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モーニング娘。’21が3年4ヵ月ぶりにアルバム。石田亜佑美が語る「パステルになった」グループの現状

斉藤貴志芸能ライター/編集者
モーニング娘。’21の石田亜佑美(撮影/河野英喜 衣装協力/ROOM211)

モーニング娘。’21の通算16枚目のオリジナルアルバム『16th~That’s J-POP~』がリリースされた。前作から3年4ヵ月ぶりで、ヒットシングルや新曲を織り交ぜた全16曲を収録。サブリーダーの石田亜佑美に、この間のグループと自身の変化やアルバムに反映された現状、そして今後の展望まで語ってもらった。

同期が2人卒業して自分が変わりました

――『16th~That’s J-POP~』は3年4ヵ月ぶりのアルバムとなりますが、前作を出したときと手応えはどう違いますか?

石田 3年4ヵ月前は『⑮ Thank you, too』ですよね? すごく昔に感じて、覚えていません(笑)。メンバーもだいぶ変わりましたよね。

――石田さん自身が、その頃と変わったと思うこともあります?

石田 今と全然違います。4年前は工藤遥ちゃんも飯窪春菜ちゃんもまだグループにいて、同期の中で役割分担があったんです。はるなん(飯窪)はお姉さんでグループ全体を見ていて、どぅー(工藤)は後輩との距離が近くて慕われていて。私は何かあったら注意するくらいで、たぶんそんなに周りを見てなかったんです。この3年で、同期から2人が卒業したことが、私には一番大きな変化でした。今まで2人に頼っていた部分も「自分がやらなきゃ」と思うようになりました。だから、後輩との距離をどう縮めるかも考えるようになって、佐藤優樹ちゃんからは「あゆみんはやさしくなった。丸くなった」と言われます。そこが一番変わったところですね。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

ロックフェスで目線を曲線で飛ばす技を覚えて

――アイドルとしては、この3年で大きかった出来事は何ですか?

石田 ロッキン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)ですね。ロックフェスに呼んでいただいて、ものすごい経験をさせていただきました。

――2018年、2019年と出演して、2019年にはメインステージのトップバッターを務めました。

石田 今後の人生でも一番誇れるくらいの、永遠に語っていたいほど大きい出来事だったんです。私たちはファンの方を盛り上げる術は知ってましたけど、ファンでない方を盛り上げるにはどうしたらいいのか、ロッキンのときにみんなですごく考えました。『LOVEマシーン』や『恋愛レボリューション21』は皆さん知っていて、踊ってくださるんです。でも、『青春Night』とか、せっかくみんなでワイワイ叫んで一緒に踊れる曲を、どうすれば初めて観る方にも伝えられるか。奥のほうのお客さんにまで、どうやって飛ばせるか。そういう研究をすごくしました。

――そこで見つけたものがあったんですか?

石田 目線ですね。感覚として目線はまっすぐ飛ばすものかと思いきや、曲線も描けるんですよ。前の人たちを「ごめんなさい」と飛び越えて、奥のほうのお客さんに「あなたを見てますよ」という目線を飛ばす技を覚えました。自分たちで(日本)武道館や代々木(競技場第一体育館)に立つときにも活かせたと思います。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

昔のモーニング娘。を知らない世代に響くように

――今回のアルバムにも収録された昨年発売のシングル『純情エビデンス』では、つんくさんがセルフライナーノーツで「伝統なんか背負う必要ない」「過去からの脱却、次へのステップアップ」ということを書かれてました。そういうことは、石田さんも考えてました?

石田 考えてます。だって、今の流行を作っている10代、20代の人たちは、昔のモーニング娘。を知らないじゃないですか。私たちがそこを追うのは違うよねと、私も最近すごく思うようになりました。今の私たちで今のモーニング娘。を作ったほうが、今の方に聴いていただけるかなと。

――2018年のグループ誕生20周年を経て?

石田 確かに20周年のときは、先輩方と一緒に『モーニングコーヒー』を歌わせていただいたり、本当に素晴らしい記念になりました。ずっと応援してくださっている方には、すごい出来事だったとも思います。もちろん私たちはそういう方も大切にしたいし、昔の曲は先輩方をリスペクトして大事に歌っていきたい気持ちはあります。でも、今の私たちの曲は「昔の先輩方だったら、どうパフォーマンスしていたかな」ではなく、今の10代や20代に響くように、攻めて表現していいと思っています。

夢や未来を語る曲が多くて泣きそうになります

――アルバムの新曲は『純情エビデンス』から続くような、前向きな曲が多いですね。

石田 確かに。夢や未来を語る曲が多いなと、私も思いました。

――恋愛ソングの体裁の『恋愛Destiny~本音を論じたい~』でも、<全部やったろう 全部やったれ>と歌っていたり。

石田 この曲、大好きなんです。“現状を打破する。やりたいことをやる”という熱いメッセージを感じて、泣きそうになって。特に高いキーのサビを歌っていると涙腺に来て、本当に危ないです(笑)。

――他にも響いた曲はありますか?

石田 バラードの『泣き虫My Dream』はストレートに「素敵だな」と感じました。今のコロナ禍で、お店をやる夢とか崩れちゃったりしていると思うんです。最初の<夢が一つ 夢が二つ 音もたてず消えてく>から、そういう人たちに寄り添える歌になっていて。<素直な泣き虫でいいの>も響きますね。“前を向いて頑張ろうよ”ではなくて、“後ろ向きになっても大丈夫だよ”と教えてくれて。私も落ち込んだときは、そっち側なんです。

――人知れず涙することも?

石田 あります。でも、辛すぎると、逆に涙って出なくないですか? そういう人にもこの曲を聴いて、涙を流してもらいたいです。泣いたほうがスッキリするので。本当にみんなに頑張ってほしいです。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

ずっと同じ1年を過ごすのが物足りなくなって

――『Hey!Unfair Baby』では<脱却! 脱却!>と。

石田 “打破! 打破!”という感じですよね。

――そういうモードは、今のモーニング娘。’21に必要だと思いますか?

石田 アルバム全曲通して、つんくさんがこんなにも“前に進もう。変わっていこう”と言っているのは、私たちにメッセージを届けているのか、はたまた世の中の状況に向けているのか、わかりません。私は“変わらなきゃいけない”という時期は、ちょっと過ぎたかもしれません。今はもう、いろいろなことを楽しんでやらせてもらっているので。無理して変わるより、1個ダメなら「じゃあ、これをやろう」と進めていけてる気がします。

――“変わらなきゃ”という時期は、いつ頃だったんですか?

石田 “このままでいいのかな?”と思ったのは、パフォーマンス面だと2015年くらいです。グループに入って4年目で、ずっと「ダンスは負けねえ!」という気持ちだったのが、「正確に踊るだけでは人を感動させられない」と悩み出して、大人っぽくなりたいと思っていました。

――それは乗り越えたんですか?

石田 年齢を重ねるごとに、自然に身に付いたものがありました。最近だと、コロナ禍になる前の頃です。コンサートもいただいたお仕事も全部楽しかったんですけど、「もっと面白いことをやろう」みたいな欲が出てきました。9年間、モーニング娘。として活動してきて、「ずっと同じ1年を過ごしているな」と思っちゃったんです。春夏秋冬とコンサートをやらせてもらって、誕生日やクリスマスにはイベントがあって、毎年変わらないなと。それで去年の1月から、バースデーイベントでひとり芝居をやらせていただきました。

――好評だったようですね。

石田 それ以来、「やりたいと思ったことは頑張ればできるんだ」と、自分の中で変わりました。前はやりたいことを口に出すのが恥ずかしかったり、自分で「無理かな」と諦めてしまうところがあったのが、「口にしていこう」と思うようになりました。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

今はメンバーの多幸感が一番の魅力です

――つんくさんが『That’s J-POP』と付けた今回のアルバムですが、石田さんは音楽性をどう捉えましたか?

石田 胸が熱くなる曲が多いなと感じました。今、夢とか語りにくい状況で、やりたいこともできない中で、このアルバムを聴いていただいたら、きっと前向きに頑張っていけると思います。先輩方から受け継がれてきたモーニング娘。のそういう熱さは、私のすごく好きなところで、それがアルバムに現れている気がします。

――今のモーニング娘。’21の良さは、どんなことだと思いますか?

石田 私にはパステルカラーのイメージがあります。2016年や17年ごろは、もっと原色な感じがしていました。個々が強くて、みんなが燃えていて。今のモーニング娘。’21はライブ映像を俯瞰で観ると、メンバーの多幸感が一番の魅力かなと。フォーメーションダンスの頃に比べると、揃ってるところは揃っていても、揃ってないところも正直あります。本当はもっと突き詰めていかないといけない。でも、つんくさんも最近、「後輩が無理に先輩と同じようにする必要はない」と言っていて、みんなが揃っている魅力はちょっと前のモーニング娘。のものだったんだと思いました。今はかわいらしい曲でメンバー同士が仲良さそうにしていたりするのが、魅力的です。空気がパッと明るくなる感じ。ファンの方も微笑ましく見てくれていて、その空間すべてがパステルに見える。それがモーニング娘。’21だと思います。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

15期がグループの色を変えてくれました

――パステルの色合いは、2019年に加入した15期メンバー3人がもたらした部分が大きいのでは?

石田 すごく大きいです。15期が色を変えてくれました。

――その15期の教育は、サブリーダーになった石田さんが中心に担っていたんですか?

石田 そうですね。いろいろなことを教えました。特にダンスですけど、本当に最初だけです。今は踊り辛そうにしていたらアドバイスはしても、「ここの手の角度はこう」みたいな細かいことは教えていません。

――伸び伸びと育てる方針?

石田 また単独でコンサートツアーをやるようになったら、揃えることが必要なので、教えていこうと思っています。でも、今はハロー!プロジェクトのツアーの中で、楽しさが必要。その楽しさがファンの方にもきっと伝わるので、そこを大事にしています。

清楚なだけでなく面白いと知ってもらえたら

――15期の3人それぞれ、石田さんから見た良さや伸ばしたいところを挙げてもらえますか?

石田 山﨑愛生ちゃんは常にハツラツとしていて、歌声も歌い方もすーごくかわいいんです。ステージに立つと、カッコイイ曲をやっていても楽しそう。いるだけで場が明るくなるのは私たちにとっても救いなので、ずーっとそういう存在でいてほしいなと思います。北川莉央ちゃんは今年初めのバラードのコンサートで、自分の歌い方を発見したのか、すごく良かったんですよ。たぶん歌に自信を付けているので、そこはこのまま、どんどん進んでほしいです。

――北川さんは去年写真集を出して、最近も『ヤングマガジン』で表紙&巻頭グラビアを飾りました。

石田 15期が加入して、まだイベントやコンサートをたくさんできてないので、ファンの方も北川のことをよく知らないと思うんです。清楚な感じで「先輩たちに負けないように頑張ります」って、王道っぽく入ってきましたけど、すごく面白い子なんです。そこも今後、皆さんに知っていただけたらと期待しています。

――そして、岡村ほまれさんは?

石田 ほまれちゃんも面白い一面があります。その面白さは先輩と一緒にいるときに出るんですよ。お話していて、「えっ、その日本語ヘンじゃない?」とか「逆に失礼じゃない?」みたいなことを間違えて言ってしまうのが、おかしくて。そういうところを出せるようにしていきたいし、赤ちゃんみたいなかわいい子なので(笑)、成長を見守ってほしいです。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

淡い色になる前にどこかで火をつけます

――モーニング娘。の未来像について、何か考えることはありますか?

石田 理想としては、何だかんだあっても、根本のモーニング娘。らしさは残ってほしいです。今のパステルのままで行くと、面白くないグループになっちゃいそう。今は今でいいんです。でも、これがずーっと続いて、もっと淡い色になってしまったら、私はちょっとイヤかも。メンバー間でちゃんと彩っていかないと、どんどん薄くなってしまう不安があるので、どこかを境に濃い色を付けないと。今のうちから、火は燃やしていきたいんですよね。

――「根本のモーニング娘。らしさ」というのは、もともとオーディションの落選組で結成されてメンバー同士も競い合ってきた、グループの遺伝子を踏まえたものですか?

石田 そうなんです。いざというときに「やったるぜ!」みたいな熱量。ロッキンのときとか、みんなすごくカッコ良くて、私の好きなモーニング娘。の空気を感じました。今のメンバーもカッコイイのはわかっているので、そういうスイッチを押せるときがまたあればいいなと思います。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

面白いと思ったことにいろいろ挑戦したい

――つんくさんの『人生Blues』のセルフライナーでは、「譜久村や石田は40歳現役とか、度肝を抜くような人生を歩んでほしい」とありました。石田さん自身は、40歳までモーニング娘。をやる気持ちはありますか?

石田 わかりませんけど(笑)、私がモーニング娘。に長居したとしても、「つんくさんがそう言ってくれていたし」という気持ちでいられるかもしれません。活動の中で面白いことができたら続けていくし、さっきも言ったように何かを「これ面白い!」と思ったら、将来はそっちに行くかもしれません。現状維持も大事ですけど、ちょっとつまらないじゃないですか。

――最近では『ひなフェス』で「石田のパン」を販売していましたね。バースデーイベントでひとり芝居をやって、ダンススキルの高い石田さんは、ミュージカルをやりたいとも思いません?

石田 お芝居は好きですけど、お芝居だけで行くのも違うと思うんです。欲張りなので、歌やダンスもやりたい。工藤遥ちゃんみたいに女優になりたいわけではありません。いろいろ挑戦していく私を、見守ってもらえたらうれしいです。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

Profile

石田亜佑美(いしだ・あゆみ)

1997年1月7日生まれ、宮城県仙台市出身。

2011年に「モーニング娘。10期メンバー『元気印』オーディション」に合格。2012年に初参加のシングル「ピョコピョコ ウルトラ」が発売。2018年12月よりサブリーダーに。『あらあらかしこ』(仙台放送)の月1回コーナー「石田亜佑美が行くっ!」に出演中。

モーニング娘。’21(アップフロントエージェンシー提供)
モーニング娘。’21(アップフロントエージェンシー提供)

モーニング娘。’21公式HP

『16th~That’s J-POP~』 

初回生産限定盤(CD+BR) 6500円+税
初回生産限定盤(CD+BR) 6500円+税

 通常盤 3000円+税
通常盤 3000円+税

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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