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この投手がいなければ、リーグ優勝は危うかった!? ワールドシリーズでもキーマンになるはず

宇根夏樹ベースボール・ライター
タイラー・マツェック(アトランタ・ブレーブス)Oct 23, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 アトランタ・ブレーブスは、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズでロサンゼルス・ドジャースを下し、22年ぶりのワールドシリーズ進出を決めた。

 このシリーズのMVPに選ばれたのは、エディ・ロザリオだ。6試合で25打数14安打(打率.560)、3本塁打、9打点の成績もさることながら、その内容も濃かった。第2戦はサヨナラ・ヒットを打ち、第4戦は2本のホームランで計4打点を挙げ、第6戦は同点の4回裏に3ラン本塁打を記録した。

 ただ、タイラー・マツェックがいなければ、ブレーブスは第6戦を落としていたかもしれない。

 7回表に登板したルーク・ジャクソンは、打者3人に投げ、与四球を挟んで2本の二塁打を打たれた。スコアは4対1から4対2となり、なおも、無死二、三塁。同点に追いつかれても、まったくおかしくなかった。

 ブレーブスとドジャースは、昨年もこのシリーズで顔を合わせている。第1戦から第5戦までに、ブレーブスが挙げた3勝と喫した2敗は、○○●○●の順序も、2年続けて同じ。第6戦と第7戦が、再び●●となることもあり得た。

 けれども、そうはならなかった。ジャクソンと交代したマツェックが、対戦したドジャースの3人、アルバート・プーホルス、代打のスティーブン・ソーザJr.ムーキー・ベッツを、いずれも三振に仕留めた(写真はその直後)。8回表も3人で終わらせ、マツェックはその直後に代打を送られた。最終回はウィル・スミスが締めくくり、ブレーブスは前年と違うシリーズの結末を迎えた。

 2009年のドラフトで、マツェックはコロラド・ロッキーズから全体11位指名を受けた。この年に指名された高校生の左投手のなかでは、最高の順位だった。2014年6月のメジャーリーグ初登板は、8回表に点を取られて降板するまで、スコアボードにゼロを7つ並べた。その後、イップスに陥り、今シーズンはメジャーリーグ4年目。最初の2シーズン(2014~15年)とここ2シーズン(2020~21年)の間には、ブランクが4年ある。メジャーリーグの球団から何度も解雇され、独立リーグでも投げた。

 ここ2シーズンの成績は、2020年が21登板で防御率2.79、2021年は69登板で防御率2.57だ。奪三振だけでなく与四球も多めながら、90マイル台後半の4シームとよく曲がるスライダーを投げ、打者を抑えている。

 また、マツェックは、前の投手から引き継いだ走者にホームを踏ませることが少ない。2020年に生還されたのは12人中2人、2021年は28人中3人だ。後者の10.7%は、2021年に25人以上の走者を引き継いだ74投手中、トニー・ワトソン(ロサンゼルス・エンジェルス/サンフランシスコ・ジャイアンツ)の8.0%(25人中2人)とリーアム・ヘンドリクス(シカゴ・ホワイトソックス)の10.0%(30人中3人)に次いで低い。

 昨年と今年のポストシーズンは、計8人(3人と5人)の走者を引き継ぎ、誰にもホームインを許していない。そのハイライトが、リーグ優勝を決めた第6戦というわけだ。少なくとも、現時点においては。

 ワールドシリーズは、10月26日に始まる。ブレーブスは、ヒューストン・アストロズと対戦する。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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