山代エンナが語る「旅サラダ」と描くことの相関関係
ABCテレビ「朝だ!生です旅サラダ」で旅サラダガールズを務めるイラストレーターの山代エンナさん(32)。東京で4年ぶりとなる個展「LIFE」(2月6日まで、有楽町マルイ)も開催するなど多岐に渡り発信を続けていますが、表現者としての根っことは。
誉められる喜び
絵を描き始めるきっかけは“誉めてもらったこと”だと思います。自分の絵を見た人、最初は両親だと思うんですけど、すごく誉めてくれたんです。子どもながらにそのうれしさは大きくて、そこがスタートラインだと思っています。
そして、描き続けてきた中で絵にも変化がありました。20歳くらいまでの作品は自分の中の闇や怒り、そういうものの発露として描いていたのかなと。今から考えると、負の感情が原動力だったように感じています。
でも、描いていくにつれ自分も成長してきたのか、徐々に描く意味が変わってきたんです。自分のためではなく人のために描く。もっと言うと、見てくださっている方の気持ちを考えて描く。そう変わっていったと思います。
感覚的な話になりますけど、実はここにも“誉められる”という要素が関わっているのかなと。見てくださった方が喜んでくださる。前向きな気持ちになってくださる。そうなってもらいたい。
実際に作品を見てみても、昔は色も白黒で、細かいタッチの線画が多いんです。何を書いているのかパッとは分からないというか(笑)。それが今は「伝えたい」「楽しんでもらいたい」ということを意識しながら描いているからか、だいぶ作品も変わってきたと思います。
今も「溢れてくる思いをそのまま出す」というアーティスト的な思いもあるんですけど、それ以上に見てくださる方の気持ちを意識する。そうすることが、実は人から求められて描き続けることにもつながっていく。そんなイメージを持つようになっていきました。
「旅サラダ」という刺激
そういった思いの変化の部分に大きく作用しているのが2018年から出演をさせてもらっている「―旅サラダ」だと思います。
見てくださる方の数もものすごく多いですし、見てくださる方がどう思われるのか。できれば、少しでも明るい気持ちになってもらいたい。その重みと大切さを番組とのご縁の中で強く感じました。
それともう一つ自分の中で大きかったと思っていることがありまして。それが「ストレートに出す」ということなんです。
自分の表現を追求して、こねくりまわして吐き出す。製作においてはそういうことをやってきたイメージだったんですけど、「―旅サラダ」で得たイメージは全く違うものだったんです。
海外に行くと、行った場所によって受けるインスピレーションが全然違う。それぞれをそのまま素直に出したい。こねくりまわすのではなく、ストレートに表現する。それは絵を描く時にも活用している感覚ですし、そんな感覚を得たのは「―旅サラダ」があったからだ思います。
さらに、神田正輝さんを始め素敵な皆さんとご一緒できるのも本当に大きいなと。皆さんから、いろいろな言葉もかけていただきました。
勝俣州和さんからは「思うがままにやったらいい。上手にしようとしなくてもいいから」と言っていただきました。ロケの達人からそんなことを言っていただくことがありがたいですし、勝俣さんがおっしゃっているならとスッとしみ込んでいった言葉でもありました。
神田さんも本当にお優しい方で、これは私のみならず初めてスタジオに来た方とか緊張しがちな皆さんにおっしゃってるんですけど「この番組は真面目にやっちゃいけない番組だからね」と。緊張の解き方一つでも、本当に素敵だなと思いますし、自分もそういうことができる人間になりたいと思うようになりました。
そういった刺激がまた絵に新たな力を与えてくれる。そう考えると、やっぱり絵を描くことは一生辞められないなと。この覚悟だけはあります。
今は新型コロナ禍で難しいんですが、これが落ち着いたら、まずは国内を旅して絵を描いたりしたいと思います。やっぱり刺激を受けて、インプットしないと新たなものは出てこないですからね。
20歳の頃は初期衝動で筆を動かせばどんどん描けるという感じだったのが、まだ老け込む歳ではないんですけど(笑)、年々自分に入れていかないと枯渇してきますから。入れて描く。あまり先のことを決めたりはしないんですけど、これを続けることだけは決めています。
(撮影・中西正男)
■山代エンナ(やましろ・えんな)
1990年1月11日生まれ。兵庫県出身。イラストレーター。2018年からはABCテレビ「朝だ!生です旅サラダ」に旅サラダガールズとして出演中。2月6日まで東京・有楽町マルイ8階イベントスペースで個展「LIFE」を開催している。