パロディーに“迷惑行為”まで…『君の名は。』が韓国で人気のワケは?
韓国で映画『君の名は。』が歴代最高記録突破を目前にしている。
1月16日、映画振興委員会によると、『君の名は。』の観客動員数は累計258万6943人を突破。去る1月4日の公開から2週間で250万人を突破し、現在も独走を続けている。
この快挙は、複数の韓国メディアで報じられた。「『君の名は。』、興行独走は続く…250万突破」(『MBN』)、「『君の名は。』観客数250万…13日間、不動の1位」(『釜山日報』)、「大勢はアニメ、『君の名は。』250万を超える」(『イルガン・スポーツ』)、「『君の名は。』、公開13日で250万突破…300万超えるか」(『OSEN』)といった具合だ。
それも当然かもしれない。
韓国で日本のアニメ映画が興行1位を記録したのは、『千と千尋の神隠し』以来。韓国では14年ぶりの快挙だ。もはや『ハウルの動く城』(301万人)が持つ日本アニメ映画の観客動員数歴代1位の記録、301万人突破は確実視されている状況だ。観客動員数100万人突破までにかかった日数はわずか5日で、『ハウル』よりも早い記録になっている。
これまでの歴代記録を見ればわかるとおり、韓国でもジブリ作品は愛されている。もちろん日本とは違う感性もあるため、日本におけるジブリ作品とはまた評価がひと味違うところは興味深いところだろう。
(参考記事:韓国の映画ファンが評価するスタジオジブリ作品のベスト10とワースト1位は?)
いずれにせよ、韓国で巻き起こっている『君の名は。』ブームは、すでにスクリーンの枠も超えている。関連書籍も売れに売れ、「韓国で実写映画化」というデマまで回ったほどだ。
しかも、デマばかりでなく、各種パロディーも登場。なかでも、現在進行形の政治スキャンダルを起こした朴槿恵大統領にちなんだパロディーはネット上で大きな話題となっているらしい。
(参考記事:南北首脳の体が入れ替わる!? 『君の名は。』のパロディー『君の権力は。』の中身と驚愕の“オチ”)
『君の名は。』大ヒットの原因はさまざまに分析されているが、ある専門家は人気の理由を「韓国で長年、内部的に積み上げられていた“オドック”(韓国のオタク)たちのエナジーがこの作品で一気に表出した」と話している。
行き過ぎた例として同専門家は、日本版を何度も見たオドックが劇場で翻訳の間違いを大声で指摘したり、「吹き替え版は邪道だ」と主張したりする迷惑行為も見られているという。彼らのようなオドックは、日本語そのままに「ホンモノ」などと呼ばれ問題にもなっているようだが、熱狂的なマニアが生まれている証拠だろう。
実際に韓国には日本コンテンツを愛するオドックたちは少なくない。最近はガンダムやスラムダンク、エヴァンゲリオンといったコンテンツだけでなく、いわゆる“萌え系”のアニメにも注目が集まっている。
その流れが影響したからか、現実世界の女性の好みも変わってきているようで、韓国では異例の“美少女”写真集が飛ぶように売れたこともあった。
(参考記事:タブー解禁!? 写真家Rotta(ロタ)がとらえた韓国美少女たちの世界)
驚くのは『君の名は。』のヒットによって、韓国でアニメ映画自体の評価が変わっていきそうなことだ。
というのも、「アニメ突風いつまで続くか、『君の名は。』『モアナと伝説の海』が1、2位」(『マイデイリー』)、「“童心に帰った韓スクリーン”…『君の名は。』『モアナと伝説の海』1、2位」(『ニュース1』)と報じられているように、現在『君のは。』に次いで、ディズニー映画が人気を博しているのだ。
これまで韓国におけるアニメ映画の評価は高くなかった。それは、韓国アニメ業界関係者も触れてほしくない“韓国アニメ黒歴史”が影響しているともいわれているが、そんな偏見が薄れつつあるのかもしれない。
どこまで観客動員数を伸ばすのか、注目されている映画『君の名は。』。日本コンテンツが韓国を熱狂させている。