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新成人に伝えたい! 困ったら遠慮なく相談して!

大西連認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長
(写真:アフロ)

新成人に伝えたい! 困ったら遠慮なく相談して!

1月9日は成人の日でした。新成人のみなさん、おめでとうございます!

新成人へ向けた記事なのに、一日遅れで記事をアップするもうすぐ三十路の私から、みなさんに、伝えたいことがあります。

ずばり、困った時は遠慮なく相談して!みなさんが生きるこれからの日本はいろいろな困難さが待ち受けているでしょう。一緒にサバイブしましょう!

年末に一人の若者と出会いました。彼は20代前半。

日雇の仕事をしながらネットカフェに寝泊まりして生活をしていたが、年末に仕事が切れ、ネットカフェに泊まるお金もなくなり、炊き出しに並んでいました。

(炊き出しとは、ホームレスの人や生活に困っている人に食事を提供する民間の支援活動です)

彼自身、炊き出しに行ったのは初めてだったらしく、そわそわしていたところをボランティアの相談員が声をかけ、支援につながりました。

彼の第一声が忘れられません。

「自分、こういうの大丈夫ですから……」

「こういうの」というのは一時的に無料で寝泊まりする場所を支援団体に用意してもらうこと。

「いやいやいやいや、本当に大丈夫ですから。支援とか受ける身分じゃないですし。自分、働けるし若いんで、もっと他の人のとこにお願いします」

「ホームレス」「貧困」にあてはまらない「貧困」であり「ホームレス」の若者

まあ、たしかに、彼は病気など健康上の問題があるわけではないし、確かに、彼より困っている人は路上にも地域にもいくらでもいるかもしれません。しかし、彼はその日、あり金がなく、極寒のなかでの野宿をしなければならない状況で。

それはそれで、かなり困っているわけです。

「いや、本当にすいません。こんな支援を受けるなんて、まじで恥ずかしいです。地元の友達でこんなふうになる奴なんていないと思いますよ。本当にすいません……」

彼は見た目も、とても「ホームレス」には見えない。ネットカフェで3年生活をしているとも思えない。いまどきの若者。

フツーに働いていた人が

九州の出身で、地元の工業高校を出た後に近畿地方の零細企業の工場に就職し、正社員で働いた。しかし、数年で業績が悪化。

何とか、住み込みの契約社員の仕事をみつけるが、雇止めにあい、その後、日雇いとネットカフェ生活になった。

実家は母子家庭で生活は楽ではない。

たしかに、彼は若いし健康で、働ける状況だと思います。

でも、決して、怠けていたわけでも、浪費をしていたわけでもない。勉強は苦手だったかもしれないし、ヤンチャもしていたかもしれない。でも、職につけば一生懸命、努力をする。

しかし、そんな彼が、正社員(家はアパート)→契約社員(会社の寮に住み込み)→日雇派遣(ネットカフェ)と、望まぬ転職のたびに収入と住まいの状況が悪化していく……

いま、私たちは、こういう社会に生きている、といえます。

相談するのは恥ずかしい……そんな社会はイヤだ

「自分、年明けは仕事があるので大丈夫です。いやぁ、地元の友達に知られたくないっすよ。こんなことになって恥ずかしいです」

彼は、カフェで2時間悩んだ挙句、年明けまでの宿泊代の支援を利用することを決め、年が明けてからは日雇いの仕事に戻っていきました。

制度を利用するのは、どうしてもイヤだ、と。

もし、時代が違ったら、彼は年末に野宿をしないといけない状況にはならなかったかもしれません。実際に、例えば、25歳~34歳の非正規労働者は、1990年に106万人だったのが、2014年には300万人と急速に拡大しています。もちろん、若年の非正規労働の増加がイコール若者が困っている、と短絡的に考えることはあまり良いことではないかもしれません。実際に、いろいろな若者がいるでしょう。

でも、年末年始に野宿せざるをえなくなった健康で働ける若者がいること、そんな社会はイヤだなと心から思います

そして、そういった「困った状況」になったときに、支援を・手助けを求めることを恥ずかしいとか、よくないことだ、と思ってほしくないな、と思っています。自分で一生懸命何とかしようとして何とかできる状況とそうでない状況があるでしょうし、何とかできる力がある人とそうでない人もいる。

そして、なにより、同じ社会のなかで生きていて、ひょんなことからお金持ちになったり成功したりする人もいる一方で、努力してもうまくいかなかったり、失敗をしてしまう人もいる。それを、「自己責任だー」とか言いきってしまうのは、スマートではないと思います。

事実、日本の貧困率が16%をこえている状況(2012年「国民生活基礎調査」)ですから、個々人の努力とかの範疇をこえて、もはや社会で解決をめざす問題であることは明らかだとも思います。

自分自身が困っている人、周りに困った状況の人がいる人、いつか困ってしまうかもと思っている人、自分には関係ないと思っている人。新成人のみなさんも、そうでない人にも、困った時には「困っている!」と声をあげてもらいたいと思いますし、気軽に声をあげていける社会にしていきたいと思います。

以下に、そんなこの日本社会で困った時に相談できる場所をいくつか紹介します。

仕事のことで困ったとき

ブラック企業・バイトという言葉がここ数年、とてもメディアでも話題になっています。過労・ハラスメント・賃金未払いや雇止めなど、働くことにまつわる困りごとがある方は、ぜひ、以下のところに相談してみてください。

公的な機関としては、全国に労働基準監督署があります。

それから、以下の2つは大きな労働組合。フリーダイヤルなのがいいですね。

連合の相談ダイヤル:0120-154-052

全労連の相談ダイヤル:0120-378-060

ブラック企業や非正規労働者の相談としては、下記もあります。いずれも電話でもメールでも対応してくれそうです。(いずれも東京の団体ですが連絡すればお近くの最もいい相談先を教えてくれるかも)

首都圏青年ユニオン

NPO法人POSSE

法律家に頼む場合はこちら。各地に窓口があるようです。

労働弁護団

法的なトラブルを抱えている

法律家と言えば、労働問題以外でも法的な問題でトラブルを抱えていたらこちらに。法テラスは電話でもメールでも対応してくれます。(法律家に頼む場合は費用のことを懸念するか他も多いと思いますが、費用についても所得に応じて減免等がある等ですので、まず相談を)

法テラス

仕事がしたい

ハローワークは仕事を見つける場所ですが、ジョブカフェとかサポステとか職業訓練とか、さまざまな若者向けの支援があったりします。

一度、相談に行ってみてはいかがでしょうか。

全国のハローワーク一覧

生活に困っている

2015年4月から生活困窮者自立支援制度という新しい制度ができました。すべての自治体に必ず窓口があります。市役所(区役所)等に電話して聞いてみましょう。

生活困窮者自立支援制度(委託先一覧)

また、収入や資産等が一定程度以下の場合、生活保護制度が利用できます。こちらも、全国のすべての自治体に福祉事務所という窓口がありますので、遠慮なく相談&申請を!

全国の福祉事務所一覧

公的な窓口に行ったが、うまく行かなかった、対応してもらえなかった、という方はこちらの法律家のネットワークに相談してみてください。

生活保護問題対策全国会議の相談先一覧

〈もやい〉にでも相談を受けています。

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい

また、〈もやい〉で、こんな冊子を作っています。ぜひ参考に。

困った時に使える最後のセーフティネット活用ガイド

パートナーからの暴力に悩んでいる

いわゆるDV(配偶者や恋人からの暴力)など、近しい人との人間関係、暴力で悩んでいる人もいると思います。

全国配偶者暴力相談支援センター一覧

内閣府DV相談ナビ

つらいなぁとか、さみしいとき

よりそいホットラインは24時間365日の相談ダイヤル。総合的な相談のほか、外国語対応のライン、女性専用のライン、セクシュアルマイノリティーの人のためのライン、つらかったり苦しくなっている人のためのラインなど、どんな相談でも受けるダイヤルです。

よりそいホットライン:0120-279-338(岩手・宮城・福島の人は0120-279-226)

つらいときには。

全国のいのちの電話

なんとか生きのびましょう

ここで紹介した以外にも、困った時に相談できる機関や場所はたくさんあります。子育て、健康のこと、介護のこと、税金のこと、家族のことなどなど。生きていくなかで、困る経験をしない人のほうが少ないのではないかと思います。

困った時には一人で悩まずに相談をすること、相談先として公的機関や民間の支援団体のことを思いだしてもらえたらと思います。

また、できるだけ「困ることがない」ように、社会全体のセーフティネットや支えを強くしていく必要があります。

新成人のみなさん、そうでないみなさんも、これからの日本社会をもっとよくしていくために、困ってしまう人が少なくなるように、困ってしまうようにならなくて済むように、この超少子高齢国家ニッポンをサバイブし、そして、一緒に生きぬいていけるような社会へとより変えていけたらと思います!

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長

1987年東京生まれ。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿での炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から始まり、主に生活困窮された方への相談支援に携わっています。また、生活保護や社会保障削減などの問題について、現場からの声を発信したり、政策提言しています。主著に『すぐそばにある貧困」』(2015年ポプラ社)。

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