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新型コロナワクチンを正しく知ろう お勧めの情報源と情報の受け止め方のヒント

峰宗太郎医師(病理専門医)・薬剤師・研究者
(写真:アフロ)

 2021年3月9日現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン(以下新型コロナワクチン)の医療従事者への先行・優先接種が日本でも始まっています。

 この新型コロナワクチンについては多くの情報がすでにあふれかえっている状況ですが、ワクチンの基本的な部分や原理、考え方から、実際のワクチンの特徴、効果と安全性、変異ウイルスとの関係、さまざまな噂、身近な疑問、接種にあたって注意するべきこと……などまでを順番に、できるだけわかりやすくまとめていきたいと思います。

 新型コロナワクチンについて、では早速、と行きたいとこではありますが、まず今回は、新型コロナワクチンについて知り、考える際に重要な情報の集め方について、どういったことに注意するのがよいのかなどについてまとめたいと思います。

新型コロナワクチンの本題に入る前に……大事なのは情報源

 新型コロナワクチンに関する情報は本当にあふれかえっています。報道では毎日のようにワクチンについての情報が取り上げられ、Web メディアを含むメディアのみならず、SNS やグループ LINE などでも多くの情報が飛び交っていますね。

 ワクチン関連についての情報を得たり調べたりする際に、どのような情報源(ソース)をどのように活用するのがよいのかということをはじめに提示し、今回は情報の取り方について簡単に考えておきたいと思います。

情報源とその活用
情報源とその活用

 情報源は、公的な情報源を複数の情報源含むを持ち、複数の専門家が同様のことを言っていることを確認し、内容をクロスチェック・比較検討していくことが重要です。そのような情報の取り方をしたうえで、それらの内容を咀嚼・解釈し、情報の妥当さのラインを知り、それぞれの行動や選択の判断の根拠とすること、これが重要であると思われます。

 公的な情報源としては日本国内では、政府広報、首相官邸、内閣官房、厚労省などの情報源、準公的な情報としては、日本感染症学会や日本プライマリ・ケア連合学会などの学術団体の情報などがあげられます。今回の新型コロナワクチン関係では、情報を提供する団体も複数立ち上がっています。

 海外の情報源としては、CDCFDAECDCNHSWHO (世界保健機関)などの外国の公的機関の情報源や、IDSA、AAPなどの外国の学術団体の情報発信、外国の医療機関の情報発信などがあげられます。

 国内の新型コロナワクチンについてのお勧めの情報源としては以下のようなものがあります(なお、こびナビおよびタスクフォースの運営に筆者はかかわっております)。

 ● 首相官邸 新型コロナワクチンについて

 ● こびナビ

 ● コロワくんサポーターズ

 ● 新型コロナワクチン公共情報タスクフォース

 是非、まずはしっかりとした情報源を確保していただき、情報をいかに精査するかという方法論・考え方を身につけていただいて、あふれるワクチン関係情報のなかでおぼれたり、誤った方向へ行ったりしないように注意をしていただきたいと思います。

誤った情報・不適切な情報(misinformation)があふれている

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、非常にたくさんの不確実であったり不正確であったりする情報(misinformation)があふれかえりました

 「新型コロナウイルスは空飛ぶHIVだ」「お茶やお湯を飲めば治る」「アオサが効く」「ポビドンヨードで治る」「メインの感染ルートは空気感染」「無症状でリスクの低い人までPCRをすれば流行が収まる」「PCRの感度は100%」「BCGが効く」「日本脳炎ワクチンが効く」「アビガンを全員飲めばいい」「イベルメクチンは奇跡の薬でワクチンはいらない」……

 …… 次から次に全く根拠がなかったり、根拠に乏しく大きく偏ったりした言説が出ては消え、一部では熱狂的な「支持者」「信者」が生まれて残りつつインフォデミックが続いています。

参考:

 ● 新型コロナの治療薬としてイベルメクチンを現時点で承認すべきか?

 ● どんなウイルスで、どのように感染するのか? 新型コロナウイルスのそもそも論

 インフォデミック(infodemic =情報(information)+流行(epidemic) )はこのコロナ禍で非常に問題となっているのもご周知のとおりです。世の中には、不確実な情報を意図的または気軽に発信、拡散する人が非常に多いのですね。非専門家であってもそれを気軽にやりますが、「専門家」と呼ばれる人でも明らかに誤った情報発信を続ける人もいるのでさらにたちが悪いのですね。

ワクチンに関しても様々な misinformation があふれています。そういった情報にふれて不安になったり、ワクチンに疑問を抱いたりという方も多いでしょう。

 しかし、一度立ち止まって考えてみてください。

 重要なことは、先に述べたように、確実な情報源を持ち 、情報を精査することからなのです。煽られるようなことになってしまっては、正しく判断し、決断することはできませんよね。

報道へのヒント集が WHO からもでている

WHOからは報道へのヒント集が出されている
WHOからは報道へのヒント集が出されている

 WHOはワクチンに関する報道をする際にどのようなことに注意すればよいかというヒント集を出しています。

 是非一瞥していただきたいと思いますが、多くの重要なことが書かれており、ワクチンに関する情報を発信したい人には必読の資料といってよいでしょう。

 この資料では情報の発信の仕方、報じ方について述べていますが、これは裏返せば情報の受け手にとっても、情報の受け止め方といえます。その概要を図にまとめましたが、皆さん意識できていますでしょうか。

WHO報道ヒント集の項目より
WHO報道ヒント集の項目より

 どうでしょうか、どれも非常に重要です。

 見出しだけで感情をあおられていませんか? 内容を簡単に信じ込んでいませんか? ソースまでしっかり自分で確認しましたか? 適当な言葉につられていませんか?(例えば「免疫力」だとか…「免疫力」という言葉が不適切な理由…「トンデモ」健康情報に踊らされないために

 …… 重要なポイントはたくさんあることがわかると思います。情報をとる ということは、こういうことなのです。実は多く考えることがあり、訓練をしっかりしていかないと、情報に接することは難しいところがあるんですね…。

 情報を取得するときには、しっかりと理解し、考えて、そして納得することが必要です。不安を煽られたり、感情で「判断」したりするようなことがあってはなりません好悪、直感、思い込みなどや、信頼している人が言っているから、だとか、複数の人が言っていたから、などの根拠とならないところで信用してしまうことも間違っていることが多いですね。

 これらに加えて、属人的なものや権威主義も排していくことが重要です。●●専門家、教授、ノーベル賞受賞者が言っていた、だとか、テレビ・新聞で取り上げられていたから、などの理由で信用してしまってはいけないわけです。これは十分に注意しないと、情報を評価していないにも関わらず、信じてしまうという最も基本的なステップで躓いている状態になりかねません。

 こういったことを防ぐためには、最初に述べたように、情報源を複数しっかり持ち、クロスチェックして、偏ったり極端だったりするものを排除していくことがとても重要になります。またmisinformation については、ファクトチェックをしてくれている団体や、WHOなどの公的な機関も情報を発信しているのでチェックする習慣をつくっておくのもよいでしょう。

確実な情報を得ていきましょう

 今回は新型コロナワクチン自体の情報には触れず、情報の取り方や考え方について簡単に述べました。これはワクチン接種前の情報収集を行う際に絶対に必要になってくる大事なところであると考えるからです。

 そして、情報収集、これはもちろん、ワクチンだけに限らない話です。新型コロナに関しても多くの情報が飛び交っていますが、一度立ち止まって、どういう情報源を自分は持っており、どういう評価をして情報をみているのか、考え直していただければと思います。

 次回からは、新型コロナワクチンについて具体的にみていきたいと思います。

 ※ 文中の図はすべて筆者作製

医師(病理専門医)・薬剤師・研究者

医師(病理専門医)、薬剤師、博士(医学)。京都大学薬学部、名古屋大学医学部、東京大学大学院医学系研究科卒。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所等を経て、米国国立研究機関博士研究員。専門は病理学・ウイルス学・免疫学。ワクチンの情報、医療リテラシー、トンデモ医学等の問題をまとめている。

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