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教育リーグ最後の中日戦・その2 大野投手に投げ勝った小野投手《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
14日の教育リーグ・中日戦で先発、7回2安打無失点と好投した小野泰己投手。

 16日にウエスタン・リーグが開幕しました。オープニングゲームは、ナゴヤ球場での中日-広島戦、タマホームスタジアム筑後でのソフトバンク-阪神戦だったのですが、ナゴヤは雨で中止になっています。きのうまでの陽気はどこへやら、雨と風で前日より10度も低かったところが結構ありました。天気は西の方から回復して、筑後では朝8時半頃に雨が上がって試合はできたけれど、相当寒かったみたいですねえ。

 阪神の“開幕投手”は、矢野燿大監督から安芸キャンプの投手MVPに選ばれた福永春吾投手が務めました。ソフトバンクは1軍の開幕戦で先発するであろう千賀滉大投手。福永投手は3点を失ったものの両先発投手の交代後、互いにバッテリーのミスなども絡んでゲームがもつれます。結局、逆転しながら追いつかれ、最後に勝ち越しを許して敗戦。終わったのは17時すぎでした。

 一方、1軍のオープン戦(楽天・静岡)は派手に打ちまくったみたいですね!20安打ってすごい。伊藤隼太選手と原口文仁選手が4安打ずつ放っています。

教育リーグ、最後は完封勝ち

 さて、遅くなってしまいましたが、14日に行われた教育リーグ最終戦(中日・ナゴヤ)の詳細をご紹介します。前日は才木浩人投手が先発し、調子がよくなかったというものの7回1失点。後半に爆発した打線が18安打11点を取って圧勝でした。こちらからご覧ください。→<教育リーグ最後の中日戦・その1 又吉投手を打って勝ちました!>

 そして14日は、打線が中日・大野雄大投手をとらえ4回までに9安打で5得点。5回以降はリリーフ陣にパーフェクトピッチングを許したのですが、先発の小野泰己投手が7回を2安打に抑え、ついでルーキー・石井将希投手が1安打の完封リレーで、教育リーグを締めくくりました。なお、この日にホームランを打った陽川尚将選手は、原口選手ともにオープン戦の続く1軍へ戻り、北條史也選手と長坂拳弥選手が筑後に遠征中です。

《ファーム教育リーグ》

画像

 中日- 阪神 (ナゴヤ) 

  阪神 011 300 000 = 5

  中日 000 000 000 = 0

  

◆バッテリー

【阪神】小野-石井 / 原口-小宮山(8回~)

【中日】大野雄(4回)-阿知羅(1回)-丸山(2回)-福谷(1回)-三ツ間(1回) / 加藤‐桂(8回~)

◆本塁打 神:陽川(大野雄)

◆二塁打 神:森越、熊谷

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]遊:植田   (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0)

2]右:島田   (4-1-2 / 2-0 / 0 / 0)

3]三:北條   (3-1-1 / 0-0 / 0 / 0)

4]左:陽川   (4-2-1 / 0-0 / 0 / 0)

5]捕:原口   (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃打捕:小宮山 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

6]一中:板山  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

7]指:森越   (1-1-0 / 0-1 / 0 / 0)

〃打指:緒方  (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃打指:岡崎  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

8]中:江越   (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

〃打一:今成  (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

9]二:熊谷   (4-2-1 / 0-0 / 0 / 0)

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

小野 7回 88球 (2-7-2 / 0-0) 148

石井 1回 36球 (2-2-1 / 0-0) 142

<試合経過>※敬称略

陽川選手が2回に先制ホームラン!文句なしの一発でした。
陽川選手が2回に先制ホームラン!文句なしの一発でした。

 先に打線を紹介します。中日の先発・大野は植田と島田から連続で見逃し三振を奪うなど9球で三者凡退。ちなみに1回裏の小野も、10球で2奪三振の三者凡退と、わずか9分間の攻防でした。しかし2回、先頭の陽川が1ボールからの2球目、140キロの真っすぐをレフトへ先制ホームラン!1死後に板山が中前打(前日に続いてスタメンマスクの加藤が二盗を阻止)、2死となって森越は左越え二塁打を放ちますが追加点なし。

3回に二塁打、筒井コーチと笑顔でグータッチする熊谷選手。
3回に二塁打、筒井コーチと笑顔でグータッチする熊谷選手。
4回にもタイムリーを放ちました。
4回にもタイムリーを放ちました。

 3回は熊谷がレフトフェンス直撃の二塁打、植田は初球で送って島田が中前タイムリー!島田も加藤に刺され2死となってから北條と陽川に連打が出ますが、ここは1点止まり。しかし4回、森越の四球と江越の左前打などで1死一、二塁として、熊谷が左前タイムリー!植田は四球を選んで満塁となり、島田の一ゴロを石岡が捕ってホームへ送球。江越はセーフ!1野戦が記録され、なおも1死満塁で北條の中犠飛。この回は3点を追加しました。

 大野雄が4回で降板した中日は、5回が阿知羅、6回と7回は丸山、8回は福谷、9回が三ツ間という継投で、4投手とも無安打無四球の無失点。阪神打線は完ぺきに抑え込まれています。

小野投手が狙うのは1軍の開幕ローテ!
小野投手が狙うのは1軍の開幕ローテ!

 一方、阪神の先発・小野投手は最初に書いた通り、1回は10球で2奪三振の三者凡退。2回は5番・石垣に左前打されるも、自身が盗塁を阻止して3人で片付けました。3回は1死から四球を与えた近藤の二盗を、今度は原口が刺すなど3人で終了。4回は三者凡退と、ここまで3人ずつで抑えています。5回は2死から6番・石岡の右前打と盗塁で初めて二塁に走者を置いたものの、次は三ゴロで無失点。

8回から2イニングを0点に抑えた石井投手。
8回から2イニングを0点に抑えた石井投手。

 6回は三者凡退で、7回は1死から四球を与えましたが、4番・阿部は二ゴロで併殺。やはり3人で終了というわけで、7回を投げ2安打無失点だった小野。7回を除く毎回の7奪三振、三塁を踏ませないピッチングでした。

 8回からは石井と小宮山のバッテリー。まず1イニング目は5番からを三者凡退に切って取ります。9回は1死から途中出場の9番・桂に中前打を許し、次に四球を与えるも、代打・谷は2球で三ゴロに、代打・武山は初球を打たせて左飛で試合終了です。

「勝てるピッチャーの内容」と監督

ことしの勝利のハイタッチ、監督とコーチは最後尾で迎えます。
ことしの勝利のハイタッチ、監督とコーチは最後尾で迎えます。

 矢野監督には、まず小野投手のことを聞きました。「ここで抑えても1軍ではどうかという話をきのうもしたけど、きょうの小野のあれは1軍の中でも、しっかりやっていけるピッチング。初球ボールが多いかなと思ったがファウルとか使える場面もあったし。まっすぐに力もあった。勝てるピッチャーの内容だったかなと思う」

 特によかったのはどこかとの問いに「真っすぐを待っているところに真っすぐで押し込めたりする、球の力があるピッチャー。2軍で押し込めないようじゃ上に行ったら、とらえられる。カーブもよかった。使えるのは大きい。もっと幅が広がる。緩いボールってのはピッチャーもバッターも勇気がいるけど、カーブをうまく使っていた」と矢野監督。

1年目と違い、焦らずに投げられているという小野投手。
1年目と違い、焦らずに投げられているという小野投手。

 そして「1軍、2軍の違いはあるけど、2軍でもしっかりできているのは評価のポイント。去年みたいに、カウントで苦労していないってのは成長かな。カウントが取れれば球数も減ってくる」と話しています。

 高橋建投手コーチは「素晴らしかったですね。ちょっぴりの反省があるとすれば7回。少しバラついたこと。でもあの(四球を与えた)あとダブルプレーを取れたので、もし次の回を投げたとしても、すんなりいけそうな気にさせてくれたのがよかった」と振り返って「あれだけのピッチングを上でしてくれたら、今年もう(ファームで)見ることないのかな~と思いますよね」と笑顔。「久しぶりに見て、球の力があるのを感じました。素晴らしい」

完封リレーの小野投手と石井投手

 小野投手は、思ったほど手放しで喜ぶという感じでありませんでした。これから先が大事だと気を引き締めていたのでしょうか。なので、ここをこうしようと思ってできた点は?と尋ねたら「いつもより変化球を多めに投げられて、しっかりカウントや空振りを取れてよかったです」という返事。矢野監督が、勝てるピッチャーだと話していましたよ。「上でも、きょうみたいなピッチングができれば、しっかり落ち着いて投げることができるんじゃないかなと思います」

7回、併殺で終わらせてくれた内野陣を迎える小野投手。左はショートの植田選手です。
7回、併殺で終わらせてくれた内野陣を迎える小野投手。左はショートの植田選手です。

 ことしは最初から、対外試合でずっと無失点の小野投手。いい状態が続いている?「去年みたいに焦って投げることが減って、落ち着いて投げられているのはいい方向かなと」。開幕ローテ入りが近づいた?「そこは常に狙っているので、このあとの実戦でも自分のピッチングをやった上でのローテ入りと。しっかり自分のピッチングをやることだけ考えて臨んでいきたい」

 7回で88球、球速も落ちなかったですね。7回にも148キロが出ていました。「今の課題は球数を多く投げていくことなので。最後はバラついたけど球速が出ていたのはよしとして、精度を上げていけるようにしたいです」

石井投手はこの日、教育リーグで初めて無失点でした。
石井投手はこの日、教育リーグで初めて無失点でした。

 小野投手が7回2安打無失点で、あとを受けた石井投手に「プレッシャーだった?」と聞いたら思いっきり苦笑い。ま、投げづらかったかもしれませんね。石井投手は教育リーグ3試合目の登板で、無失点は初めてでした。しかし「ある程度、強い球は投げられたんですけど、カウントを不利にすることが多くて、自分の“ズバズバいくピッチング”ができなかった」と反省の弁。

 さらに「ランナーを背負ってクイックが全然」と言います。9回1死からヒットを許し、次の打者に8球を投げて四球だったところですね。高橋投手コーチも「きょうは特に投げっぷりのよさ、躍動感がありましたね。でもランナーが出てちょっとバタついてしまったので、ピッチャーとしては極力減らしてほしい。そこが反省点」と同じところを指摘。今後の課題ですね。

2試合ともアピールした陽川選手

ホームランの陽川選手を迎えるベンチもこの笑顔。
ホームランの陽川選手を迎えるベンチもこの笑顔。
7回の第4打席も、いい当たりのレフトライナーでした。
7回の第4打席も、いい当たりのレフトライナーでした。

 野手については「陽川でしょう!」と真っ先に陽川選手の名前を挙げた矢野監督。「ホームランは見事だった。距離もすごいし、ワンボールから一発でとらえた。追い込まれて凡打の内容もよかった」。ここで「陽川すごかったねえ!」と我々の後ろに声をかけたので、振り返ったら照れ笑いで去っていく陽川選手の姿が(笑)。そして嬉しい言葉が続きました。「あれをファウルにしたら、1軍じゃ終わりだからね。“大山だけじゃないよ”というのを見せたよ。十分に」

 しかし陽川選手本人は「1打席目は一発で仕留められたんですけど、3打席目はストライクを2球ファウルにしている。1軍だとそんな甘いとこに真っすぐは来ないので、それは反省するところだと思います。しっかり、あしたからやっていきたい」という反応。でも何だか反省点からしても進化を感じますよねえ。あ、すごく失礼なこと言っちゃいました。すみません。

4回、ファーストの野戦で2打点目を挙げた島田選手。
4回、ファーストの野戦で2打点目を挙げた島田選手。

 ファームに来てから3試合ヒットがなく、「打てない~!」と嘆いていた島田海吏選手ですが、13日に2安打して「出ました。ちょっと見えてきました」とホッとした笑顔。そして、この日はタイムリーなど2打点でした。ただし矢野監督は「盗塁はもっとトライしてほしい。行っていいよと背中を押してるんやけど、まだ躊躇してる。しかし足の速い選手が見逃し三振は…。まあ審判のストライクゾーンが広かったとはいえ、勇気を持ってチャレンジしないとね」と注文しています。せっかくの俊足を生かすために、まずは出塁ですね。

 続いて、この日は1打席目にヒットが出た板山選手に「練習でも内容がよくなってきた。それに声を出したり、守備位置へ全力疾走したり、凡退しても一塁へ全力で走って。ひとつひとつ積み重ねて、よくなった部分はあるよね。いつも変わらずやれることが、アイツには必要」と矢野監督。安芸のキャンプで“自分の意識から変えていこう”と取り組んできたことが、結果へとつながっているのは何よりです。

 

何とかしたい姿勢が伝わる捕手

 また2試合続けて先発投手をリードした原口選手のことも、矢野監督に聞いてみました。「もともと声はよく出るキャッチャー。それがフミのいいところだし、ピッチャーを何とかしてあげたいという姿勢が見える。きょうの小野のカーブの使い方とか、フミが引き出した部分はあると思う。打つだけじゃなく、そういうところの評価も上がってくれば、もっと試合に出られる。何とかしたいっていう姿勢はピッチャーにも伝わっていると思うよ」

7回を投げ終えて戻る小野投手(左)に声をかける原口選手。
7回を投げ終えて戻る小野投手(左)に声をかける原口選手。

 その原口選手は、まず小野投手について「自分で課題を持ってやってきて、前回の甲子園もすごくよかったし、きょうもしっかり腕を振って投げていた。低めに集められたのがよかったですね」と試合を振り返りました。自身の盗塁阻止には「試合に出ていく中で、できることが増えてきていると思う。試合に出ないと始まらないので」と言います。そう思うと2試合続けてスタメンマスクはありがたい?「なかなかないですからね」

 マスクをかぶるたび、ピッチャーの球を受けるたびに取り戻していくキャッチャーとしての本能が、きっと原口選手自身の“リズム”をよみがえらせてくれるでしょう。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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