「0―0」が48分 早稲田大学新指揮官が語る「よかった点」と「伸びしろ」【ラグビー旬な一問一答】
早稲田大学ラグビー部の大田尾竜彦新監督が、シーズン最初の山場と言えるゲームを制して現在地を語った。
10月9日、東京・江戸川陸上競技場で、関東大学対抗戦Aの3戦目をおこなう。防御と接点での圧力に定評のある筑波大学を21―14で勝った。開幕3連勝を飾る。
序盤は相手の鋭いタックルに手こずり、しばらくスコアを0―0で推移させる。
膠着状態を破ったのは、前半ロスタイム48分。相手が外したドロップゴールを拾うや、集中力を発揮して一気に敵陣へ進む。まもなく、終始、優勢だったスクラムを敵陣ゴール前右で獲得。インサイドセンターの長田智希主将がパスを受け、先制した。
7―0で迎えた後半5分には、キック捕球後の攻撃からウイングの槇瑛人がラインブレイク。まもなくスクラムハーフの宮尾昌典が前方右のスペースへキックを放ち、向こうが蹴り返した球を右から左へ展開。エース格でフルバックの河瀬諒介が大きくゲインして、最後は長田が止めを刺した。14―0。
続く14分にも河瀬がフィニッシュし、21―0と勝利に近づく。以後は敵陣ゴール前でのチャンスを逃すなど課題を覗かせたが、指揮官は7点差での勝利に「きょうは、選手がよく頑張った」と総括した。
ヤマハではプレイングコーチを務めたことのあるクレバーな指揮官は、通算17度目の大学日本一へ現状をどう見るか。オンラインで応じた。
以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
「得点がなかなか伸びないなか、難しい試合だったと思うのですが、スクラムが安定できたのが大きかった。プレッシャーのかかる試合を、どんな形であれ勝って乗り越える。それが前進に繋がる。きょうは、選手がよく頑張ったなと思います」
——スクラムについて。
「きょうはコラプシング(塊を故意に崩す反則)が1回もなかったと思います。落ちない状態でコンテストし、真っ直ぐ押すことを目指しているなか、それが筑波大学さん相手にできたことは十分に評価できる。しかも、それを支えているのが1年生の入っているスクラムということもあります(最前列で重圧のかかる右プロップはルーキーの亀山昇太郎)。伸びしろもあると思います」
——昨季からレギュラーで今季初出場の伊藤大祐(示に右)選手の今後の起用法、第2節から欠場している相良昌彦選手、今節出ていない松下怜央選手の欠場について。
「相良、松下はあまりコンディションが整っていないので今週、見送っております。伊藤は今日、フルバックで試合に臨みました。その時、(フルバックで先発した)河瀬に11番(右ウイング)に入ってもらった。伊藤に関してはチーム練習をしている時間が長くないので、まずはランニングの自由度が高いフルバックに置いてチームになじむ意味でゲームに出しております。彼が入ることで攻撃が活性化できれば。非常に色々なところがやれる選手なので、一番フィットするポジションを探します。彼が入ってゲームがどう変わるかも見ていかないといけないなと思っています」
——この試合のテーマと達成度合いは。
「きょうのゲームのテーマはHARD。個人が激しく行くのもそうですが、組織として堅いプレーをしていこうという意味で立てました。点差こそ詰まったのですが、組織としてよかった点は多くあります。そのテーマに対しては悪くない集中を見せてくれました」
——大学選手権優勝に向け、現在地は。
「きょうで言いますと、苦しいなかで長田が獲ってくれて、さらに河瀬がブレイクして長田が獲って、(さらにその後)3本差がついた状況があったと思います。あそこから4、5本と取れるチャンスがあったなかで獲りきれなかったところは、まだまだチームとして成熟しないといけないところだと思います。きょう、前半、非常に筑波大学さんのボールを持つ時間が長いなか我慢できたところは評価できる。いまの時点でいうと、練習してきたことは積み上がっている印象があります」
早稲田大学のスクラムは元ヤマハの仲谷聖史さんが指導。低い姿勢でまとまる、日本代表とも似た形を目指しているように映る。
他にも、レスリングトレーニングに裏打ちされた接点への援護、複数のパスコースを擁しながら大外に数的優位を作ろうとする攻撃システムなど、個人技に頼らぬチームとしての長所が際立つ。
亀山、丸尾、ナンバーエイトの佐藤健次とルーキーを起用しながら、伊藤ら前年度までのレギュラーの戦列復帰を待つ。陣容が整った際、いかなる組織と化すか。