ミクロンより小さい微粒子が大半なのですが、専門的な測器での測定データを見ると、今回の黄砂飛来中は、1ミクロンより小さい微粒子はそれほど増加していません。一方、1ミクロン以上の粒子が顕著に増加しています。したがって、今回は、1〜2.5ミクロン程度の大きさの黄砂の砂粒が、PM2.5濃度を高くしている主な原因であると考えられます。

PM2.5イコール大気汚染物質と認識している方が多いようですが、小さめの砂粒もPM2.5に含まれます。PM2.5は大きさで分類しているだけです。

九州大学応用力学研究所 主幹教授

1974年生まれ。2001年に東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。九州大学応用力学研究所助手・准教授を経て、2014年から同研究所教授。専門は大気中の微粒子(エアロゾル)により引き起こされる気候変動・大気汚染を計算する気候モデルの開発。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書主執筆者。自ら開発したシステムSPRINTARSによりPM2.5・黄砂予測を運用。世界で影響力のある科学者を選出するHighly Cited Researcher(高被引用論文著者)に7年連続選出。2018年度日本学士院学術奨励賞など受賞多数。気象予報士。

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