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PEOPLE 1 ドラマ“あのクズ”主題歌「メリバ」が話題。その独創的なエモい音楽にハマる人が続出

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ(全て)

ドラマ“あのクズ”主題歌「メリバ」が好調

Deu(Vo, G, B, Other)、Takeuchi(Dr)、Ito(Vo, G)の3ピースバンド・PEOPLE 1が歌う、奈緒主演のドラマ 『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系火曜22時~)の主題歌「メリバ」が好調だ。MVは122万回再生を超え(11/27現在)、11月29日には『ミュージック ステーション』に初出演し、同曲を披露。そのパフォーマンスはSNS上でも大きな反響があった。

“あのクズ”は、結婚式当日に彼氏に逃げられた主人公・佐藤ほこ美(奈緒)が、人生どん底のタイミングで、金髪の謎の男・葛谷海里(玉森裕太)と出会ったことをきっかけに、自分を変えるためにボクシングを始める。恋もボクシングも本気で向き合う、人生をサバイブするアラサー女性の姿を、オリジナル脚本で描くクズきゅんボクシングラブコメディだ。

「メリバ」(10月19日配信)
「メリバ」(10月19日配信)

PEOPLE 1にとって初の民放ドラマ主題歌が「メリバ」だ。この曲についてDeuは「 生きることはとても難しくて、僕らはいつも自分自身の面倒を見るだけで精一杯です。けれど、大切なものを守りたいと願う時、少なからず強くなったり変わったりする必要がきっとある。そして、その先にどんな未来が待っていようとも、その想いはとても尊いものであり、信じるべきなのだと、僕は思っています。この物語が持つ確かな強さを、そして確かな弱さを、PEOPLE 1なりのサウンドと言葉に落とし込みました」とコメントしている。

「メリバ」=Merry Bad Endというタイトル通り、不確かな未来に愛情をこめて寄り添っている

Deuが手がけた、ドラマとリンクしながらも、全ての人の心の支えになる真摯な言葉の数々。それが彼らの根底に流れる、ポップネスを強く感じるメロディとアグレッシブなサウンドとひとつになった時、まるで光のシャワーのように聴く人全ての心に降り注ぐ。主人公・ほこ美や海里が向き合う痛みや困難、それをもがきながらも乗り越え、手に入れる希望をこの曲が視聴者にまっすぐ届けてくれる。「メリバ」=Merry Bad Endというタイトル通り、不確かな未来に愛情をこめて寄り添っている。

同ドラマのプロデューサー・TBS戸村光来氏は「今回、ボクシングがテーマであるということで主題歌は勢いのある楽曲にしたいと考えていました。そんな中で、PEOPLE 1さんの音楽を聴きました。キャッチーなメロディの中に健気さや負けん気があり、そしてどこか可愛らしくも感じ、ほこ美の成長や海里の過去など様々な要素を持つこの物語にぴったりな音楽性だなと思いオファーさせていただきました」と語っている。主人公・ほこ美のジェットコースターのような感情の揺れ、表の顔と裏の顔のギャップが激しい、キャラクターの強い愛すべき登場人物たち、そしてコメディ要素もタップリと含まれ、毎回まさにPEOPLE1の音楽のように予測不能で、視聴者のやきもきがSNSを賑わせている。「『メリバ』を初めて聴いた時、ほこ美と海里に降りかかる様々なことを二人で乗り越えていく姿が、言葉と音でより鮮明に表現していただけたなと感じ、改めてオファーしてよかったなと思いました」(戸村氏)。

ドラマを包む空気や匂いを鮮やかに映し出している「メリバ」

「メリバ」はドラマを包む空気や匂いを鮮やかに映し出している。打ち込みと生楽器をブレンドさせ、スリリングな展開でその世界に“引きずり込まれる”。中毒性を感じるハスキーな声のDeuと、ファルセットも美しい、爽やかな声のItoとのツインボーカルが強いコントラストを作り出し、何ともいえないエモーショナルな肌触りを醸成している。特に曲の後半の構成には驚かされる。それまでの轟音と激しくドープなラップから急に静寂がおりてきて、柔らかな空気を作る。そして再び疾走感の中、開放されるようにクライマックスへ向かい、そこで投下されるはポエトリーリーディングだ。ラップではなく、ビートを抱きしめながら想いを吐露するようにポエトリーリーディングが展開される斬新なスタイルだ。

この部分は<2024年秋>というフレーズから始まる。そして<僕らは相変わらず傷だらけで 来るべき最悪を想像しては 居心地を悪くしてる>と、バンドとしてのより生々しい言葉が紡がれている。もちろんドラマともリンクしているこの“芯を食った”言葉達は心に響いてくる。この「メリバ」という楽曲はまさにカオスという言葉がピッタリだ。しかしそのカオスが中毒性をもたらし、PEOPLE1の音楽の沼にハマってしまうのだ。

2019年末に結成されたPEOPLE 1は、現在までデジタルシングル・EP、CDシングル・アルバム、EP、全25タイトルをリリースしている多産型のバンドだ。しかも幅広い音楽性でひとつとして同じカテゴリーに括れる楽曲がない。これだけ楽曲を制作、発信し、軸足になっているライヴも精力的に行なっている。

2023~2024年には2つのコンセプトで同時並行開催された5回目、6回目のワンマンツアーを行ない、今年1月にはぴあアリーナMM2daysを満杯にした。そして5月から夏にかけては全国の主要大型音楽フェスに出演。11月9日には、気志團からの熱烈アプローチに応え「気志團万博2024」に初出演。そのライヴを観たが、最注目のバンドの登場だけに、違うステージでライヴが終わった途端、PEOPLE1のステージにオーディエンスが押し寄せてきた。「銃の部品」「idiot」と代表曲を演奏すると、その圧倒的な演奏力に初見のオーディエンスは、前のめりになって聴いているのが伝わってくる。そして熱狂が生まれる。

聴き手の心を躍らせるノリのいいサウンドと、誰もが心の奥底に持つ人間のダークな感情や、孤独の佇まいもしっかり音楽に落とし込んでいる

アンセム的な存在になっている「DOGLAND」(アニメ『チェンソーマン』EDテーマ)では大合唱が巻き起こっていた。メロディがキャッチーであることは、様々なアーティストのファンが集結しているフェスでは強力な武器になる。もちろん「メリバ」も披露した。話題になっている曲だけに盛り上がりが違う。MCでItoが「こんなにどアウェーなライヴは久しぶり」と言っていたが、集まった全ての人を虜にし、確実に“もっていった”。

聴き手の心を躍らせるノリのいいサウンドと、誰もが心の奥底に持つ人間のダークな感情や、孤独の佇まいもしっかり音楽に落とし込んでいる。だからPEOPLE1の音楽はエモい。だから一聴しただけで感情が揺さぶられる。そして一度ハマったら抜け出せないバンドだ。

12月21、22日東京・有明アリーナ2days

12月21、22日には『第8回本公演 “PEOPLE 1の世界”』を東京・有明アリーナで行なう。今PEOPLE1が作る熱狂に巻き込まれる人が急増している。その渦はますます大きくなっていきそうだ。

PEOPLE1オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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