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access 恒例の秋冬ツアー開幕。想像を遥かに超える“没入感”、その先にある二人の新しい世界

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/ ViVi小春 (全て)

恒例の秋冬ツアー『access TOUR 2024 immersive arc』スタート

11月26日はaccessの32回目のデビュー記念日だった。二人はちょうど一か月前の10月26日、恒例の秋冬ツアー『access TOUR 2024 immersive arc』を埼玉・サンシティ越谷市民ホールからスタートさせ、現在も全国各地でファンを熱狂させている。その初日の模様をレポートする。

“immersive arc”と名付けられた今回のツアー。これまでも強烈な没入感で観客をその世界にいざない、楽しませてきたが、改めて没入感という言葉を提示した今ツアー。果たしてどんな体験が待っているのか――そこには想像を遥かに超える没入体験、accessの新たな世界が待っていた。

会場には、BGMとしてワーグナーの「ニーベルングの指環」の荘厳な調べが流れ、ツアー初日というワクワク感と相まって、何を見せてくれるのか、何を感じさせてくれるのか、観客のドキドキが見えてくるようだった。


客電が落ち、光と影で構成された、モノクロっぽい空間にステージが浮かび上がる。中央の大きな円形ライトにSEと共にエネルギーがチャージされていくようで、光がベールを作り出していく。まるで宇宙船の中にいるような感覚。そして宇宙の旅へと連れ出してくれそうな感覚になる。シルバーの衣装を纏った浅倉大介と貴水博之が登場すると大きな歓声が沸き、客席は総立ちだ。

「リアルの先にあるのがファンタジーなのか、ファンタジーの先がリアルなのか」

注目のオープニングナンバーは「arc jump'n to the sky」のテレビサイズバージョン。「ウルトラマンアーク」のオープニングテーマに起用された、デジタルビートと人懐っこいメロディに、二人の「ウルトラマン」へのリスペクトとポジティブな気持ちが込められた一曲だ。貴水のエモーショナルというより、爽やかで軽快なボーカルが印象的だ。そしてイントロから歓声が上がった「COSMIC RUNAWAY」へ。最新曲からaccess結成のきっかけとなった曲への時間旅行に、客席は胸の高まりを押さえきれない。

「今回のツアーは”イマーシブ”というキーワードを入れています。“没入感”という意味があって、リアルの先にあるのがファンタジーなのか、ファンタジーの先がリアルなのか。accessもデビューからSFの世界観の曲がいくつかありました。今の時代ならではのaccess のSFファンタジーの世界に没入してください」と、浅倉がライヴのコンセプトを説明。

「BEAT PLANET」は「JULIET」とのマッシュアップだ。この予測不能のアレンジに客席は狂喜乱舞。貴水の変幻自在のボーカルと浅倉のキーボードソロに引き込まれる。イントロからワクワクさせてくれる「GLAMLOID」、「Vertical Innocence」は激しいビートと光、そして貴水の歌のアタックが、客席に容赦なく突き刺さり、オーディエンスはそれを全身で浴び、感じている。

「皆さんいい感じに"没入"してますね。ここからはまた新しいアプローチでaccessの世界を楽しんでください」という浅倉の言葉に続いて「Star Tribal」「アオイナミ」「grand muse」とバラードを3曲披露。「Star Tribal」は貴水がスタンドマイクで圧倒的な歌を届ける。エレピのアウトロが歌の余韻を深くする。波間にたゆたうようなサウンドと歌の「アオイナミ」は、椅子に腰かけながら歌う貴水の美しいファルセットが堪能でき、「grand muse」では甘く伸びやかな歌で客席を包みこむ。夜明け前の一番深い闇から、少しずつ夜明けを迎え、そして新しい朝の光を感じる、そんな物語を紡いでいるようで、その世界に没入させてくれる。

サポートメンバーの清水武仁(G)と柴田尚(Dr)が激しくメロディアスなインストナンバー「NIGHT WAVE」を演奏。その圧巻のテクニックに酔っていると、衣装チェンジした二人が登場。シングル「arc jump'n to the sky」のカップリングになっている「Blaze of liberation」を初披露。“陽”の「arc~」と対をなすような、マイナーコードが不穏な空気を連れてくるハイスピードなナンバーだ。貴水の、胸を締め付けるような歌に客席は聴き入っている。客席が揺れたのは「JOY TRAIN」だ。コール&レスポンスで盛り上がり、心を解放してくれる。浅倉がジャケットを脱ぎ、回して舞台袖に放り投げる。そして高揚感のあるイントロの「Tragedy」は、色気を感じるメロディを貴水が、歌詞に合わせたボディランゲージで色香を振りまき、魅せる。

高揚感、解放感、そしてそのメロディは誠実さを感じさせてくれ、だからaccessの音楽に身を委ねたくなる――そんなことを改めて感じさせてくれるライヴだ。多幸感という言葉も追加したい。

ギターのバッキングが心地いい「夢を見たいから」では、浅倉がステージサイドのスペースまで来て客席に歌ってと煽り、笑顔を届ける。煌めくサウンドと貴水のどこまでも広がる歌とラップが炸裂する「Stand By」を披露し、浅倉のキーボードソロ「balearic GHOST」へ。ステージ中央の円形ライトの中心で照明とレーザー眩くきらめき、色とりどり、変幻自在に音を創り上げていく浅倉のプレイが重なり、ラストの虹のような照明と重なり、圧倒的な世界を作り上げる。

激しいリズムの「IZASUSUME!」では浅倉がギターを持ち、大合唱する客席最前列のファンとグータッチ。バンドのギタリスト清水とツインギターも披露した。貴水はマイクスタンドプレイで魅了する。親近感のあるメロディの「JEWELRY ANGEL」では、浅倉がショルダーキーボードで親しみのあるフレーズを弾き、サビで貴水のハイトーンボーカルが、まさに突き抜けていく。そしてライトが激しく交錯して「MOONSHINE DANCE」だ。おなじみの曲も毎回表情が違う。この日もオレンジ色に染まった客席と二人は新鮮な瞬間を楽しんでいた。

「盛り上がっていますかー!ラストはこの曲!」と貴水がシャウトし「arc jump’n to the sky」だ。フルサイズでこの曲の全貌を初生披露した。子供も大人も夢中にさせるエレクトロサンドと歌が前向きなエネルギーを生み、進化したaccessの姿を映し出していた。曲終わりに2人でウルトラマンの光線(アークファイナライズ)ポーズで、お互いにビームを打ち合う微笑ましい姿に、客席も笑顔だ。

アンコールでは浅倉がツアーグッズのジャージを履き登場すると「ステージの上でジャージを履いたの人生で初めて。家でもいつもジーンズとか派手なの履いているから」と語り始めると、客席に笑いが起こり、その後も二人のやりとりに爆笑の連続だ。この“ワチャワチャ感”もファンは楽しみにし、ライヴに足を運んでいる。ほのぼのとしたMCから「ライヴでしか聴けない曲を」と「LOVING YOU」へ。いつもキーボードとまっすぐな歌だけの、インプロビゼーション的なセッションで楽しませてくれる強く、優しいナンバーだ。再びバンドが合流して「ラスト行くぜー!」と「LOOK-A-HEAD」を披露。貴水のハイトーンボーカルは最後まで高い熱量のまま客席に響き渡っていた。大きな歓声に包まれながら、二人は手でハートを作り、客席に向かって送り、ステージを去っていった。

accessの今年の大きなトピックスのひとつだった「ウルトラマンアーク」オープニングテーマ「arc jump'n to the sky」の発売。このツアーも宇宙、銀河をイメージするスペーシーな空気を纏う曲が多く、その世界観に没入でき新鮮なaccessを感じさせてくれた。加えて多幸感溢れる曲を交え、accessのライヴといえばの安心感も感じさせてくれるパフォーマンスだった。デビュー32年を迎えてもまだまだ、いや、ますます予測不能のaccessのライヴ。しかし変わらないのは二人とファンの愛が溢れる空間と時間だ。ずっと応援しているファンも「ウルトラマンアーク」をきっかけにaccessに興味を持ったファンも、心から感動できるステージだ。

このツアーは12月6日東京・立川ステージガーデンまで続くが、30日LINE CUBE SHIBUYAでの追加公演が発表された。

accessオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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