シリアとイラクで米軍基地を攻撃し、ハマースをめぐる紛争に米国を引きずり込もうとする「イランの民兵」
シリアとイラクに駐留を続ける米軍に対する攻撃が止まない。
きっかけは、言うまでもなくパレスチナのハマースが10月7日に開始した「アクサーの大洪水」作戦に対するイスラエル軍の反撃だ。イスラエル軍は10月26日からガザ地区に対して地上部隊による攻撃も開始、また爆撃を強化している。
イスラエルによる一連の攻撃への報復に対して、シリアとイラクで活動するいわゆる「イランの民兵」、とりわけイラク・イスラーム抵抗は、両国内に駐留する米軍の基地などに対して無人航空機(ドローン)やロケット弾による攻撃を繰り返している。
米軍は10月27日に、ダイル・ザウル県ユーフラテス川西岸にある「イランの民兵」の拠点を爆撃し、攻撃継続を躊躇させようとした。だが同日、ハサカ県のハッラーブ・ジール村近郊に米軍が設置している基地(アブー・ハジャル空港基地)、ダイル・ザウル県でも、ユーフラテス川東岸のウマル油田にある米軍の「グリーン・ヴィレッジ」基地、そしてイラクのアイン・アサド米軍基地が攻撃を受けた。このうち、アイン・アサド米軍基地の攻撃については、イラク・イスラーム抵抗が関与を認める声明を出した。
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10月28日もイラク・イスラーム抵抗は、シリアとイラク領内の米軍基地への攻撃を続けた。
英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、同日未明、米主導の有志連合が駐留するタンフ国境通行所に設置されている基地がドローン2機の爆撃を受けた。これに関して、イラク・イスラーム抵抗は声明を出し、標的2ヶ所に直接の損害を与えたと発表した。
イラク・イスラーム抵抗はまた、アイン・アサド米軍基地に対してドローン1機で攻撃を加え、確実な損害を与えたと発表した。
この攻撃と前後して、ジョー・バイデン米大統領は上下両院議長に書簡を送り、10月27日の米軍によるシリア爆撃の正当性を以下の通り、説明していた。
だが、「イランの民兵」は米軍への攻撃を躊躇しておらず、バイデン大統領が言うところの「抑止力の確立」は実現しているようには見えない。
イランのホセイン・エミール・アブドゥッラフヤーン外務大臣は10月28日、ブルームバーグのインタビューに応じ、次のように述べた。
ガザ地区に対するイスラエル軍の攻撃に対抗して、シリアとイラクで「イランの民兵」が執拗に繰り返す米軍への攻撃は「ガザの(ための)報復」などと言われる。「イランの民兵」、あるいはレバノンでイスラエル軍と散発的な交戦を続けるヒズブッラー主体のレバノン・イスラーム抵抗、パレスチナ諸派、「イランの民兵」、シリア、そしてイランからなる抵抗枢軸は、ハマースをめぐる武力紛争に引きずり込まれることへの米国の戸惑いを刺激することで激しさを増すイスラエルの攻撃を最小限に食い止めようとしている。