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スキャンダル乗り越えた元韓国女王。日本でも歌手ビヨンセのセクシーダンス披露するか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ジャン・ハナ(写真提供=KLPGA)

9月6日から始まった女子プロゴルフツアーのメジャー大会『日本女子プロゴルフ選手権・コニカミノルタ杯』。昨年は韓国のベテラン李知姫が優勝したが、今年も注目の韓国人選手がいる。招待出場しているジャン・ハナだ。

その名を聞いて多くのゴルフ・ファンが思い出すのは、シンガポールでの“キャディバッグ落下事件”だろう。

ジャン・ハナの父親がエスカレーターで落としたバッグが、同じく韓国のチョン・インジにぶつかり負傷。ふたりがリオデジャネイロ五輪の韓国代表出場権を争っていたこともあって、1991年にトーニャ・ハーティングが起こした“ナンシー・ケリガン襲撃事件”を彷彿させるとして、話題になった。

この事件のせいで何かとダーディーなイメージがつきまとったジャン・ハナだが、そもそも彼女は韓国でも人気選手のひとりだった。

その実力は同業者たちも認めるほど。2015年に韓国の一般紙『朝鮮日報』が現役女子プロ59人を対象に、“外見が美しい選手”“スイングが美しい選手”などの設問を設けて行ったアンケート調査では各部門でトップ3入りこそしなかったものの、“練習をたくさんする選手”や“体力が優れた選手”でジャン・ハナの名を挙げる選手もいたという。

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実際、ジャン・ハナの実力は折り紙付きだ。アマチュアだった2009年には韓国国家代表に選ばれ、2012年にはKLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)ツアーの『KB金融STARチャンピオンシップ』でプロ初優勝。

翌2013年は破竹の勢いで韓国ツアー4勝を飾り、賞金女王と年間MVPのタイトルも手にしている。イ・ボミやキム・ハヌルが珍しく顔を揃えた2013年KLPGAアワードでは、エメラルドグリーンのイブニングドレスをまとって登壇した姿には、まさに“若き女王”の風格が漂っていた。

その後も韓国で優勝を重ね、2015年からはアメリカへ。昨年6月に韓国復帰をするまでの3年間でアメリカ・ツアー4勝、世界ランク最高位は5位まで上り詰めた。

韓国復帰後は優勝こそなかったものの、KLPGAツアーのメジャー大会のひとつである『第39回KLPGAチャンピオンシップ』に2位に食い込むなど着実に結果を残し、今季開幕前には人気と実力を兼ね備えたものだけが選ばれる“KLPGA広報モデル”に4年ぶりに選ばれている。

(参考記事:【画像あり】2018年の“KLPGA広報モデル”11人は誰?ボミ、ハヌルも務めた「美女ゴルファーとスターの証」

そして迎えた2018年シーズン。3月にベトナムで行なわれた『韓国投資証券チャンピオンシップwithSBS』で優勝すると、4月の『第40回KLPGAチャンピオンシップ』も制覇。自身初のメジャー大会優勝も成し遂げるなど、かつての強さを取り戻した。

そんな活躍もあって人気面も回復。今年6月、世論調査で有名な韓国ギャラップ社が発表した「ゴルフに対する調査」の中に、「好きな韓国人選手」という項目があったのだが、そこでジャン・ハナの名を挙げる人たちもいたという。

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その理由はさまざまだろうが、ジャン・ハナの国内復帰理由も韓国のゴルフ・ファンたちの心に響いたに違いない。

というのも、ジャン・ハナの韓国復帰の背景には“家族”の存在があった。彼女は両親が40代のときに授かった一人娘で、父親も母親も還暦を過ぎている。父親が娘のアメリカ生活を世話してくれたが、父娘がアメリカ・ツアーを転戦するとき、母は韓国で一人暮らしだった。

そんな生活を3年近く続けていた最中、冒頭で紹介した“キャディバック事件”が起き、父親は責任を感じて心を痛め、母も心労で体調を崩した。一人娘のジャン・ハナとしては、「これ以上、離散家族のような生活は送れない」として、アメリカでの選手生活に幕を引き、韓国復帰を選んだのだ。ジャン・ハナも復帰時にこう言っている。

「これまで世界最高の選手になることを目標に頑張ってきましたが、競争のためだけ生きるアメリカでの選手生活よりも、もっと大事なことがあると思ったのです」

競争よりも家族。家族とともに過ごしながら、その選手生活の第2章を描き始めているジャン・ハナ。

そんな彼女が『日本女子プロゴルフ選手権・コニカミノルタ杯』ではどんなプレーを見せるのだろうか。昨日の初日は2オーバーの「74」を叩いてしまい81位タイと大きく出遅れてしまっただけに、2日目の今日は巻き返しを期待したい。

2年前の『HSBC女子チャンピオンズ』では優勝したあとに、人気歌手ビヨンセのダンスも披露したこともある彼女だが、日本でもそんな歓喜のパフォーマンスを見せられるか。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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