懐かしのMARTINIカラーが、絶好調のウィリアムズF1で復活!
噂は本当だった。往年のレースファンには懐かしの「MARTINI(マルティーニ)」カラーが、ウィリアムズF1チームと共に戻ってきた。3月6日にイタリアで開催された「マルティーニ・エ・ロッシ」の創立150周年を祝うパーティーで、かねてから噂にあがっていたウィリアムズF1チームとの複数年契約のパートナーシップが発表され、「ウィリアムズ・マルティーニ・レーシング」として「F1世界選手権」を装い新たなカラーリングで戦うことになった。既にグッズ用のロゴやプロモーション撮影用にカラーリングされたマシン=FW36の写真が何者かによってリークされていたが、こうして正式に発表された「MARTINI」とF1の名門チーム「ウィリアムズ」の提携は往年のレースファンにはきっと嬉しいものだろう。
そもそもマルティーニって何??
1970年代〜80年のモータースポーツを良く知るレースファンにはお馴染みの「MARTINI」のカラーリング。最近のモータースポーツファンも白地に水色と赤色のラインが入ったカラースキームのマシンを昔のレース写真で見た事があるかもしれない。そう、「MARTINI」のロゴはモータースポーツの歴史の中で多くの人々に親しまれ、レースで栄光を勝ち取ってきた象徴的なロゴなのだ。
ただ、MARTINIカラーは知っていても、この会社はいったい何の会社なんだろう?と思っていた人も多いはず。「MARTINI(マルティーニ)」はイタリアの酒造メーカーであるマルティーニ・エ・ロッシのロゴ。イタリアのフレーバーワイン(ベルモット)が世界的に有名なトップブランドであり、スパークリングワイン(スプマンテ)も人気の商品になっている。日本ではあまり見慣れないブランド名だが、酒量販店などで輸入された商品が割と手頃な値段でたまに売られているので、店舗やネットなどで探して飲んでみるのも良いかもしれない。
マルティーニとレースの関わり
マルティーニとモータースポーツの関わりは非常に古い。今から46年前の1968年にマルティーニ・エ・ロッシ社のドイツ支部が「ポルシェ907」を走らせていたプライベートチームをニュルブルクリンク1000kmレースで支援したのが始まり。最初はマルティー二・ドイツ支社とビジネス関係にあった人物が友人のドライバーを少し財政支援しただけのものだったが、「ポルシェ907」の好調ぶりを見るにつけ、同社はきっちりと資金を提供するスポンサーとしてモータースポーツ界で活動するようになる。
そして、1971年に「MARTINI RACING」としての活動が正式に始まり、シルバーに赤と青のラインが入った「ポルシェ917」がセブリングやルマンなどを走った。スポーツカーレースに留まらず、「F1世界選手権」でも「テクノ」のスポンサーを務めた。その後、F1では当時のトップチーム「ブラバム」「ロータス」がMARTINIのスポンサードを受けて走るなど、MARTINIカラーは1970年代のモータースポーツシーンでは欠かすことができない「代名詞」となっていった。
成績低迷により「ロータス」チームと決別した後は、ラリー選手権へのスポンサードを開始。イタリアの自動車メーカー「ランチア」のラリー活動で、1980年代のラリーシーンを席巻した。また「ランチア」とはルマン24時間レースなどプロトタイプカーレースでもスポンサーを務め、初期のグループC規定車両「ランチアLC2」でかつてパートナーだったポルシェと耐久レースの世界で格闘を演じたことも有名。
90年代〜2000年代は「MARTINI RACING」の活動はラリーが中心だったが、当時世界的に人気の高かったDTM(ドイツツーリングカー選手権)やそこから派生したITC(国際ツーリングカー選手権)ではイタリアの「アルファロメオ」のメインスポンサーに。イタリア人ドライバーのニコラ・ラリー二とアレッサンドロ・ナニーニのドライブで幾度も勝利を重ねた。そう言う意味では、ランチアやアルファなどのイタリア車のファンにもMARTINIカラーはお馴染みだろう。それ以来、サーキットのレースでは「懐かしい」カラーリングになってしまっていたが、実は2006年にF1で「フェラーリ」のスポンサーを務め、ノーズにロゴが描かれていた。
ウィリアムズとMARTINI RACING復活
そして、このたび「MARTINI」がスポンサーを務めるのは英国のF1チーム「ウィリアムズ」だ。現在のF1チームではフェラーリ、マクラーレンに継ぐ古豪で、7回のドライバーズタイトル、9回のコンストラクターズタイトルを獲得した名門。しかし、ワールドチャンピオンからはジャック・ヴィルヌーブの97年以来遠ざかっており、特にここ数年は低迷が続いていた。いくら栄光の時代を築いたビッグネームの「ウィリアムズ」とはいえ、2013年は11チーム中、9位というチーム創設以来の大不振に陥っていたチームへのスポンサードは驚きだ。
マルティーニ・エ・ロッシは世界的なラム酒のメーカー、バカルディ社の傘下にあり、同社の最高マーケティング責任者であるアンディ・ギブソンは「ウィリアムズとパートナーシップの決定は私たちにとって自然なものです。F1レースに熱狂する消費者とマルティーニ・ブランドを結びつける他には無いチャンスを提供してくれるからです」とプレスリリースでコメントしている。
上記写真:MARTINI RACING
スポンサードを受ける「ウィリアムズ」は今年からエンジンをルノーからメルセデスのパワーユニットに変更し、ウインターテストで絶好調。フェラーリから移籍したフェリペ・マッサがテストで2度トップタイムを獲得、バルテリ・ボッタスも好タイムを連発し、ウィリアムズとメルセデスのパッケージは開幕戦からチャンピオン争いを展開してきそうな状況にある。また、リザーブドライバーとしてブラジルの新鋭、フェリペ・ナザーを起用し、彼のスポンサーであった「Banco do Brasil(ブラジル銀行)」がスポンサーに付くなど財政面でも良好な状況に。そこに「MARTINI」がメインスポンサーになることで、「ウィリアムズ」チームはまさに奈落の底から一気に這い上がってきた印象だ。
それにしてもこの「MARTINI」は先見の明がある。 ルマンでは「ポルシェ」「ランチア」、ツーリングカーでは「アルファロメオ」、ラリーでは「ランチア」、そしてF1ではバーニー・エクレストンが代表を務めた「ブラバム」で輝かしい栄光を即座に掴んできた歴史がある。上昇気流を感じるチームをサポートし、駄目なら名門であろうともサッと手を引く潔いマーケティングの歴史を見ると、今回の「ウィリアムズ」とのパートナーシップ締結は「MARTINI」らしさを感じてしまう。そう、「MARTINI RACING」は歴史上も上位争いを常に繰り返してきたモータースポーツのアイコンなのである。
白地に水色と赤色のマルティーニストライプのカラーは往年のファンにも、昔を知らない若いファンにも受け入れられると思うし、グッズも飛ぶように売れるだろう。今年は「ウィリアムズ」の好調さも手伝って、日本グランプリが開催される鈴鹿でも多くのファンがマルティーニストライプのウェアに身を包んで来場しそうな予感。まさに今年、2014年のF1の一大トレンドになりそうな「WILLIAMS MARTINI RACING」から目が離せない!
写真:Williams F1 / WILLIAMS MARTINI RACING