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「晩婚さん」から後輩たちへ。早婚したいなら夫婦のどちらかがキャリアを捨てよ

大宮冬洋フリーライター

東洋経済オンラインの連載「晩婚さん、いらっしゃい!」で、35歳以上で結婚した人たちを訪ね歩いている。なぜその年齢まで結婚しなかったのか(離婚経験者の場合は失敗の理由)という不躾な質問からインタビューが始まるが、僕自身も「晩婚さん」なので険悪な雰囲気にはならない。むしろ、最後には「精神面もキャリアもある程度落ち着いてからの結婚生活はうまくいきやすいよね。20代での結婚は僕たちには無理だった」という深い共感に行き着くことが多い。

しかし、当然ながら晩婚には問題もある。出産・子育ておよび両親の世話だ。35歳を過ぎると男女ともに子どもができにくくなるし、子育ての体力にも不安が残る。「自分の子どもはこんなにかわいいとは知らなかった。もっと早くに結婚すればよかった。2人目はもう望めない」と嘆く夫婦もいる。

親も晩婚である場合は、新婚生活を満喫する間もなく老親の介護に突入するケースもある。ある男性は、父親が40歳のときに生まれて、自らも40歳で結婚して子どもをもうけた。父親は現在80代。子守りはしてくれるが頼りにはならないだろう。早婚であれば家事・育児などに全面協力してくれる心強い存在が、晩婚だと子どもと同様に保護しなければならなくなるのだ。家業を継いでいるその男性は、「自分が継いだときには親父は働き盛りを過ぎていた。息子が成人したとき、自分もすでに引退している年齢。仕事をちゃんと教えてあげられるのだろうか」と不安を口にしていた。

自分たち夫婦のことだけではなく、子どもや両親という「縦の糸」を重視するならば、晩婚よりも早婚のほうが正しい選択だと思う。悔しいけれど認めざるを得ない。

ただし、現実は厳しい。高学歴化が進む現代社会では、20代前半は大学および大学院で学生生活を送る人が少なくない。就職をしたら最低でも5年、できれば10年間ぐらいは仕事に没頭しなければ、その分野でプロフェッショナルにはなれないだろう。飛びぬけてエネルギッシュかつ優秀である、もしくは配偶者や両親などのフルサポートを得られる、のどちらかでない限り、「さっさと結婚して子どもを作ろう」という気持ちにはなりにくい。

夫婦の家事分担と協力によって乗り切れる、と言われるかもしれないが、例えば25歳の若手社員が子育てを理由に残業・出張・転勤を拒否できるだろうか。できたとしても、その人は「若いうちは質より量で働いてとにかく経験を積む」時期を過ごせなくなくなる。キャリア形成にとっては大きな打撃だ。

それを避けたいのであれば、やはり配偶者や両親、ベビーシッターなどの全面サポートを求めざるを得ない。一般的には、夫婦のどちらかが「私はキャリアよりも家庭を優先する」という姿勢でなければ早婚は難しいと思う。子どもがいない場合でも、夫婦ともに仕事を優先するあまりに新婚なのにともに過ごす時間がなくなり、離婚に至ったケースもある。

若くて対等な共働き夫婦のイメージは美しい。でも、現実的ではないと思う。「仕事でも成功したいけれどいつかは家庭もほしい」と身の程知らずの願望をぼんやりと持ち続けている男女が、最終的には僕のような「晩婚さん」になっていくのだ。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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