韓国の鬱陵島で空襲警報、北朝鮮ミサイル発射
11月2日午前8時50時ごろ、北朝鮮が日本海に向けてミサイルらしきものを発射しました。発射された方向に韓国の鬱陵島(ウルルン島)があったため、空襲警報が鳴り響き住民が退避する事態となっています。ミサイルは島の手前の公海上に落下して被害は出ていません。
韓国軍の発表によると短距離弾道ミサイル合計3発を含む飛翔体、大砲の砲弾、多連装ロケット、地対空ミサイルなどが多数発射され、うち短距離弾道ミサイル1発がNLL(北方限界線)より南に史上初めて着弾し(弾道ミサイルとして初めてのNLL超え着弾)、鬱陵島で空襲警報が鳴らされました。
NLLの南26km・束草の東57km・鬱陵島の北西167km
韓国軍の発表では、鬱陵島に空襲警報が出る原因となった1発のミサイルの着弾地点は「NLLの南26km・束草の東57km・鬱陵島の北西167km」の公海上でした。射線上の先に鬱陵島があります。発射地点は北朝鮮の元山の周辺とされています。仮に元山空港(葛麻飛行場)から発射したと仮定すると、飛翔距離は約180kmです。
ミサイルではなくロケット弾の高角度発射?
なお韓国軍からは3発の短距離弾道ミサイルの飛行データがまだ発表されておらず、自衛隊からは2発の短距離弾道ミサイルを観測した飛行データが発表されており、数値は以下の通りです。
自衛隊が観測した数値(防衛省発表、2022年11月2日)
- 最大高度150km・水平距離150km ※東方向
- 最大高度100km・水平距離200km ※南東方向
南東方向のものが鬱陵島に空襲警報を鳴らさせたミサイルと同一であると思われます。奇妙な点としては、二つの発射ともロフテッド軌道(山なりの高い弾道)で発射されている点です。通常軌道で飛ばした場合の推定最大飛距離は250~300kmになります。
これは北朝鮮が過去に発射したミサイルで該当するケースが見当たらず、推定最大飛距離だけで見ると300mmロケット弾が近い数字ですが、過去に300mmロケット弾をロフテッド軌道で発射したケースはありません。はたして細長い形状のロケット弾はロフテッド軌道で上手く飛べるのでしょうか? 通常はロケット弾を近くに撃つならディプレスト軌道(浅い低い弾道)で発射するのが普通です。
今日の発射は本当に短距離弾道ミサイルだったのでしょうか? それとも大型のロケット弾だったのでしょうか? どうもしっくりくる推定ができず、不明のままです。しかし韓国軍も自衛隊も初報から弾道ミサイルと呼称して発表しています。短距離弾道ミサイルと即座に断定できる材料があったのでしょうか。
追記:11月2日、北朝鮮は各種ミサイル23発以上発射と判明
- 午前6時51分、黄海に短距離弾道ミサイル4発
- 午前8時51分、日本海に短距離弾道ミサイル3発 ※うち1発がNLL超え
- 午前9時12分、黄海と日本海に短距離弾道ミサイルおよび地対空ミサイルなど各種ミサイル10発以上
- 午後4時30分から5時10分、黄海と日本海に地対空ミサイルなど6発
韓国軍の発表の続報で11月2日に北朝鮮は各種ミサイル23発以上を発射していたことが判明しました。ただし短距離弾道ミサイル以外の地対空ミサイルなども含まれています。また短距離弾道ミサイルとされる飛翔体も飛翔距離が短く、実際には大型ロケット弾である可能性も捨てきれません。
※11月2日より前の時点で北朝鮮の2022年のミサイル発射数は、弾道ミサイルと巡航ミサイルを合わせて50発を発射・2回失敗で発射成功は48発でしたが、11月2日の弾道ミサイル発射数が正確に把握できないので、カウントはとりあえず保留することにします。