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30代まではソーシャルメディアが一番…意思疎通のメディア利用の実情をさぐる(2023年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
本人が間近にいてもスマートフォンでやりとり、というケースも(写真:アフロ)

固定電話はほとんど使わない現状

自分の意思を特定少数、あるいは不特定多数に、即時、あるいは時間をおいて伝える手法をコミュニケーションと呼ぶが、各種メディアはそのために用いられることが多い。電話も手紙もインターネットのさまざまなサービスも、突き詰めれば自分の意思を誰かに伝えるための道具に他ならない。今回は総務省が2023年6月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「令和4年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)を基に、個人が意思発信のために用いるメディアの利用状況について、利用時間の観点から確認する。

次に示すのはコミュニケーションメディア、具体的には携帯電話(従来型携帯電話、スマートフォン双方。通話)、固定電話(通話)、インターネット通話(Skype、LINEなどの音声通話、さらにビデオ通話含む)、ソーシャルメディアの利用、電子メールの利用、計5種類のメディアの利用時間を示したもの。使わない人も利用時間をゼロとして、合算した上での平均利用時間なので、全体としての動向の把握が可能となる。つまりおおよそ利用者の利用時間と利用されている度合いそのものを推し量ることができる。

↑ コミュニケーション系メディアの利用時間(平日、分)(2022年)
↑ コミュニケーション系メディアの利用時間(平日、分)(2022年)

緑系統色は直接音声によるもの、赤系統色はデジタル系のものとして区分しているが、赤系統色の棒が長く見え、全般的に音声を用いたコミュニケーションの時間より、デジタル系の方が長いことが分かる(今件はインターネット経由の調査ではないことに注意。デジタルギャップによる調査結果のぶれは生じない)。

音声通話のみで動向を調べると、10~20代ではインターネット通話が多用されている。特に10代では19.0%との値が出ている。これはLINEなどによる無料の通話が多用されているからと考えられる。30代以降はインターネット通話の値が落ち込む。他方、60代に至っても固定電話はほとんど使われず、携帯電話の利用時間の方が長い。

デジタル系では10~30代はソーシャルメディアの利用時間の方が電子メールよりも長い。40代以降で両者の立ち位置での逆転の動きがある。若年層におけるデジタルコミュニケーションは、電子メールよりもソーシャルメディアが主流であることが、今調査結果からも明らかなものとなっている。もっとも30代以降になるとソーシャルメディアの利用時間は大きく減少し、40代以降では電子メールによるコミュニケーションの方が主流であることも事実には違いない。

1年間の変移を確認

同じような条件下で行われた前年分、つまり2021年分調査の結果と見比べ、その動きを算出した結果が次のグラフ。マイナスはそれだけそのメディアが使われなくなったことを意味する。

↑ コミュニケーション系メディアの利用時間(平日、前年比、分)(2022年)
↑ コミュニケーション系メディアの利用時間(平日、前年比、分)(2022年)

電子メールは20~40代で大きく増加。ソーシャルメディアは10代以外で増加。携帯電話や固定電話は小幅な増減幅にとどまっている。またインターネット通話では10代が大きく増え、20~30代では確かな減少が見られるのが興味深い。

直近年における単年の各メディアの利用状況の比較としては、「若年層がソーシャルメディア主流、中年層以降は電子メールがメイン」「固定電話も携帯電話も音声通話はほとんど使われない」に変わりはない。今後ソーシャルメディアがより年上の層に深く浸透していくか否かに注目したいところだ。

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※令和4年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

今調査は2022年11月5日から11月11日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォータサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳~69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「経年での利用時間などの変化については、調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きを入れている。さらに2020年分の調査については「令和2年度調査は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う、11都府県を対象とした緊急事態宣言下で行われたものであることにも留意が必要」との補足があった。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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