日本一ダサい都会・名古屋を離れ、「愛知の鎌倉」に移住する
●今朝の100円ニュース:吉永小百合「鯨祭りだ!」(中日スポーツ)
日本有数の大都市から快速電車で40分。低い山と静かな内海に囲まれ、温泉宿も随所にある小さな町。気候も穏やかで晴れの日がやたらに多い。橋を歩いて渡れる小さな島もある。
鎌倉のことではない。僕が住む愛知県蒲郡市だ。東京からだと新幹線「ひかり」で2時間ほどかかる(豊橋駅で在来線に乗り換え)けれど、名古屋市やトヨタ関連企業が集積する刈谷市ならば通勤の範囲内だ。かつて繊維産業が栄えていた名残なのか、リーズナブルでおいしい飲食店が点在している。
しかし、鎌倉のようなにぎわいはない。商店街はさびれてしまい、せっかく改装した駅前の人影はまばらだ。昭和60年の85000人超をピークに人口は減少傾向で、高齢化率も高まっている。若い世代が名古屋圏などの他地域に流出してしまっているのだと思う。
衰退の理由を八つ当たり気味に考えて思いつくのは、200万人超もいる名古屋市民のダサさである。愛知県ではなく、「日本三大都市圏」の名古屋に住んでいることを誇りにしていて、就職をしても他地域どころか実家からも出ようとしない。会社や店を出す場所も名古屋市内で、密かに憧れているのは東京と大阪・京都という「名古屋よりも都会」だ。だけどやっぱり住み慣れた名古屋からは出たくない。トヨタ系の雇用はあるので就職も結婚も困らないし……。「井の中の蛙」な人々が住み続けているところが日本一ダサい都会形成の遠因になっていると感じる。
一方の鎌倉。流入している人は、過密が進んだ東京暮らしに疲れた若い世代が多いようだ。昨年、雑誌『BRUTUS』でも特集されていたが、移住組の起業家や文化人などが核となり、新たなゆるいコミュニティも出来つつあるらしい。浜辺での映画祭なども取り上げられていた。ますます町の価値が高まり、より多くの若年人口を惹きつけているのだろう。
東京は全国の田舎者が集まってくる街だ(僕の家も祖父の代に新潟からやってきた)。だからこそ、世代を経ると「都会に住むのは疲れるなあ。仕事や遊びで行くぐらいがちょうどよい」と感じる人が増えていくのだと思う。
立地条件としては鎌倉に劣らない蒲郡が衰退をし続けている理由。それは名古屋市民というか愛知県民が「ヒト・モノ・カネが集まる都会暮らしは超カッコいい」という昭和な価値観に留まっているからだ。
通信手段と交通手段が発達した今日では、とんでもない田舎で驚くほどオシャレかつ豊かに暮らしている人も少なくない。むしろ中途半端な都会暮らしに安住している人のほうが情報感度が鈍い場合もある。
とボヤいたところで蒲郡の人口は増えたりしない。一番効きそうなのは、良質なテレビドラマや映画のロケ地に選ばれることだろう。鎌倉ですら、小泉今日子主演のドラマで人気が再燃した経緯がある。今朝の中日スポーツでは、吉永小百合プロデュースの映画『ふしぎな岬の物語』のロケ地として千葉県の南房総市の漁港が紹介されていた。幸いなことに蒲郡市もロケの受け入れ体制と実績がある。個人的には、『ゆれる』や『夢売るふたり』の西川美和監督に次回作のロケ地として選んでほしい。
名古屋で働きながらも住むのには飽き飽きしたという人もいると思う。ぜひ蒲郡に来てほしい。デパートはないけれど広い空がある。家賃などの物価も安い。探せば面白い人や店とも出会える。「都会度」ではなく「住みやすさ」で住処を選ぶ時代になっている気がする。
※お詫びと訂正:昭和60年の蒲郡市の人口を8500人と書いてしまいましたが、85000人の誤りでした。お詫びして訂正します。